p.51 抽出テキスト
以上) 537),成人では通常1.20前後であること,2推定最高心拍数に達していること,3Borgスコアで18~19.また, peak V 4 O2 は負荷法やプロトコルによって絶対値が変わるので,各施設での正常値を設定してその対正常%で表示するのがよい. peak V 4 O2 はFallot四徴やFontan術後などの成人CHD術後患者の予後規定因子とされている538–540).また,成人においては心移植の適応の決定に際し重要な指標とされ, 14 mL/kg/min未満が移植の適応基準である541).しかし,小児期のCHD術後でのpeak V 4 O2と将来の心イベントとの 関連は明確にはされていないため,小児CHDにおける心移植の適応基準値としての14 mL/kg/minの妥当性は不明である537, 542). 心不全を有する患者では運動時間が比較的良好でもpeak V 4 O2は低いことが多い.これは運動中の少ない心拍出量を効率良く作業筋に分布させるように血流分配の変化が生じるためと考えられる.また,安静時の心室駆出率が正常でなくてもpeak V 4 O2が正常な患者が存在する.血管 内皮機能を介した血流分配の調節や運動筋内における酸素抽出能の増加によって末梢組織の循環が維持されれば,心拍出量が正常以下でも高いpeak V 4 O2が維持されること があるからである543).このような順応現象は運動中の酸素負債の増大と関連すると考えられる. 患者の高度なモチベーションを引き出すことが困難な場合や,疾患,患者の状態,年齢によって最大負荷をかけることが危険な場合においては,亜最大負荷で客観的な運動耐容能を推定する指標として,嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold: AT)が有用な指標である(表25).嫌気性代謝閾値は健常人では運動時心拍数120~130/minくらいで達するポイントで,有酸素運動の重要な指標である544).また,嫌気性代謝閾値は日常身体活動の指導やリハビリテーションにおける負荷量の決定に重要で,嫌気性代謝閾値に達する30~60秒前の負荷量がリハビリテーション時の目安になる. これらの客観的な数値指標のほかにも,従来使用されてきたNYHA心機能分類は予後予測にも有用であることが は洞結節機能低下が関与することがある.多脾症候群, Senning手術など心房内操作を伴う手術,三尖弁閉鎖不全などによる右房拡大は洞機能低下の要因となる525). また,運動中の心拍数増加不良と運動回復早期の心拍減衰の遅れは,他の成人循環器疾患と同様にACHDにおける将来の心イベントの予測に有用である526).CHD術後患者では開胸手術の影響で除神経が起こることは避けられず,心臓自律神経活動には程度の差はあれ障害があることが多い527, 528).特に副交感神経機能の障害が中心となると,運動初期や軽運動中の心拍数増加が著しく低下することもあるため,CHD術後患者では心拍数から術後状態を把握する際には注意しなければならない.右室流出路再建術後やFontan術後患者の心拍応答はいずれでも低下し,運動回復早期の心拍減衰も小さい529, 530). 2.4.2 血圧 血圧は末梢血管抵抗と心拍出量により決定される.運動時の最大収縮期血圧は運動時最大心拍出量と関連が深く,運動中の収縮期血圧の低下ないし増加不良は心拍出量の増加が不十分であることを示唆する.複雑CHD術後では遺残する血行動態の異常によって血圧上昇が不良になることがある.特に運動誘発性低血圧は心室細動のリスクを高める531). 大動脈縮窄術後では安静時の上下肢血圧差を測定し,最大負荷直後に再び測定して最大上下肢血圧差を記録しておく.また,安静時に高血圧がなくても運動時に出現することがあるので,注意する415, 532–534).遺残縮窄例や修復術時年齢が高い場合は高血圧発症と関連することがあるとされるが,そうでない症例でも高血圧が存在することが少なくない.大動脈弓の形態が運動時高血圧に与える影響は不明確で535),軽度の大動脈縮窄でも運動中の血圧上昇の危険因子になりうる536).持続する高血圧に対しては臓器障害予防の観点から降圧療法が望ましいが,運動時の血圧を考慮した治療基準は定められていない.有意な狭窄部がない患者で高血圧に関連した心室筋肥大が疑われた場合には,減塩指導,肥満の改善など適切な生活指導とともに,薬物による降圧療法を考慮する(推奨クラスIIb,エビデンスレベルC). 2.4.3 酸素摂取量 最高酸素摂取量(peak V 4 O2)は心疾患患者の心肺予備能 を反映する有用な指標である(表25).以下の基準で最大負荷に達したと判断されれば,その時のV 4 O2をもってpeak V 4 O2とする.1最高負荷時のガス交換比(=二酸化炭素排泄量/酸素摂取量)が一般には1.09以上(年少児では1.05表25 心肺運動負荷試験の主な指標 指標定義 最高酸素摂取量(peak V 4 O2)運動負荷によって得られた最大の酸素摂取量嫌気性代謝閾値(anaerobic threshold: AT)高度の運動負荷による代謝性アシドーシスが生じる直前の酸素摂取量運動時換気効率(V 4 E/V 4 CO2 slope)一定量の二酸化炭素を排泄するために必要な換気量