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p.28 抽出テキスト

1.5 先天性心疾患術後の特殊性

先にも触れたように,CHD術後心不全と非CHD心不全における特筆すべき差異,およびCHDでの特殊性は,心不全進展の原因病態にあると考えることができる.

成人のHFrEFの代表的な原因である冠動脈疾患や拡張型心筋症などでは,心筋障害により惹起される心不全生体反応が心不全進展の中心的役割を演じる.また,成人におけるHFpEFは,心房細動などの不整脈や冠動脈疾患,糖尿病,脂質異常症などを背景とすることが多いことが示されているが,もっとも多い原因は高血圧症という負荷異常である.

CHD術後においては一部,心筋障害自体を背景に,継続する負荷異常が主病因としてあり,生体反応惹起を伴い心不全が進行するという,いわばHFpEFとHFrEFの病態が混在した様相を呈している.このことは,CHD術後心不全の治療介入を考えるうえできわめて重要であり,より負荷軽減に重きを置いた治療戦略とその評価の重要性を示唆する.これは,成人のHFrEFにおいて確立された神経液性因子の抑制という内科治療が,成人におけるHFpEFやCHD術後心不全においては必ずしも有効であると証明されていないことと,相応すると思われる.

さらに,CHD術後は先に述べたように右心系の心不全が多いのも特徴であり,その中でも右心バイパスという特異な循環を呈するFontan術後心不全,修正大血管転位や完全大血管転位の心房内血流転換術後の体心室右室の心不全,さらには心房内血流転換術後の心房機能への影響が心不全病態にかかわるといった,きわめて特異な病態の存在があるが274),詳細は第4章に譲る.

2 肺高血圧症

2.1 病態,分類

2018年の第6回世界肺高血圧シンポジウム(フランスのニース開催)において,肺高血圧症(PH)の定義は「平均肺動脈圧(mean pulmonary arterial pressure: mPAP)>20 mmHg」とされ,前毛細血管性(precapillary)PHの条件としては,「肺血管抵抗(pulmonary vascular resistance: PVR)≧3 WU」を加えた.そして,PHは以前とほぼ同様の概念で5群に分類されている275).CHD関連PH(CHD-

荷により心房内伝導遅延が存在している場合があることから,一般成人とは極端に異なるAVI設定を要することがある.そのため,CHDのAVI設定には心電図,胸部X線,手術記録の確認が必要である263).

1.4.3 心室内非同期

CHDにおいても左室伝導遅延を伴う左室内非同期を呈する疾患に関しては,一般成人と同様の治療方針でCRTを施行することにより,左室内非同期の改善が期待できる264).しかしながら,右室伝導遅延を伴い右室内非同期がみられる場合には,左室とは異なる考え方を要する.右室は解剖も収縮様式も左室とは異なるためである.

また,右室内非同期が主である場合のCRTの効果は左室内非同期の場合より劣ると考えられている264).体心室右室や肺動脈弁下右室のCRTの報告が散見されるが,治療法の確立のため症例の蓄積が望まれる265–268).

1.4.4 心室間非同期

CHDの特殊な心室形態として単心室血行動態があげられる.この心室形態では,主となる心室のほかに痕跡的な心室が存在し,その間に大きな心室中隔欠損が存在する場合が多い.ここに心室間の収縮のタイミングのずれ(心室間非同期)がみられると,心室中隔欠損を介して両心室間を血液がいったりきたりして,前方に流れていかない現象(swinging biventricular motion)が観察される265, 269).

また,複雑CHDの二心室修復例では,心室間相互作用(ventricular-ventricular interaction)は重要であり,左右心室の同期性を維持することは血行動態の改善につながる270).

1.4.5 心臓再同期療法の適応

CHD患者におけるCRTの適応は心室形態により異なる.前述のとおり,体心室は左室,右室,単心室(血行動態)に大きく分けられ15, 271, 272),さらに肺動脈弁下心室非同期の存在も考慮しなければならない266, 268).体心室右室や単心室血行動態の場合には左室とは異なる心室非同期のパターンが存在するため,CRTの適応やリード位置については個々の解剖,心室非同期のパターンを考慮して決定する15, 265, 273).

体心室右室と単心室血行動態に対するCRTはエビデンスに乏しく,推奨クラスは低いが,体心室左室よりも血行動態的に不利であるため,早期の導入が望まれる.