GL検索 v0.1.0
画像は 103 ページを描画したものです
page 103

p.103 抽出テキスト

心不全症状あるいは溶血をきたす重症人工弁逆流に対して外科的再弁置換術を行う. I C A III [2020年改訂版 弁膜症治療のガイドラインからの変更点]表49 の第1~3項より.Mindsの推奨グレードとエビデンス分類を追加. (日本循環器学会ほか. 2020 666)より改変)

左心系機械弁における血栓弁は予後が不良であるため,血栓弁による症状が出現した場合は緊急の初期対応が求められる.低用量血栓溶解療法または緊急手術が選択される(推奨クラスI,エビデンスレベルC).緊急手術の30日死亡率は全体で10~15%と高値であるが,NYHA心機能分類I/II度の患者に限れば5%未満と良好であった1095, 1096). 2012年までの閉塞性の左心系機械弁の血栓弁に対する血栓溶解療法後の30日死亡率は8%で,血行動態的成功は70%,塞栓症・出血合併症は14%と高値であった1097).しかし,近年エコーガイド下での緩徐静注プロトコルを使用した低用量血栓溶解療法に関する研究が発表され,死亡率は2%未満で成功率は90%以上,塞栓症・出血合併症ともに2%未満と報告された1097).手術と血栓溶解療法とのいずれにするべきかは,患者や施設ごとに判断されるべきである.

心不全症状のある重症人工弁狭窄・逆流に対して,外科的再弁置換術を行う(推奨クラスI,エビデンスレベルC).重度の溶血をきたす人工弁逆流(多くは弁周囲逆流)に対して,外科的再弁置換術を行う(推奨クラスI,エビデンスレベルC).無症状の重症人工弁狭窄・逆流に対しては,自己弁の際の適応を参考にしながら,再手術であるというリスクも考慮に入れ,適応をハートチームで慎重に決定する.

小児患者の発育による人工弁の相対的狭窄に対する再手術時期については,まだ確立された適応基準はない.基本的に人工弁機能不全に準じるが,患者の年齢や再手術のリスク,その後の再々手術の可能性などを考慮に入れながら,ハートチームで症例ごとに決定する.

16.4.3 大動脈弁下狭窄再発

大動脈弁下狭窄は解除後の再発率が約20%であり,再手術回避率は15年で85%とされる.このため,狭窄解除術後も心エコー検査などにより定期的なフォローを行い,圧較差の増強または症状の出現がみられたら再手術を検討する(推奨クラスIIa,エビデンスレベルC).

16.4.4 右室流出路狭窄

Ross手術の際に同時に施行された,異種・同種心膜などを用いた右室流出路再建後の右室流出路狭窄において

は,他の疾患と同様に,安静時の右室流出路の総圧較差50 mmHg以上,労作時呼吸困難,胸痛,失神前駆症状または失神などの症状がある場合は,カテーテル治療または再手術を検討する(推奨クラスIIa,エビデンスレベルC).

16.4.5 自己弁,人工弁の感染性心内膜炎

活動期感染性心内膜炎の手術適応は,1内科的にコントロールできない心不全,2繰り返す塞栓症,3制御困難な感染,である.非手術例における高い致死率を考慮すると積極的な加療を検討すべきである.詳細は「感染性心内膜炎の予防と治療に関するガイドライン(2017年改訂版)」494)を参照されたい.

17 僧帽弁狭窄,僧帽弁閉鎖不全

先天性僧帽弁疾患はCHDのなかでも発症率が低く, CHD剖検例の0.6~1.2%,臨床例の0.2~0.4%である1098).房室中隔欠損やFallot四徴など,他のCHDに合併することがある.

僧帽弁狭窄(MS)の病因として弁の異形成や低形成を認める.異形成としては,弁の肥厚,腱索間の狭窄,乳頭筋の変形や乳頭筋の弁への直接挿入などがある.低形成では,弁全体の低形成以外に,弁上部狭窄とパラシュート型僧帽弁に分類することができる.また,大動脈弁狭窄や大動脈縮窄を合併する場合は「Shone症候群」という.

僧帽弁閉鎖不全(MR)の病因としてMarfan症候群, Ehlers-Danlos症候群,Loeys-Dietz症候群などに生じる僧帽弁逸脱,僧帽弁裂隙(cleft),乳頭筋の癒合やパラシュート僧帽弁,腱索や乳頭筋の低形成,重複僧帽弁口や僧帽弁の付着異常(Ebstein病様)などがある.

17.1 術式と術後遠隔期の管理

17.1.1 僧帽弁形成術,経皮的バルーン僧帽弁形成術

先天性MSに対する術式は,弁上部狭窄に対しては弁上狭窄輪切除,弁性狭窄に対しては交連部切開や弁輪形成術,乳頭筋分離,腱索修復などがある.心疾患の合併がなければ形成術の予後は比較的良好である1099, 1100).MRに対する形成術は,裂隙の修復,弁輪形成,心膜による弁形成,人工腱索などがある.

人工弁を小児に使用することは可能なかぎり避けたいた