p.24 抽出テキスト
ルイシグアトも,VICTORIA試験でHFrEF患者の心血管死や心不全再入院を抑制した242).これらの新規治療薬のCHDにおける心不全に対する効果は未知であるが,今後の検証に値すると考えられる. 1.2.2 HFpEF CHD術後遠隔期では,容量負荷や圧負荷のため右室機能不全,肺心室機能不全の発生率が高く,また,HFpEF類似の病態を示すことがある.開心術後であることから,心不全の病態として収縮性心膜炎の関与も考慮する必要がある.非CHD症例においても右室機能不全・肺心室機能不全の予後改善を目的とした治療は確立されていない.以下の薬物治療は,主に非薬物的な治療が除外された場合,心不全症状の改善を目的に使用される. a. 利尿薬 うっ血に基づく労作時呼吸困難,浮腫などの症状を軽減する.ループ利尿薬を基本に用いる.血清ナトリウム値や血清カリウム値の低下をきたす可能性があり,電解質の変動に留意が必要である.バソプレシンV2受容体拮抗薬トルバプタンは,集合管にあるV2受容体を遮断することにより水の再吸収を阻害し,水利尿を促す.低ナトリウム血症を回避し,うっ血を改善する. b. 肺血管拡張薬 肺動脈性肺高血圧症合併症例においては,エンドセリン受容体拮抗薬,ホスホジエステラーゼ(PDE)V阻害薬,グアニル酸シクラーゼ阻害薬,プロスタサイクリン製剤が認可されている.詳細は「2. 肺高血圧症」を参照のこと. 1.2.3 慢性心不全急性増悪 急性増悪時の治療目標は,自覚症状を早期に改善し,改善された状態を維持することである.そのためには病態の迅速な把握が不可欠である.CHDの慢性心不全急性増悪は,もともと右心系に構造異常が多いことから,右心不全の割合が高いことが特徴である. 心不全治療薬を服用している患者が急性増悪したとしても,基本的には心不全治療薬投与は継続するべきである.しかし,ショック,組織低灌流,高度の徐脈,高カリウム血症などを呈している場合は,減量および中止を考慮する.病態が安定したら再開,あるいは目標用量まで増量する. 以下に,慢性心不全急性増悪の際に使用する薬物を挙げる. a. 利尿薬 利尿薬は体液貯留による肺うっ血や浮腫などの心不全症状を軽減する.即効性のあるループ利尿薬が頻用されている.静脈注射にて十分な利尿効果が得られないときは,持 一方,大血管転位の心房内血流転換術後や修正大血管転位など,解剖学的右室が体心室機能を担っている症例やFontan術後の症例に対しては,予後改善効果は明らかではない.しかし,体心室右室症例やFontan術後症例であっても,体心室のEFが低下しているACHD患者では,成人心不全のガイドラインで奨励されているHFrEFに準じた薬物治療を行うことが一般的である. また,CHD術後遠隔期の小児症例については,大規模臨床試験は存在しない.成長期に薬物療法を継続することによる成長への影響も明らかになっていないが,HFrEFに対しては成人同様の薬物治療を行うのも一般的である. 以下に代表的な薬物とその留意点を挙げる. a. ACE阻害薬 成人のHFrEFにおいて,心不全患者の生命予後改善効果および心血管イベント抑制効果が大規模臨床試験において証明されている.無症状の左室収縮機能不全についても,心不全の入院を抑制し,生命予後を改善することが明らかになっている.CHD術後症例においては,右左短絡のある症例や肺血流を短絡に依存している場合には,低酸素血症を増悪する可能性についても留意が必要である.近年, Fontan循環不全では体血管抵抗が低下する症例があることが報告されており179),ACE阻害薬の適用は慎重を期す必要性が示唆されている.副作用として咳嗽,血圧低下,腎機能増悪,高カリウム血症に留意が必要である. b. アンジオテンシンII受容体拮抗薬 成人のHFrEFにおける大規模臨床試験により予後改善効果が示されているが,ACE阻害薬を超える効果は示されていない239).咳嗽などの副作用によりACE阻害薬を使用できない症例に投与を検討する. c. ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬 成人のHFrEFにおける大規模臨床試験により有用性が確認されている.他のRAA系阻害薬との併用にて血清カリウムの上昇をきたしやすいので,留意が必要である. d. β遮断薬 無症候性・症候性のいずれにおいても,HFrEFに対して大規模臨床試験で有効性が確認されている240).β 遮断薬の効果には用量依存性があるため,少量から開始し,増量に際しては自覚症状,脈拍,血圧を参考にして,心不全の増悪や低血圧・徐脈に注意が必要である. e. 今後期待される治療薬 糖尿病治療薬であるナトリウム・グルコース共輸送体2 (SGLT2)阻害薬が成人心不全治療薬として注目されている.ダパグリフロジンはDAPA-HF試験で,糖尿病の有無にかかわらずHFrEF患者の心不全増悪と死亡を抑制した241).経口可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬であるベ