p.33 抽出テキスト
併が多い308).心房内伝導障害部位となる分界稜は,右側相同心では87%で両側に存在し,左側相同心では88%で両側いずれにも存在しない326).そのため右側相同心は心房内リエントリー性頻拍(IART)の合併が多い327).一方,左側相同心ではIARTの合併率は低く,加齢による洞機能不全合併率の上昇とともに非リエントリー性の心房頻拍や心房細動(AF)を合併する307). ii. 副伝導路 Ebstein病では三尖弁弁尖がplasteringしている部位,右房化右室に存在する異常組織に副伝導路を合併することが知られ,ほとんどの場合,三尖弁中隔尖・後尖に存在する328, 329).また,複数副伝導路,幅広い(broad)副伝導路,遅い伝導路であることが多い.AF発作時のwide QRS頻拍(いわゆる偽性心室頻拍)や,副伝導路を順伝導するwide QRS房室回帰性頻拍は,まれではない153). 修正大血管転位に代表される房室錯位では20%前後にEbstein病を合併し,副伝導路の合併が一般よりも高率にみられる83). iii. 重複房室結節 相同心や房室錯位では重複房室結節を認めることがある.右側相同心では100%に,左側相同心では32%に重複房室結節を認めたとの報告がある309).相同心や房室錯位における房室結節以下の刺激伝導路は,重複房室結節の間にslingが形成されている例と,されていない例とがある309, 330).この重複房室結節は2つの房室結節を介して房室回帰性頻拍を発症することがある330).右側相同心で両心室腔のバランスが保たれている例に重複房室結節が多く存在し,上室頻拍を高率に発症すること,治療によく反応 現した場合,周術期一過性房室ブロック既往の有無を確認する. また,心房内血流転換術(Mustard手術,Senning手術)後は心房内の切開線,縫合線が多く,術後遠隔期に洞機能不全の合併がみられる.術後20年の洞機能不全累積回避率はMustard手術,Senning手術でそれぞれ46%,40%であった319). ii. 心房負荷,心室負荷 右房負荷,右室負荷が進行すると右房・右室のリモデリングが進行し,洞結節や房室結節の機能にも影響を及ぼす.右房負荷となる代表的な疾患は心房肺動脈吻合型Fontan手術で,洞機能不全の合併が約40%にみられる320, 321). Fallot四徴は右房負荷・右室負荷のどちらも出現する疾患であるが,一定の割合で洞機能不全,房室ブロックを合併する322–324). iii. 加齢 一般成人においても加齢とともに徐脈性不整脈の発症率が高くなるが,CHDにおいても加齢による刺激伝導系の影響は無視できない.先天性の刺激伝導系異常である左側相同心の洞機能不全や,心房心室不一致の房室ブロックも,加齢とともに発症率が高くなる83, 307).また,徐脈の原因となる心房・心室負荷も経年的に悪化し,刺激伝導系障害を引き起こす325). 3.1.2 上室頻拍 a. 先天性刺激伝導系異常i. 心房形態 相同心では,その特殊な心房形態のため,上室頻拍の合 大動脈 肺動脈 三尖弁 僧帽弁右房前方房室結節 前方房室結節後方房室結節 後方房室結節右心耳右心耳 左脚左脚 右脚前方刺激伝導路 心室中隔欠損大動脈 心室中隔欠損 解剖学的左室 肺動脈 左右 後後 前 前 図2房室錯位の刺激伝導系(Anderson RH, et al. 1973 311)より改変) Copyright (1973), with permission from Elsevier.