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p.52 抽出テキスト

ある.近年はFontan術後症例をはじめ,これまで妊娠・出産が可能とは考えられていなかった複雑CHDでも挙児希望をもつ患者が増加している559, 560).このような母体,胎児ともに高リスクの一部の疾患では,妊娠前の心機能評価,必要があれば修復術または再修復術の検討,適切な避妊法の選択,場合によっては妊娠中断の選択も,必要となってくる.一般健常人と比較すると,CHD修復術後の妊娠は,流産,低出生体重など胎児のリスクも高いことが報告されている561).最も重要なことは,妊娠・出産を希望する患者と妊娠前から,産婦人科医も交えて妊娠・出産の可能性とリスクを話し合うカウンセリングの機会を持つことである562).

妊娠・出産時には循環動態・血液学的・呼吸機能・内分泌学的・自律神経学的な変化が母体に認められる563).これらの変化が,背景となる疾患の解剖学的特徴,固有の病態にどのような影響を与え,母体と胎児にどのようなリスクを引き起こすかの判断が重要である564).妊娠を避けたほうが良いと考えられる高リスク疾患(表26) 559)は,胎児にとっても高リスクである.これらの疾患では妊娠中や出産後に心不全,不整脈,血栓塞栓,大動脈解離などの合併症を生じる可能性がある.妊娠が心疾患の長期予後に与える影響については十分なエビデンスがないことを,心疾患を有する女性には伝えておくべきである565).

詳細は日本循環器学会と日本産科婦人科学会の合同で発表されている,「心疾患患者の妊娠・出産の適応,管理に関するガイドライン(2018年改訂版)」559)を参考にされたい.

4 移行医療

4.1 移行医療とは

小児期の治療の進歩により,CHD患者の大多数が成人期に到達する時代となった.こうした患者は,修復術後の遺残症,続発症,遠隔期合併症などの医学的問題を有することも多く,成人期以降も継続した医療が必要となる1).また小児期から成人期への成長過程では,心理的・社会的問題へのケアも重要な課題である.

移行医療(transition care)とは,慢性疾患を有する個々の小児患者が生涯にわたりもてる機能と潜在能力を最大限に発揮することを目的に,個人の理解度や発達,状況に応じた適切かつ継続的な医療を提供することである566).移行医療では,自立により患者自身が受ける医療の自己決定

示されており,患者のQOL評価や予後予測という意味でも,従来のNYHA心機能分類も含めて多角的な評価を行うべきでる545).

2.4.4 換気効率

換気効率は二酸化炭素(CO2)産生に対する分時換気量(V

4 E)の変化からその効率を表現する指標である(表25).運動中の二酸化炭素排泄量と分時換気量との直線関係の傾きをV

4 E/V

4 CO2 slope(運動時換気効率)と呼ぶ.そのほ

か,嫌気性代謝閾値レベルまたは運動時のV

4 E/V

4 CO2の最

小値であるminimal V

4 E/V

4 CO2も指標となる.いずれも正

常では30未満である.これらの指標は心不全患者の予後予測因子としてpeak V

4 O2よりも感度が高く,ACHD患者

での心イベント予測に有用である546).心不全や肺循環の異常では,運動中の死腔換気率が高く,CO2を排出するための換気量が増加するため,V

4 E/V

4 CO2 は上昇し,この

slopeの勾配は急峻になる.換気効率の低下は中枢性および末梢性の化学受容体感受性の亢進も関係していることが知られているが,CHDではそういった要因以外にも,低酸素血症,肺胞や気道の成長,呼吸筋あるいは特殊な血行動態の影響などを考慮に入れる必要がある546–549).

2.5 心臓リハビリテーションを含む 治療としての運動

小児および成人CHD患者での心臓リハビリテーションの有用性については,これまで多くの報告がある550–554).比較的年少時に運動に参加することで有酸素運動能が向上し,その効果はある程度持続して,精神的な自己確立にも役立つ555).また,運動を含むレクリエーションなどの活動に参加することで,精神的な自己確立などに有用である可能性がある556).したがって,運動の身体・精神発達への有効性を考慮すれば,禁忌でないかぎり運動・活動への参加は奨励される557).ACHD患者では自宅での心臓リハビリテーションが有効であるとの報告が多いが,運動が許容された範囲を逸脱して行われることもありうるため558),一定の指導と監視が必要である.

3 妊娠,出産

CHD患者の多くは,一般と同様に妊娠・出産が可能であるが,複雑CHD修復術後など中等度リスク以上の場合は,妊娠中や出産後の母体や胎児に合併症を認めることが