p.45 抽出テキスト
互作用からTGF-βを介して炎症性細胞を活性化させる466, 467).また,ずり応力は中膜変性を助長する466, 467).外科治療により大動脈容量負荷が軽減されても,拡張した大動脈は硬く,後負荷増大と脈圧上昇をきたし,血管ストレスは残存して病態はさらに進行すると考えられている463). 5.1.2 診断と管理 表22 遺伝性大動脈疾患の外科手術の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル Marfan 症候群では,大動脈基部または上行大動脈径≧50 mm の症例に行う. I C Marfan 症候群では,大動脈解離の危険因子 *を有する,大動脈基部または上行大動脈径≧45 mm の症例に考慮する. IIa C Marfan 症候群で妊娠希望の女性では,大動脈基部または上行大動脈径≧40 mm の場合に考慮する. IIa C Loeys-Dietz 症候群では,Marfan 症候群よりも大動脈基部または上行大動脈径がより小さい場合でも考慮する. IIa C Marfan 症候群の下行・胸腹部大動脈病変では,TEVAR よりも左開胸下の外科手術を優先的に考慮する. IIa C Marfan 症候群では,大動脈基部または上行大動脈径≧45 mm の症例に考慮してもよい. IIb C Marfan 症候群では,大動脈解離の危険因子 *を有する,大動脈基部または上行大動脈径40~45 mm の症例に考慮してもよい. IIb C * 大動脈解離の家族歴,大動脈拡大速度≧5 mm/半年,重症の大動脈弁閉鎖不全症,妊娠希望などTEVAR:胸部大動脈ステングラフト内挿術[2020年改訂版 大動脈瘤・大動脈解離診療ガイドラインからの変更点]表49の各項目の引用文献番号と他の表の参照指示を削除. (日本循環器学会ほか. 2020 468)より改変) これらの疾患の診療において画像診断の役割は重要であり,心エコー法では描出範囲が限られているため,CTまたはMRIでの評価が有用である.また血圧のコントロールはすべてのaortopathyにおいて重要である.aortopathyを有するCHDにおいては中心動脈圧が高く,また大動脈縮窄のように安静時は正常血圧であっても運動時に血圧の異常な上昇を認める疾患群もある1).大動脈壁のstiffnessや伸展性(distensibility)の評価のために,どのような検査をどのような頻度で定期的に行うかに関しては,エビデンスに乏しい. CHDのaortopathyに関する内科治療についてもエビデンスは乏しい.Marfan症候群のaortopathyに対しβ 遮断薬を 処方する施設が多いが,その有用性に関して結論はでていない.最近におけるTGF-βの過剰活性化の知見から,TGF-βを抑制する作用を有するアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)の投与が行われることもあるが469),aortopathyに対するARBの効果に関しても結論がでておらず,β 遮断薬単独かARB単独か,あるいは両者の併用かに関してのランダム化試験が現在進行中である.二尖弁やFallot四徴のaortopathyにおけるTGF-βの関与についての報告からは,理論的にはARBが有効な可能性があるが,エビデンスが乏しく結論はでていない. 外科的手術に関してはガイドラインにより多少の違いがあるが,Marfan症候群では大動脈径が50 mm以上,または継続的拡張が認められる場合が手術適応とされる1, 468, 469) (表22).近年は人工弁と人工血管を組み合わせた複合グラフトを用いるBentall手術のみならず,自己弁温存大動脈基部置換術(David法やYacoub法)が行われている.チアノーゼ性CHD修復術後の大動脈拡張に対する大動脈形成手術は,「成人先天性心疾患診療ガイドライン(2017年改訂版)」では大動脈径の55 mmを超える拡張が認められる場合に推奨されている1).二尖弁に関しては大動脈弁疾患の合併や高リスク群などにより基準が異なる1, 468). 5.2 先天性心疾患での特殊性と代表的疾患 CHD関連のaortopathyの代表的な疾患としては,大動脈二尖弁や大動脈縮窄,Fallot四徴をはじめとする円錐動脈幹異常疾患群などが挙げられる.遺伝的な背景による組織学的な変化(嚢胞状中膜壊死)は似ているが軽度であり,大動脈解離や大動脈瘤の頻度はMarfan症候群に比べてはるかに低く,組織学的異常に加えて特異な血行動態(容量負荷,圧負荷,壁ずり応力など)が影響を及ぼしていると考えられている465).一般的にMarfan症候群では大動脈拡大は通常バルサルバ洞から始まるが,CHDの代表的疾患である大動脈二尖弁では上行大動脈から始まる.またCHDのaortopathyは上行大動脈にのみ高度拡張を認めるなど,Marfan症候群とは違いがある470). 進行性大動脈拡張の危険因子として,Fallot四徴では男性,右大動脈弓,高度肺動脈狭窄(肺動脈閉鎖),修復時高度チアノーゼ,修復時高年齢,大動脈肺動脈吻合術の既往,吻合術後長期間経過,修復時大動脈高度拡張が挙げられる471).肺動脈狭窄や閉鎖を伴うチアノーゼ型CHDは,修復前は肺動脈血流量に比べ大動脈血流量が多く,特に大動脈肺動脈吻合術を行った場合は上行大動脈血流量が増加する.この特異的な血行動態が幼少期に長期間