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p.20 抽出テキスト

である.

多くの場合,心臓カテーテル検査やCT,MRIなどで得られた所見や数値を用いるが,それらと同等に重要な位置を占めるのがバイオマーカーである187).ただし,CHD患者の心不全の病態は多岐にわたるため,1つのバイオマーカーですべての病態に有用性を発揮できるわけではない.病態に応じたバイオマーカーの選択や複数のマーカーを組み合わせた評価を考える必要がある.主なバイオマーカーを表11に示す.

3.5.1 二心室循環

a. 体心室右室

修正大血管転位の未手術例や機能的修復術後例,完全大血管転位の心房内血流転換術後例がここに含まれる.これらの症例ではBNPおよびNT-proBNPがNYHA心機能分類や最高酸素摂取量(peak V

4 O2)と関連するという報告

が多い188–193).ANPも同様に心不全の病勢判定に有効である194).BNP≧36 pg/mL,ANP≧75 pg/mLが右室機能不全の予測に役立つ188, 194).ただし,これらのマーカーではQOLとの関連性は認められておらず,この点で注意を要する195).

一方,レニン・アンジオテンシン系ホルモンやカテコラミンについては右室収縮能に関連するという報告もあるが,心不全の病勢には弱い相関しかない196–198).また,これらの疾患の肺側心室(解剖学的左室)機能を反映するバイオマーカーは知られていない.

b. 肺心室右室

Fallot四徴の術後,心房中隔欠損(ASD)などの右室容量負荷疾患と肺動脈性PHや右室流出路狭窄などの右室圧負荷疾患がここに含まれる.BNPは総じて上昇している199–203).ノルエピネフリン(NE)濃度がNYHA心機能分類,peak V

4 O2と相関したとの報告があるが,その他のカ

テコラミンやレニン・アンジオテンシン系ホルモンとは有意な相関はみられない200).

BNPはFallot四徴術後やASDの管理に有用である204, 205).肺動脈弁置換術やASD閉鎖術を行うと,BNPは右室容積の改善に比例して低下する206).また,PHにおける右室機能低下に伴って上昇がみられ,BNP≧150 pg/ mLで死亡率が上昇する207).システマティックレビューによってBNPとNT-proBNPがPHを伴うCHDの予後予測に有用であることが確認されている203).肺血管拡張薬やNO吸入はBNPを低下させるため,病勢判定にも有用である208).ただし,肥満や腎機能障害がBNPの値に影響するため,注意が必要である209, 210).妊娠経過中にはBNPとNT-proBNPは心室への容量負荷を反映して変動するが,その意義についてはいまだ明らかでない.

その他,高感度トロポニンT,soluble suppression of tumorgenesis-2,ホモアルギニン,B7-H3が心不全の予後予測に有用であると報告されている211–215).

3.5.2 単心室循環

Fontan術後患者のバイオマーカーの意義は十分明らかになっていない.二心室循環疾患ではインターロイキン6 (IL-6),NE,高感度C反応性蛋白(hs-CRP),BNP,エンドセリン1(ET-1)が予後予測因子になりうるのに対して,単心室循環疾患ではBNPとET-1のみが有意な予後予測因子であるとの報告がある216).しかし二心室循環においては体心室が右室か左室かによってバイオマーカーの意義が違ってくるように,単心室循環疾患においても心室形態による相違が存在する可能性がある.また,右房肺動脈吻合(APC)患者と上下大静脈肺動脈吻合(TCPC)患者ではBNPのレベルが大きく違う.心房筋からのBNP分泌があるため,右房拡大が必発のAPC患者では総じてBNPが高い.著しい右房拡大のない症例でも50 pg/mL前後の上昇がみられ,拡大が著しいと200 pg/mLを超えることもある217).一方,TCPCにおいては一般にBNPは低値で,通常は基準範囲内である.

APC患者を中心とした研究では,BNPは心房の拡大を反映するとともに,NEと組み合わせることで予後予測が可能である217).TCPC患者を中心とした研究では,BNP

表11 成人先天性心疾患診療で用いられる主なバイオマーカー

ナトリウム利尿ペプチド脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド(BNP) N末端プロ脳性(B型)ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)レニン・アンジオテンシン系,カテコラミンレニンアンジオテンシン Iアンジオテンシン IIノルエピネフリンサイトカインインターロイキン6(IL-6)可溶性腫瘍壊死因子α(sTNF-α)心筋障害マーカー高感度トロポニンT(hs-TnT)トロポニン Iその他エンドセリン1(ET-1)肝細胞増殖因子(HGF)アンジオポイエチン2(Ang-2)増殖分化因子15(GDF-15)ガレクチン3