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p.41 抽出テキスト

(推算糸球体濾過量)が算出されるが,ACHDではサルコペニアなどで筋肉量の減少を伴うことがあるため251, 419),シスタチンCによるeGFRも利用する.

降圧目標や使用する降圧薬についてもACHDに特有のものはないので,既存の報告を参考にする.降圧目標はJSH 2019で,75歳未満では診察室血圧で130/80 mmHg未満,家庭血圧で125/75 mmHg未満とされている.また, ACHDをすでに心不全の状態と考えるのであれば,降圧目標は異なる可能性がある.心不全のガイドラインでは体心室駆出率が40%未満のHFrEFであればおおむね110~ 130 mmHg,体心室駆出率が保持されているHFpEFであれば130 mmHg未満が推奨されている238, 416).ACHDの高血圧の診療でもこれらの値を参考にできる可能性がある.また,特殊な病態ではあるが,Eisenmenger症候群での過度の降圧は右左短絡を増加させる可能性があるので,注意を要する.

降圧薬を使用する前に,減塩(食塩6 g/日未満),野菜や果物の摂取,適正体重の維持(体格指数:BMI<25 kg/ m 2),可能なら運動療法,節酒,禁煙といった生活習慣の改善を指導する.また,大動脈縮窄では再狭窄の有無にも配慮する.降圧薬に関してはACE阻害薬,ARB,β 遮断薬,ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬は心不全治療薬としても有用であることが示されており238),ACHDでの降圧には有用である可能性が高い.

4.1.2 糖尿病

a. 先天性心疾患での特徴

ACHD患者における糖尿病の罹患率・合併率についていくつかのデータが報告されている.糖尿病と診断された症例の割合はACHD群と非ACHD群で差がなかったと報告されている406).一方で,空腹時血糖が高値または糖尿病と診断された症例は対照群で9.2%であったのに対し, ACHDでは40.4%と有意に高率であったとも報告されている407).さらに30歳から45歳までに糖尿病を発症する率はACHD群で4%と報告されており,これは非ACHD群と比べてリスク比は1.35と高率であった420).また,この検討ではチアノーゼ性心疾患の方が非チアノーゼ性心疾患に比べ高率に糖尿病を発症し,そのリスク比は1.93であったと報告している.

ACHDでは耐糖能異常も多く,およそ40%を超える症例に耐糖能異常を認めると報告されている408, 421).耐糖能異常を有するACHDでは低HDLコレステロール血症も伴うと報告されており421, 422),動脈硬化危険因子の重複が危惧される.さらに,空腹時低血糖もACHDの予後悪化との関連が報告されている423).高頻度の低血糖による交感

4.1.1 高血圧

a. 先天性心疾患での特徴

成人に到達したCHD(ACHD)患者での高血圧の罹患率・合併率は,地域や年齢によってばらつきはあるが,24 ~47%と報告されている406–409).その合併率は非ACHDと比較して低い406, 407)と報告されているが,すでに心疾患をもつACHDでは血行動態に悪影響を与える高血圧を軽視することはできない.ACHDでも非ACHDと同様に,高血圧の合併率は男性406)や高齢者(65歳以上) 409)で高い.

ACHDでの高血圧の特徴として,加齢や肥満などの既知の動脈硬化因子だけでなく,多様な因子が関わっていることがあげられる.例えばチアノーゼを伴うACHDでは腎障害を合併することが多く410, 411),腎障害は長期的には高血圧の原因となりうる412).また,大動脈縮窄はそれ自体が高血圧の危険因子で,修復術後ですら動脈コンプライアンスは低下しており413),高血圧のリスクは残存する414, 415). ACHDにおいて高血圧は冠動脈疾患や脳卒中などの危険因子になるばかりでなく,大動脈縮窄の修復術後,大動脈二尖弁,Fallot四徴,動脈スイッチ術後の完全大血管転位などのACHD患者では,大動脈拡大の原因となる可能性がある. b. 管理

ACHD患者の高血圧の管理については,大きなエビデンスが発表されていない現状では,既存の高血圧ガイドラインに従うことになる.2019年の日本高血圧学会のガイドライン(JSH 2019) 416)において高血圧の診断は,診察室での収縮期血圧140 mmHg以上かつ/または拡張期血圧90 mmHg以上とされている.血圧は毎年,診察室または家庭で測定し,評価されなければならない(推奨クラスI) 412).

診断の際には二次性高血圧や高血圧合併症,臓器障害の有無を確認する.一般的な二次性高血圧の鑑別診断も重要であるが,ACHDの病態に即した検索も重要である. ACHDに特徴的な高血圧の原因として,睡眠時無呼吸症候群254),大動脈縮窄術後の高血圧再燃417),チアノーゼ性心疾患での腎障害の合併410, 411)や,まれであるが褐色細胞腫やパラガングリオーマの合併418),などがあげられる.さらに薬物も原因になることがあり,抗不整脈薬であるアミオダロン内服中の甲状腺機能異常,術後疼痛に対する非ステロイド性抗炎症薬などの内服,などにも注意する.このようにACHDの高血圧には特殊な原因があるので,病歴,家族歴や身体所見を慎重に収集する.

臨床検査としては,尿一般検査,一般的な血液検査に加え,クレアチニン,尿酸,電解質,脂質プロファイル,血糖値や肝機能を測定する.血清クレアチニンからeGFR