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p.14 抽出テキスト

新生児・乳児期の一期的修復の安全性が増すとともに,単心室など複雑心疾患では段階的修復のアプローチも体系化されてきた.

2.2.1 二心室修復

Fallot四徴の修復については,特に本邦において1980年代から,肺動脈弁逆流を最小限に留める工夫が積み重ねられてきた65–69).

左室を体心室とする解剖学的修復も積極的に導入された.完全大血管転位では,心房内血流転換から冠動脈移植を伴う動脈スイッチ手術へ移行した70–82).修正大血管転位では,体心室右室型の古典的二心室修復のみならず,解剖学的修復(いわゆるダブルスイッチ手術を含む)を検討することも多い83–102).

小児期,若年成人期に抗凝固療法を回避できる弁形成術は,房室弁だけでなく大動脈弁にも適応拡大が続けられている.Ebstein病はコーン手術により多くの例で形成術が可能となった103–105).小児期や挙児希望女性にあっては,大動脈弁疾患に対しRoss手術,Ross-Konno手術も主要な選択肢である33, 106–116).

特殊な二心室修復(心室中隔形成ventricular septation)などは症例ごとの詳細な検討が必要である.

2.2.2 心室‒肺動脈間心外導管手術

三尖付きPTFE心外導管は国内多施設で使用され,良好な中・長期成績が報告されている.海外ではホモグラフトを用いた右室流出路再建後のグラフト感染の報告が一定数あり,必ずしも人工血管使用例に勝るわけではない.経カテーテル肺動脈弁置換を積極的に行う背景からも,弁付き人工血管の選択は少なくない.

発育への追随を目指して人工素材を用いない右室流出路再建方法が,本邦では特に評価された経緯から56, 65, 66, 117),有茎自己心膜フラップ使用や肺動脈–右室直接縫着(Barbero-Marcial法やLecompte法など)の術後例に遭遇する118).今後,肺動脈弁置換を計画する際には,各術式の特徴と3次元的位置関係を慎重に検討する必要がある.

2.2.3 機能的単心室に対するFontan手術

本法は右房肺動脈吻合から心房内側方トンネル型(lateral tunnel)・心外導管型の上下大静脈肺動脈吻合へと変遷した119–122).Fontan循環は特異的・非生理的な循環であり,肝腎機能,蛋白漏出性胃腸症の他,fenestration(有窓化)の影響や不整脈など,経過観察項目が多岐にわたる12, 123–127).房室弁・大動脈弁逆流,大静脈・肺動脈血流路の血栓や狭窄など,外科的治療の対象となる要因も少な

い45–51).肺動脈弁位には三尖付きPTFE心外導管やホモグラフトも用いられる52–56). b. 左心系

左心系での人工弁置換の適応を表8に示す.

2.1.3 人工血管

人工血管は大動脈などに用いる大口径人工血管と,体肺動脈短絡などに用いる小口径人工血管とに大別される.大口径ではポリエステル,PTFEや高分子化合物を用いている.小口径のものは現在ではPTFE人工血管が主流である.1990年以前の体肺動脈短絡手術では,ポリエステル編みの血管も用いられていた.同じPTFE人工血管でも変遷があり,壁の厚みや伸展性が改良されてきた.現在の太さ表示は内径値となっている57–59).

ウシ頚静脈導管(静脈弁付き)も製品化された.遠隔期の問題点として,易感染性や非発育性,仮性内膜形成・血栓による狭小化・閉塞といった一般的な問題のほか,吻合部仮性瘤の形成がある60–64).

組織工学技術やiPS細胞を用いた理想的人工血管は現在も研究・開発段階である.

2.2 術式の進歩

術式,手術期管理や機材などの進歩により,複雑な長時間の修復,より根治性の高い術式の選択が可能となった.

表8先天性心疾患における左心系での人工弁置換術の適応

•  先天性大動脈弁・僧帽弁疾患大動脈弁輪狭小例ではRoss手術や弁輪拡大術式(Konno手術,Manouguian手術,Nicks法,Ross-Konno手術など)を考慮する. •  房室中隔欠損の左側房室弁逆流•  修正大血管転位や心房内血流転換術後の完全大血管転位での(体循環側)三尖弁逆流•  単心室での共通房室弁逆流や三尖弁逆流など

表7先天性心疾患における右心系での人工弁置換術の適応

肺動脈弁置換•  肺動脈弁逆流:Fallot四徴修復術後,など•  心外導管機能不全(狭窄,弁逆流):Fallot四徴+肺動脈弁閉鎖(Fallot極型),総動脈幹,完全大血管転位(III型)に対するRastelli手術後,など•  Ross手術後の肺動脈再建,など三尖弁置換•  高度三尖弁逆流(Ebstein病や三尖弁異形成など) •  経右房・経三尖弁的に心室内手技を行った複合疾患,など右心系弁置換•  右心系・感染性心内膜炎,など