p.34 抽出テキスト
おこるリエントリー性VTがみられる337). 代表的な疾患はFallot四徴術後であり,術後遠隔期のVT・VFについてさまざまな報告がなされている.肺動脈弁逆流による右室容量負荷が主な原因とされ,QRS幅≧ 180 msや右室機能不全が主な危険因子であるが338, 339),これに加え左室拡張末期圧上昇などの左室の指標も重要であるとする報告が散見される135, 322, 340).本邦では欧米と比較し,Fallot四徴術後遠隔期のVT・VFの発症率は低く,生存率は高いが341),これは本邦の外科医が1970年代から重度の肺動脈弁逆流を残さないように工夫して修復術を施行してきたためと考える341, 342).しかし,本邦においても術後遠隔期にVT・VF・突然死例が散見される.経過良好な例であってもFallot四徴術後のフォローは継続すべきである. b. 体心室右室 主要な体心室右室疾患は完全大血管転位に対する心房内血流転換術後と修正大血管転位である.この疾患群は加齢とともに右室不全が出現し,それとともにVT・VFの発生率が高くなる325, 343).その機序にはいまだ議論の余地があるが,完全大血管転位に対する心房内血流転換術後では電気生理学的検査でのVT・VF誘発は植込み型除細動器(ICD)適切作動の予測に有用でなかったとの報告がある344).この疾患群では心室切開を施行していないことが多く,VT・VFの機序が肺動脈弁下右室疾患とは異なると考えられる.また,VT・VFに先行して心房頻拍が記録された報告が散見され,その機序は心房頻拍の心室への速い伝導が心筋虚血を引き起こし,その結果VT・VFを誘発するためであると推測される344–346). c. Ebstein病 Ebstein病においても一定の率でVT・VFを合併し,右房化右室にみられる異常組織がVT・VFの起源となりうる328, 347).VT・VFと心室機能低下との関連についての報告もある348). d. Fontan循環 Fontan循環におけるVTの発生率は比較的低く,遠隔期には数%で,心筋線維化との関連が示唆されている349, 350). 3.1.4 突然死 CHD患者の死因に占める心臓突然死の割合は徐々に低下してきている.1990年代の報告では約1/4 を占めたが, 2015年の報告では7%であった351–354).そのすべてが不整脈に関連しているのではなく,不整脈関連突然死は約80%で,他に血栓・出血,動脈瘤破裂,心筋梗塞がある352, 353).突然死の予測因子の後方視的研究では,体心室収縮能低下,QRS幅の増大(QRS波形の変化),上室頻拍の既往が し生存率には関与しないことが報告されている331).複雑CHD では他にもadenosine sensitive focal junctional tachycardiaの存在も報告されており,これらの頻拍の発生率や予後,slingが回路の一部となりうるかどうかなど,未だ解明されていない点が多い331, 332). b. 後天的要因i. 心房負荷 心房負荷は心房筋のリモデリングを促進し,不整脈基質を形成する333). 右房負荷が著明な心房肺動脈吻合型Fontan手術では,高率にIART,AFが出現し,術後30年での上室頻拍累積回避率は30%以下である320, 321, 334).上下大静脈肺動脈吻合(TCPC)型Fontan手術においても房室弁逆流や肺静脈に関する手術既往のある症例などに,術後経過年数とともに上室頻拍の出現率が上昇する327). また,Fallot四徴,Ebstein病など,右房負荷が起こってくる疾患群で心房不整脈の合併率が高くなる322, 328). ii. 手術既往 心房切開線は心房内に電気的障壁を形成し,IARTの不整脈基質となりえる333). 心房内血流転換術(Mustard手術,Senning手術)は心房内に切開線,縫合線が多くなり,術後遠隔期にIARTの合併が多い術式である.どちらの術式も下大静脈-三尖弁輪峡部に縫合線があり,IARTのなかでも三尖弁輪を旋回するものが多い.心房内の複雑な切開線と縫合線のため,下大静脈-三尖弁輪峡部を介さない心房頻拍もみられる335). iii. 加齢 CHD患者においても一般成人のAFと同様に上室頻拍の合併率は加齢とともに増加する.CHD患者における慢性的な右房負荷は右房心筋のリモデリングをもたらし,加齢とともに進行し,上室頻拍の発生に関与する336).Fallot四徴術後患者対象の多施設共同研究では,AFを含む上室頻拍の発症率が年齢とともに上昇し,55歳以上では50%以上であった.さらに,45歳以上ではAFの発症率が心房頻拍の発症率を超えて上昇した322).また完全大血管転位に対する心房内血流転換術後においても術後経過年数ともに上室頻拍の発症率が高くなり,術後50年の回避率はほぼ0%であった325). 3.1.3 心室頻拍,心室細動 心室頻拍(VT),心室細動(VF)の合併率は上室頻拍よりも低いが,突然死の主要な要因である. a. 肺動脈弁下右室 肺動脈弁下右室疾患においては右室切開線に関与して