p.31 抽出テキスト
70 mg/dLの両者を満たすことを推奨する.本邦ではアトルバスタチン20 mgとロスバスタチン20 mgが最大投与量として使用可能であるため,これら薬剤の最大投与量が推奨される.LDL-C値≧70 mg/dLであれば患者のリスクの特徴に基づきエゼチミブやPCSK9阻害薬の併用が検討されるべきある.高強度スタチンにエゼチミブまたはPCSK9阻害薬のいずれを追加するかの選択は,コストや患者の希望について,患者と議論されるべきである182-184).筋症状のみでスタチンの中断が必要なときには,医師は一律なスタチンの恒久的中止ではなく,同薬剤の減量投与やクラススィッチを考えるべきである182).近年,本邦で行われたREAL-CAD研究の結果をふまえると,高用量のピタバスタチン(4 mg)は代替薬となりうる可能性がある185). 安定狭心症の診断的検査終了後のOMTの調整について・ これらのOMTは患者の診断およびリスクにより処方 の利益と不利益が変わるため,診断・リスク評価が終了した後に,臨床医は必ずOMTの処方を見直す必要がある.・ 特に,最近実施された一次予防目的のアスピリンの臨 床試験では,アスピリンは心血管イベントを低減することはなく,むしろ上部消化管および頭蓋内出血の発生を増加した186, 187).このため,アスピリンの投薬は二次予防に限定すべきである.・ LDL-Cの目標値は患者のリスク(Very high risk, high riskなど)により変化するため188),これらの評価は必須である.・ 非侵襲的ないし侵襲的な冠動脈の画像評価において中 程度の狭窄(50~75%)を認めたが,血行動態的に(FFR,NHPRsなどで)非有意狭窄であるときや,機能評価で虚血をもたらさないときには臨床医は患者とOMTの利益・有害事象について話し合い,共同意思決定(shared decision making: SDM)を行うべきである.このような患者は心血管イベントが多いことが分かっている一方で,OMTの利益が証明されていないためである. 1.3 新規治療 1.3.1 血圧 SPRINT試験の最終報告において,目標収縮期血圧< 120 mmHgの管理は,目標収縮期血圧<140 mmHgの管理と比較して主要有害心血管イベントと全死亡率が低減す ることが示されたことから189),より厳格な血圧コントロールが安定CADにおいて有用な可能性がある.安定CADに対して,米国のガイドラインは140/90 mmHgを超える患者には降圧薬開始を推奨しているものの,血圧目標を設定していない168).一方で,ESCガイドラインは収縮期血圧120~130 mmHg(65歳以上は130~140 mmHg未満)を目標としている15).本ガイドラインでは,若年の患者では血圧130/80 mmHg未満,高齢の患者では140/90 mmHg以下を目標にすることを推奨する.高齢者における厳格な血圧コントロールを実施する際は,起立性高血圧など不利益なイベントを厳格にモニタリングするとともに,患者と議論をして治療目標を個別化する必要がある. 1.3.2 血糖 近年,新規血糖降下薬が導入されている.SGLT2阻害剤とGLP-1受容体拮抗薬は,大血管病を伴う糖尿病患者においてMACCEの発生を15%近く,全死亡率を10~ 20%低減し,低血糖のリスクは最小限に留めていた190-192). ESC/欧州糖尿病学会(ESAD)や米国糖尿病学会(ADA)のガイドラインは,SGLT2阻害薬とGLP-1受容体拮抗薬について,ともに包括的な心血管リスク低下のための薬剤の一部として推奨している193, 194).2型糖尿病を伴う安定CADの患者には,これらの新規薬剤の投与を考慮してもよい. 1.3.3 脂質・炎症 高トリグリセライド血症と炎症に対する薬理的介入は,安定CADの患者においてイベントを低減する効果が示されている.しかしながら,標準治療としてのルーチンの使用に関してはさらなるエビデンスが必要である. 高トリグリセライド血症は安定型狭心症の危険因子であり,その治療は予後を改善すると期待されていた. REDUCE-IT試験では,高トリグリセライド血症を呈する安定CAD患者において,標準治療への高度純正EPA(ω -3系脂肪酸)の追加がMACCEの発生を低減した195).一方で,STRENGTH試験では,標準的OMTにω-3系脂肪酸を追加してもMACCEの低下は得られなかった196).ω -3系脂肪酸の組成の差異が,このようなアウトカムの不一致に寄与した可能性が想定されている197). 抗炎症薬は新規の二次予防薬として期待されている.βチューブリンの重合阻害による抗炎症薬であるコルヒチンは,心筋梗塞後の患者のMACCEを低減することが知られている198).2020年に発表されたLoDoCo2試験は,高リスクの安定CADの患者(ACS既往>80%)に対する標準的