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p.22 抽出テキスト

与しているのかについての詳細はいまだ不明である230).

CHD術後の心不全では,ときに非CHD心不全と同様に,血行動態異常や心筋異常が心室の電気的・機械的収縮の非同期を招来し,心不全を進展させる要因になる228, 231).負荷の異常,心筋の直接障害,そしてそれらによって惹起される神経液性因子の活性化に代表される生体反応が,心室リモデリングの進行と心不全の進展をもたらすという, CHD術後の心不全進展病態パラダイムは,非CHD心不全において成人で多い虚血性心疾患に基づく心不全とは共通といえるが,CHDではその中心的役割の比重が残存継続する負荷異常で大きいことは治療上,重要と思われる.

心不全は進行性であり,その進行を抑制すべく,適切な時期に治療介入を行うことを目的に,成人における急性・慢性心不全診療ガイドラインでは,器質的心疾患のないリスクステージ(Stage A),器質的心疾患を有するが心不全症候のないステージ(Stage B),器質的心疾患を有し,心不全症候を有する心不全ステージ(Stage C),難治性の心不全ステージ(Stage D)のように,心不全のステージ分類がなされており,エビデンスに基づき,無症候であっても心不全進展の高リスク群であれば早期に治療介入することが推奨されている232).CHD術後の心不全は上述の病態に鑑みて,すべてがStage B以上に分類され,表12 に掲げるようなCHD術後の特定病態・疾患における経時的経過観察の重要性と必要に応じた早期からの介入の重要性が示唆される.

1.1.2 病型分類

a. 右室不全,左室不全,単心室不全

心不全は不全に至る主たる心室により,右室不全と左室

よる心室容量負荷によって心不全が進行する.完全大血管転位の心房内血流転換術(Senning手術,Mustard手術)後や修正大血管転位に対する従来型の手術では,解剖学的右室が高圧を支える体心室となるために,三尖弁閉鎖不全と右室機能不全が加齢とともに増加してくる.また単心室循環に対して行われるFontan手術では,右室の欠落という意味において右心不全の一つの形であるとともに,心室は後負荷上昇に対して不適合状態にある226).このように,CHD術後遠隔期における心不全進展の主病態の多くが残存継続する血行動態異常(負荷異常)であることは,特筆すべきことである.

CHDではさらに,生まれつきの心血管機能異常,術前の血行動態異常,手術侵襲による虚血,再灌流障害が,心室自体の機能不全を招来し,残存する血行動態異常の背景にある心不全進展増悪因子として関与していることもあると思われる.例えば,大動脈縮窄・大動脈弓離断では,大動脈は先天的に大動脈中膜組織異常に伴う壁硬化があり,狭窄解除後も後負荷上昇と,それに伴う心室圧負荷・硬化といった病態がみられる227).また,Ebstein病や純型肺動脈閉鎖の右室狭小化例では,心室機能異常,特に拡張不全が先天的に存在し,心不全進展の要因となりうる.

これらの負荷異常,そして心筋異常は,心室への損傷刺激として,心不全ストレス反応としての神経液性因子の活性化,酸化ストレス上昇,血管内皮障害,炎症性サイトカインの上昇を生み,心室リモデリングの進行と血管機能異常の進展を招くと考えられている148, 228, 229).しかしながら,成人における心不全進展に中心的な役割を演じている神経液性因子の活性化に代表されるこれらの経路が,実際にCHD術後の心不全進展にどの程度,そしてどのように関

表12 先天性心疾患術後心不全の原因と疾患

疾患群主な病変と病態心不全の主病因

術後残存病変があるFallot四徴,右室流出路形成疾患群肺動脈狭窄・逆流大動脈硬化右室容量・圧負荷左室圧・容量負荷

Ebstein病,房室中隔欠損房室弁逆流心室容量負荷大動脈縮窄,大動脈弓離断大動脈遺残狭窄大動脈硬化心室圧負荷左右短絡疾患肺高血圧右室圧負荷

特異な循環が残る単心室循環Fontan循環

完全大血管転位,心房内血流転換,修正大血管転位体心室右室右室圧負荷Ebstein病,純型肺動脈閉鎖,低形成性心室疾患群拡張不全(収縮不全)心室機能不全