p.36 抽出テキスト
b.慢性期 器質的心疾患を合併する心室頻拍においては,長期の間に心機能が破綻する頻拍への移行がみられること,ICD治療に対する優位性が示されていないこと,および催不整脈作用の問題から,突然死のリスクがある場合に薬物単独の治療は行うべきでない.ICD治療下においては,発作の抑制や症状軽減の目的で薬物治療の併用を考慮する.突然死リスクの低い非持続性心室頻拍ではβ 遮断薬が考慮される. 3.3.3 抗凝固療法 脳卒中イベントは,CHD患者においても洞調律を維持できない患者で出現しやすく,罹病率を上昇させる358). 心房粗動や心房細動では,脳梗塞などの血栓塞栓症を予防するため,CHADS2スコアが1 点以上の場合は抗凝固療法が推奨される(表18) 356).頻拍を合併するCHD患者は心不全を呈することがほとんどであるため,持続する心房細動や心房頻拍では抗凝固療法を行う.48時間以上持続する場合には同期下カルディオバージョン前3週間と洞調律復帰後4週間の抗凝固療法が必要であり,ACHD患者においても血栓予防の効果が確認された359).頻拍を繰り返す場合は,不整脈による症状が軽くても,脳卒中予防のために抗凝固療法を行う. CHDに対する直接経口抗凝固薬(DOAC)の有効性と安全性が検討されているが,腎機能障害例での出血イベントの増加が報告されているので,注意が必要である360, 361). 3.4 非薬物治療 ACHD患者の不整脈および突然死に対する非薬物治療 再発予防を行う.心機能低下例や重症複雑CHD例ではIII群薬を,副作用の出現に注意しながら内服投与する.心機能低下のない単純CHDではI 群薬の使用を検討する(表16).慢性化した場合にはレートコントロールと抗凝固治療を行う. 3.3.2 心室頻拍 表17 心室頻拍の薬物治療の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 血行動態が不安定な症例には同期下カルディオバージョンを行う. I C同期下カルディオバージョンが困難な場合はIII 群薬かI 群薬を考慮する. IIa C植込み型除細動器による治療中に頻拍の頻度を下げる目的で薬物治療を考慮する. IIa C突然死リスクを上昇させない非持続性心室頻拍にはβ遮断薬を考慮する. IIa C突然死リスクの高い症例に薬物単独の治療を行うべきではない. III Harm C a. 急性期 心機能異常がなく特発性心室頻拍を合併している場合には,通常のガイドラインに沿って治療が行われるが356), CHDに関連する心室頻拍の場合は治療が大きく異なる. 急性期には同期下カルディオバージョン行い,それが困難な場合には陰性変力作用の少ないIII群薬かI群薬を考慮する.心室細動に対しては非同期カルディオバージョンを行う.表16 Vaughan Williams による抗不整脈薬の分類 群作用機序抗不整脈薬(一般名) Ia Naチャネル遮断活動電位持続時間延長プロカインアミド,ジソピラミド,シベンゾリン,ピルメノール, Ib Naチャネル遮断活動電位持続時間短縮メキシレチン,リドカイン,アプリンジンIc Naチャネル抑制活動電位持続時間不変プロパフェノン,フレカイニド,ピルシカイニドII β受容体遮断メトプロロール,ビソプロロール,アセブトロール,カルテオロール,プロプラノロール,ピンドロール III Kチャネル遮断アミオダロン,ソタロール,ニフェカラント IV Caチャネル遮断ベラパミル,ベプリジル,ジルチアゼム