p.17 抽出テキスト
されている.ASD閉鎖デバイス植込み手技の周術期ガイドとして用いられる場合には,術前に欠損孔の位置・数・rim(周縁)の評価,合併病変についての評価が行われ,術中ではカテーテルガイドとデバイスの位置評価,デバイス固定の確認,残存短絡有無の評価に用いられる169). TEEは一般的には鎮静または全身麻酔下に行われることが多く,カテーテル治療時は気道管理下に全身麻酔が必要となる170).代替法として心腔内エコー法が用いられることがある.TEEはその良好な空間分解能から広くACHD症例に適用されるが,血管輪など大動脈弓の形成異常を伴う症例では禁忌と考えられるため,適応には注意を要する171, 172). 3.2.7 成人先天性心疾患に特有の状況 心エコー図の質は検者の技量に依存するため,ACHDの心エコー検査では解剖,手術術式,血行動態の理解が必要となる.さらに,心室容積や機能の評価は心構造自体の複雑さによって困難となることがある.特に右室や単心室の評価の場合がこれに該当する.ドプラ法による圧較差の推定にも注意が必要で,右室流出路狭窄や大動脈縮窄,連続する狭窄病変などでは評価に誤差を生じるため,カテーテルによる圧較差測定が必要となる.また心外病変である静脈還流異常や大血管の描出は困難な症例が多いため,CTやMRIの併用がなされる. 3.3 CT,MRI 術後遠隔期に繰り返し施行できる非侵襲的な画像診断法は重要である.成人例において心エコー法では描出が不十分なことが多いため,再現性の高い心血管CTと心臓MRIを用いた診断が有用である. 3.3.1 心血管CT CTは高い空間分解能(~0.5 mm)を有し,1~数心拍において心周期の一部分を利用した短い収集時間で広い範囲を撮影できる.また呼吸の影響を受けにくく,短時間で撮影が可能である.近年は検査機器の進歩により被ばく線量が大幅に減少しているが173),被ばく線量は撮影範囲,年齢,体格,撮影設定により異なるため,各施設における体系的な取り組みが重要である.若年症例が多く,不要な被ばくを避ける必要があるため,使用可能な施設では低管電圧撮影と逐次近似画像再構成の併用が推奨されている173).造影CTにおいて造影剤腎症のリスクを考慮すべき閾値はeGFR(推算糸球体濾過量)<30 mL/min/1.73m 2であり(日本医学放射線学会ほかによるガイドラインで推奨グレー の推定には三尖弁逆流速度,心室中隔欠損を介した短絡血流速度,右室流出路血流速度などを用いる. 3.2.3 組織ドプラ法 ACHDで組織ドプラ法は主として右室機能評価に用いられる.カラードプラ法またはパルスドプラ法を用いる方法があるが,通常は三尖弁輪の長軸方向移動速度(S ́)をパルスドプラ法で測定することが多い.Fallot四徴術後症例が13%含まれた223症例の検討では,S ́<11 cm/sが心臓MRIで計測した右室駆出率<50%を最もよく予測した167). 3.2.4 スペックルトラッキング法 近年,スペックルトラッキング法を用いたストレイン/ストレインレートは心筋収縮様式の評価において臨床的に有用として注目されている.本法によるストレイン計測値については,計測機種ごとの測定値標準化が必要とされているものの168),心筋組織性状や微細収縮様式の評価が可能と考えられており,今後ACHD領域においてさまざまなデータ集積が期待される. 3.2.5 3Dエコー法 複雑な心形態のCHDでは,正常心構造で用いる心室容積推測式を適用することが困難である.3Dエコー法はCHDにおける心室容積や駆出率の評価に有用である164, 165). 3.2.6 経食道心エコー法 表10 先天性心疾患に対する経食道心エコー法の推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 心房中隔欠損症に対する経皮的デバイス閉鎖術における術前評価,術中ガイドとして行う169, 170). I B心房中隔欠損症に合併した肺静脈還流異常のスクリーニングとして行う171). I B成人先天性心疾患患者における解剖,血行動態の初期評価または経過観察目的に行う. I C 経食道心エコー法(transesophageal echocardiography: TEE)は評価範囲に限りがあるものの,経胸壁心エコー法(transthoracic echocardiography: TTE)に比して良好な空間分解能を有する.TEEによる3D評価は心構造異常の解剖理解に有用で,特に心房中隔欠損(ASD),僧帽弁閉鎖不全の評価に有用である.近年は三尖弁閉鎖不全にも応用