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p.47 抽出テキスト

第3章 遠隔期管理をめぐる諸問題

1 感染性心内膜炎

CHDの遠隔期診療において感染性心内膜炎(IE)は発症率,致死率のいずれの観点からも主要な課題である.IEの発症率は一般人口で5.1~8.6/10万人・年483–485),CHD小児期では44/10万人・年,成人期では110/10万人・年486)である.CHDにおけるIE予測危険率は40歳までに2.4%, 60歳までに4.7% 486)にも上り,致死率は1.9~9%と高い487, 488).

CHDのIE合併例では外科的治療を要する場合が67% 489)と高率である.外科的治療のタイミングについて,近年では塞栓症予防の観点から知見が集積している490).特に,脳梗塞では早期介入の優位性491)が示されている一方,脳出血では早期介入は避けるべき490, 492)である.近年,世界的にIEの発症率は特に高齢者で上昇しており485),CHD術後遠隔期患者の高齢化とともに,今後ますます患者指導,適切な予防的抗菌薬投与,早期診断,治療介入の重要性が注目されている.現在,IEに対する各国のガイドラインの推奨は異なり,その改訂後の疫学的変遷の報告が集積されつつある485, 493).本項では日本循環器学会のIEおよびCHDに関するガイドライン1, 180, 494)に準拠しつつ,近年のエビデンスにもとづいて改変を加え,CHD遠隔期に絞って推奨を述べる.

1.1 発症率と予後による分類

CHDのIE発症率と致死率は高く,CHD遠隔期診療における主要な課題といえる.特に,IEの既往,人工弁, CHD複雑性高度が危険因子であり,10年間の累積発症率はそれぞれ8.8%,6.0%,1.3%である495).背景因子をマッチさせた対照群に対して,IE既往では65.4倍,人工弁では19.1倍のハザード比である495).CHDの基礎疾患や治療・既往などの背景因子によって,IE感染リスクが高いものと,一般人口と比べて同等とみなせるものとに分類される496).さらにIE感染を契機として死亡を含む重篤な結果を招く可能性の高い一群を高度リスク群,そうでないものを中等度

リスク群と分け,予防的介入の推奨の基準とする494).欧米のガイドラインでは高度リスク群のみに抗菌薬の予防的投与を推奨している.

一方,本邦の「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン」494)では高度リスク,中等度リスクともに抗菌薬の予防的投与を推奨している.近年,欧米ではIE発症後の予後に関する新知見495, 496)をもとに,先天性弁膜症(大動脈二尖弁など497, 498, 498a))の患者に対して,高度リスク群と同様に抗菌薬予防的投与の対象とすべきとの報告がなされている.これは,本邦のIEガイドライン494)の中等度リスク群に対する予防的抗菌薬投与推奨の妥当性を支持するものである.これらを踏まえ,本ガイドラインでは本邦のIEガイドラインと同じく,高度リスク群,中等度リスク群ともに抗菌薬の予防的投与を推奨する(表23).