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16 大動脈弁狭窄,左室流出路狭窄, 大動脈弁閉鎖不全

大動脈弁狭窄(AS)はCHDの約3~10%に生じ,弁性狭窄,弁下狭窄(左室流出路狭窄),弁上狭窄に分けられる.これらのうちの60~75%を占める弁性狭窄1091)では,二尖弁が多い.弁下狭窄は線維性または筋性組織の突出による.血行動態としては,左心室に対する圧負荷による左室肥大,低心拍出をきたし,心不全を生じうる.新生児期から成人期に至る長い期間の間で外科治療またはカテーテル治療の対象となる.

大動脈弁閉鎖不全(AR)は弁異常によるものと大動脈基部拡大によるものとに分けられ,前者は二尖弁が多いが,四尖弁やまれに一尖弁もある.後者はMarfan症候群やEhlers-Danlos症候群,CHDに伴うaortopathyなどの結合織病がある.血行動態としては左室に対する容量負荷と圧負荷による左室拡大・肥大をきたし,心機能低下,心不全に至る.

16.1 術式と術後遠隔期の管理

16.1.1 直視下大動脈弁交連切開術,経皮的バルーン 大動脈弁形成術

重症AS(弁性狭窄)に対して行う.人工心肺を使用して心停止下で直視下に癒合した交連部を切開する方法と,経皮的にバルーンを大動脈弁に通し,バルーンを拡張して大動脈弁を裂開する方法とがある.後者は人工心肺を使用する必要がなく,低侵襲である.切開が不十分であればASが残存し,過剰であればARを生じる.特にバルーン切開では弁の裂開により急性ARを起こすことがある.

術後遠隔期に残存狭窄の悪化や再狭窄,大動脈弁逆流の増悪をきたすため,定期的な心エコー検査によるフォローアップが必要である.

16.1.2 大動脈弁置換術

重症AS(弁性狭窄)や重症ARに対して行う.小児期に人工物を使用することは可能なかぎり避けたく,弁性狭窄ではできるかぎりバルーン形成術や交連切開術で治療するが,どうしてもこれらで効果がない,または大動脈弁逆流をコントロールできず心不全をきたす重症例では,大動脈弁置換術または次に述べるRoss手術の適応となる.人工弁置換術とRoss手術のどちらを行うかは,大動脈弁輪径,自己肺動脈弁の状態や心機能などを考慮して決定する.小

児では生体弁の劣化を考慮して機械弁を用いることもある.

術後遠隔期においては,1成長による相対的人工弁狭窄(小児例),2弁機能不全(血栓弁やパンヌス形成など), 3その他,抗凝固療法による合併症や感染性心内膜炎に注意して管理する.特に生体反応の強い小児例においては,成人例に比べパンヌス形成が特徴的であり,その形成速度は速い.

機械弁では一生涯の抗凝固療法を必要とし,出血や血栓塞栓症のリスクが生体弁よりも高い1092, 1093).一方,生体弁は術後慢性期には抗凝固療法を必要としないが,機械弁に比べて石灰硬化や弁破壊などの構造劣化に伴う狭窄病変と逆流性の病変が経年的に進行し,小児では構造劣化の進行が速い.機械弁置換術後の症例では凝固能の定期的なチェック,心エコー検査による人工弁機能や心機能のフォローが必須である(推奨クラスI,エビデンスレベルC).さらに術前に心機能低下がみられた場合は長期にわたり心機能のフォローアップが推奨される(推奨クラスI,エビデンスレベルC).

16.1.3 Ross手術(肺動脈弁自家移植術)

自己肺動脈弁を大動脈弁位に縫着し,右室流出路をホモグラフトや弁付き人工血管などで再建する.

術後遠隔期のAR,右室流出路狭窄,肺動脈から右室への逆流などが問題となるため,心エコー検査による定期的なフォローアップが必要である.

16.1.4 Konno手術

大動脈狭小弁輪と大動脈弁下狭窄に対して行われる,弁輪拡大を伴う大動脈弁置換術である.心室中隔の切開部から大動脈弁輪,上行大動脈に至るパッチを縫着した後,大動脈弁輪部に人工弁を逢着する.

術後遠隔期においては,人工弁置換術と同様のフォローアップに加え,術後に心室中隔レベルでのリークがあった場合はその点に関してもフォローアップを行う.人工弁の使用を避けるためにRoss-Konno手術を行うこともある.

16.1.5 大動脈弁下組織切除術

大動脈弁下狭窄に対して弁下組織を切除する.筋性狭窄では心室中隔の心筋を一部切除する.

術後の弁下狭窄の残存や再発,大動脈弁逆流の出現・増悪がみられることがあるため,心エコー検査による定期的なフォローアップが必要である.中隔心筋を切除した場合は術後に房室ブロックが出現することがある.