p.21 抽出テキスト
は心室容積,拡張末期圧,心係数などと相関するが,単独では予後予測因子にならない218). そのほか,NEとアンジオテンシンIIは心室収縮能に逆相関し,ANPは心係数と逆相関する217).心室形態の違いでは,左室性単心室においてBNP,NE,hs-CRP,sTNF (可溶性腫瘍壊死因子)-RI,IL-6,ET-1が予後予測因子となる.右室性単心室では有意な予後予測因子となりうるバイオマーカーは見出されていない216). いずれにせよ,心室形態,循環動態,術式の違いなど多彩な因子が影響するので,従来のバイオマーカーでは単独の指標や1つの数値レベルで有用性を検証することは困難である.しかし,最近報告されたガレクチン3や増殖分化因子15は予後予測因子として役立つとされ,今後の検証が期待される219, 220). 3.5.3 未修復例,チアノーゼ残存例 単心室循環でFontan手術が行われていない症例(未手術例,短絡手術・肺動脈絞扼術・Glenn手術までの症例)とEisenmenger症候群がこれに含まれる.チアノーゼが BNPやNT-proBNPに影響を与えるかどうかはいまだ議論がある.小児を中心とする研究では低酸素血症とBNPには相関がないとする報告がある一方221),成人を対象とした研究では体水分状況にかかわらず,低酸素血症がある患者のBNPがない患者と比較して高いと報告されている222). Fontan手術未到達の単心室循環患者では加齢に伴って心室拡張末期圧が上昇していくが,BNPがこの上昇をよく反映する.拡張末期圧<12 mmHgでは平均108 pg/mLであったが,拡張末期圧>12 mmHgでは平均234 pg/mLまで上昇していたとの報告がある223).ただし,血行動態が各症例でさまざまであるため,絶対値よりも各症例の変動から読み取っていく必要がある. Eisenmenger症候群については,BNPは加齢に伴って上昇するが,NYHA心機能分類や6分間歩行距離とは相関しない224).予後予測には有用で,BNP≧50 pg/mLで死亡率が上昇する225).持続的な上昇傾向も予後不良のサインである224). 第2章 合併症の病態と治療 1 心不全 1.1 病態 1.1.1 原因分類と主病態 CHDの手術における救命率が約95%に達している現在において,術後の心不全管理は生活の質を含めた予後の観点から,臨床上きわめて重要である.一般に心不全の原因は,心筋の異常,負荷(血行動態)の異常,脈の異常に分けられる.それらが単独または種々の程度に複合して,心ポンプ機能(血液の拍出と流入)異常を来すことにより,肺や体静脈系のうっ血と組織の低灌流を招来し,呼吸苦, 浮腫,易疲労感,運動耐容能低下といった心不全の症状を引き起こす.CHD術後においても上記3つが主原因となって心不全が起こることは共通である. CHDの術後の状態は機能や構造の面から,1心室中隔欠損や心房中隔欠損のように,ほぼ正常の機能,構造が得られるもの,2生まれ持った形態上の問題から術後も残存病変がやむなく残るもの,3機能的には正常の循環に近づくものの特殊な循環が残るもの,に分けることができる.このうち,術後遠隔期の心不全が問題となるのは2と3であり,その代表的な疾患・病変を表12に示す. Fallot四徴やその類縁疾患では,弁輪をまたぐパッチによる弁輪拡大や心外導管による右室流出路再建に伴う肺動脈閉鎖不全による右室容量負荷,肺動脈狭窄による右室圧負荷によって右心不全が進行する.Ebstein病や房室中隔欠損の一部では残存三尖弁閉鎖不全や僧帽弁閉鎖不全に