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p.19 抽出テキスト

3.4.4 左心カテーテル検査

左室造影,大動脈造影,冠動脈造影は,多くの場合心エコー法,CT,MRIで代用可能と思われる.しかし,複雑CHDに伴う心室中隔欠損術後症例では,左室造影でなければ残存心室中隔欠損が明らかにならないこともあるため,左室造影が必要となることもある.

本邦のCHD術後症例の多くは未だ狭心症などの動脈硬化性疾患の好発年齢には至っていないため,後天的な冠動脈疾患の合併率は低いと考えられる.一方,冠動脈の起始・走行の異常は多いが,これらはCTで十分に評価ができる.そのためルーチン検査として冠動脈造影を行うことは推奨されない(推奨クラスIII).しかし,Jatene手術など冠動脈を操作する手術後の症例では,術後吻合部冠動脈狭窄が報告されており185),再手術前やカテーテル検査前に冠動脈造影が行われることはある.

3.4.5 心内膜心筋生検

急性心筋炎,心アミロイドーシス,心臓移植後の拒絶状態など,後天性疾患の要因合併が疑われなければ,CHD術後症例で心内膜心筋生検が必要となることはきわめて少ない.

3.4.6 カテーテル治療

カテーテル治療として経皮的心房中隔欠損閉鎖術,経皮的動脈管開存閉鎖術,経皮的肺動脈形成術,体肺側副動脈・静脈-静脈短絡に対する塞栓術などが行われている.また,Fallot四徴術後遠隔期の経皮的肺動脈弁置換術,経皮的心室中隔欠損閉鎖術など,本邦には未導入の治療も,今後は施行可能になると思われる.

また,術後症例で合併率の高い不整脈に対しては,電気生理学的検査またはカテーテルアブレーションが行われる.カテーテルアブレーションは3Dマッピングシステムなどの装置の進歩により,CHD術後症例でも良好な成績が得られるようになってきている186)が,併せて不整脈の誘因となる血行動態や遺残病変の評価を行うことも重要である.

3.5 バイオマーカー

CHD患者の心不全には多彩な病態が関与する.単心室系循環,体心室右室,肺高血圧,右室拡大や右室機能不全に伴う左室機能不全など,その特殊性は枚挙にいとまがない.治療を進めるうえで病態生理を明らかにすることは診断の第一歩であるが,同時に,患者の現状を把握したうえでの計画的な診療や適切な予後予測も,また重要な課題

テル検査の目的は,血行動態の評価とカテーテル治療が中心となる.どの時期に心臓カテーテル検査を行うかは確立されていないが,症状が出現してからの検査では肺高血圧症や心不全が進行している可能性もあるため,他の非侵襲的な検査の結果を基に遅滞なく行う必要がある.

3.4.2 アプローチ

小児では大腿動静脈からカテーテルを挿入することが多い180)が,成人では大腿動静脈以外に,左心カテーテル検査は橈骨動脈や上腕動脈,右心カテーテル検査は内頚静脈や肘正中静脈からも,カテーテルを挿入して行われる1).穿刺部位を決めるために重要な要素の一つは患者の年齢と体格であるが,CHD術後症例に行う場合は,カテーテルをどこから挿入できるかをよく検討する必要がある.例えば,近年では行われることが少なくなったoriginal Blalock-Taussigシャント手術の術後の場合,シャント手術を施行した側の上肢動脈からのアプローチでは左心カテーテル検査を施行できない.また,幼少時に心臓カテーテル検査を複数回施行している症例では,大腿動静脈が閉塞していることもある.通常の診察に加えて過去の手術記録や心臓カテーテル検査報告書の確認が必要である.

3.4.3 右心カテーテル検査

右心カテーテル検査は血行動態の評価に必須である.特に肺高血圧症(PH)はCHD術後症例で合併率が高く181),その評価のためには心臓カテーテル検査が必要となる182).ただし,CHD術後のPHの病態は,術前の状態はもちろん,術後の遺残症・続発症・合併症が複雑に関わっているため,結果の解釈には細心の注意が必要である.

また,過去に高度のPHのため外科的治療が不可能と考えられていた症例であっても,近年の肺血管拡張薬の進歩により外科的な治療が可能になる症例が存在することが明らかになってきた.treat and repairと呼ばれる治療であるが,薬物療法導入前後で右心カテーテル検査により肺動脈圧,肺血管抵抗,肺体血流比(Qp/Qs)などを測定する必要がある.treat and repairは心房中隔欠損に合併するPHから始まった治療戦略である183)が,最近では心室中隔欠損に合併するPHに対するtreat and repairの報告もみられる184).

なお,心臓カテーテル検査でQp/Qsを求めるためには静脈血のサンプリングが必要であるが,鎮静による患者の呼吸状態の影響を受けたり,サンプリングエラーが存在したりするため,計算値は絶対的なものではなく,病態と矛盾しないかの検証が不可欠である.