p.38 抽出テキスト
d. 心室頻拍,心室細動 Fallot四徴修復術,Rastelli手術などの心修復手術による心室切開線や縫合線が術後に瘢痕化し,心室不整脈の発生要因になる.そのような心室頻拍(VT)のCA治療は,心房頻拍の場合と同様に,誘発性や頻拍中の血行動態が安定するmappable VTに対してはリエントリー回路や発生源を同定し,回路の遮断や発生源に対する焼灼を行う.不整脈機序を十分に同定できないunmappable VTに対しては,心室ペーシング波形がVT波形を再現できる部位の焼灼,低電位領域や伝導途絶部位を通過する経路の広範囲な焼灼などの方法がとられる395, 396). 心室筋は心房筋よりも厚く,さらに瘢痕組織が周囲に存在する場合にはアブレーションの標的を完全に焼灼できないことがあり,正常心における心室頻拍アブレーションよりも難治性である.また,正常心の心筋梗塞後VT,心筋症に伴うVTなどでは心外膜側に不整脈基質が存在することがあり,この場合には心窩部より心嚢穿刺を行って心外膜側をアブレーションすることも可能である397) が,心修復後VTの場合は心嚢が癒着しているためこの方法がとれない. CHDに伴うVTは他の器質的心疾患に伴うVTに対する治療方針と同様に,ICDの併用が原則である.これまで使用されていた経静脈的ICDは,心臓に対する静脈アクセスルートが制限されている場合や心内短絡がある場合には原則禁忌であったが,皮下植込み型ICDによりこの制約が解消された398). 心室細動に対するアブレーション治療は,トリガーになる心室期外収縮を標的にする方法,Purkinjeネットワークや瘢痕組織をアブレーションする方法などが報告されているが,CHDに伴う心室細動に対するアブレーション法は確立されていない.ICDの併用が原則である. 3.4.2 植込み型心臓電気デバイス CIEDは経静脈ペースメーカ,リードレスペースメーカ,両室ペースメーカ(心臓再同期療法),経静脈ICD,皮下植込み型ICD,植込み型心臓モニタなどの機器を指す.このうち植込み型心臓モニタはペーシング機器ではないので,総称としてcardiac implantable pacing deviceの語は用いない.また,着用型自動除細動器(wearable cardioverter defibrillator: WCD)はICDと同様に重要な機器であるが,CIEDには含めない. a. ペースメーカ ペースメーカは基本的には徐脈性不整脈に対する治療機器であるが,心房抗頻拍機能付ペースメーカは心房頻拍や心房細動を併発する徐脈性不整脈患者に使用される. 不整脈の電気生理学的情報を統合した不整脈マッピングシステムが開発されており,その使用が推奨される333, 384, 385). CAの手技中に全ての頻拍が誘発され安定して持続すれば,頻拍の興奮伝導過程をマッピングして,リエントリー回路の遮断,または頻拍発生源への焼灼が可能であるが(mappableな心房頻拍) 386),誘発されない頻拍,持続しない頻拍などのunmappableな心房頻拍に対しては,不整脈マッピングシステムで検出された異常心筋組織による低電位領域や伝導途絶部位を通過する経路を広範囲に焼灼する方法が推奨される387).また,瘢痕組織に囲まれた不整脈基質を十分に焼灼するため,アブレーションカテーテルの組織への先端接触圧(contact force)を測定する方法が普及し,接触圧,出力エネルギー量,焼灼時間などのパラメータによる計算値でCAの効果を予測することができる388). CAに関する技術的進歩は著しいが,CHDに伴う心房頻拍はCA後の再発率が比較的高く,薬物治療,ペーシング治療,外科的治療とのハイブリッド治療を考慮しなければならない状況もまれではない. c. 心房細動 正常心には孤立性心房細動という疾患概念があるように,器質的心疾患を伴わない状態においても心房細動(AF)のみが発生することが少なくない.そしてその孤立性AFの発生源は肺静脈が大多数であり,肺静脈隔離術がCA治療の中心的な役割を担っている389, 390).しかしその一方で, CHDに伴うAFは器質的変化に伴うものが一般的であり,肺静脈以外の病的心房筋から発生するAFが多数である391).多発性心房期外収縮,心房頻拍の延長線上にAFが存在し,正常心における定型的な肺静脈隔離術だけでは有効でないことが多い. しかしながら,肺静脈がCHDにおけるAFと全く無関係ということではなく,心房中隔欠損に対するデバイス閉鎖術前の肺静脈隔離術が遠隔期のAF再発率を低下させるという報告392),その他の心奇形や術後AFに対する肺静脈隔離術の報告393, 394)がある.現実的には定型的なAFのCA治療法は存在せず,肺静脈隔離術,左房後壁隔離術(box isolation),上大静脈隔離術,低電位領域や伝導途絶部位を通過する経路を広範囲に焼灼する方法などが行われている. このように,CHDに伴うAFに対するアブレーション治療は確立されてないため,アミオダロンなどによる薬物治療が重要であり,また房室伝導アブレーションとペースメーカによる治療,ペースメーカによる抗頻拍ペーシング治療などの併用も考慮すべきである.