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p.30 抽出テキスト

1 薬理学的介入

薬理学的介入の目的は1)胸痛をはじめとする症状の緩和,および2)心血管イベント予防の両者であり,別個に評価する必要がある.

1.1 症状緩和(抗狭心症薬)

抗狭心症薬は安定CAD患者のQOLを効果的に改善することが可能である151).β 遮断薬またはカルシウム拮抗薬は抗狭心症薬の第一選択薬として推奨され,これらの薬剤の併用は,狭心症症状が十分コントロールできない場合に検討されるべきである.2019年のESCガイドラインでは,患者のバイタルサインと心不全または左室機能不全があるか否かに基づいて,長期の抗狭心症薬治療のための段階的戦略を提案している15).

長時間作用型硝酸薬とニコランジルは,β 遮断薬やカルシウム拮抗薬と比較してデータが乏しいため,第二選択薬として考えられるべきである.これらの薬剤は,初期治療としてのβ 遮断薬やカルシウム拮抗薬(あるいはこれらの併用)が禁忌,忍容性が低い,あるいは狭心症症状のコントロールが不十分である場合に適用される15).国際的な診療ガイドラインではトリメタジジン,イバブラジン,およびラノラジンを第二選択薬として考慮することが推奨されているが15),これらは本邦では抗狭心症薬としては認可されていない.

本邦では,抗狭心症薬としてカルシウム拮抗薬のほうがβ 遮断薬より広く使用されていることが特徴としてあげられる.日本人の安定CADのおよそ40%に冠攣縮性狭心症が関連していることが知られており175),この病態に対してカルシウム拮抗薬の冠拡張作用が期待されているため,その使用率が高くなっていると考えられている176, 177).しかし,β 遮断薬はMI既往やLVEF低下のある患者において主要脳心血管イベント(MACCE)の発生を低減させることが示されているのに対し179),カルシウム拮抗薬ではこのような患者にとって有益な効果は示されていない178).安定CAD患者に対して抗狭心薬を処方する際は,冠攣縮性狭心症の可能性や,患者の既往歴,リスクプロファイルも勘案したうえで選択すべきである. 1.2 心血管イベント予防

心血管イベント予防のための薬剤には抗血栓薬,脂質低下薬,降圧薬,および血糖降下薬がある.本フォーカスアップデートでは,抗血栓薬および,厳格な目標を目指した脂質低下療法の重要性を強調する.

1.2.1 抗血栓薬

抗血栓薬は血小板活性・凝集および凝固を阻害することで安定CAD患者の予後を改善する.洞調律を伴うすべての安定CADの患者に対して,低用量(75~100 mg/日)アスピリンの投与が強く推奨され,アスピリン不耐の患者には,クロピドグレル75 mg/日が推奨される.安定CADにおける抗血栓薬については2020年JCSガイドライン フォーカスアップデート版冠動脈疾患患者における抗血栓療法に詳細に記載されている172).

1.2.2 脂質低下薬

安定CADの患者に対する高用量スタチンを用いた脂質低下療法はOMTの根幹である.17万人,26のRCTを対象としたメタ解析では,ベースラインのLDL-Cの絶対値にかかわらず強化脂質低下療法を施行することのベネフィットが示された180).特に,ある大規模なRCTでは,高強度スタチンを用いてLDL-C<70 mg/dLに低下させることにより,安定CADの予後が改善することが報告されている181).2018年AHA/ACCの血中コレステロールの管理に関するガイドラインは,LDL-C≧50%低下を目指して最大耐用量のスタチン(アトルバスタチン40~80 mg/日またはロスバスタチン20~40 mg/日: 高強度スタチン)を投与することを推奨している182).さらに,超高リスクの患者(複数回の粥状硬化性心血管疾患[ASCVD]イベント既往,もしくは1回の重症ASCVDイベント既往と複数の高リスク因子[高齢,ヘテロ型家族性高コレステロール血症,および糖尿病])では,高強度スタチン投与後でも持続的にLDL-C≧70 mg/dL であれば,エゼチミブまたはPCSK9阻害薬の補完的投与を強く考慮することを推奨している182).このLDL-Cの低下目標は,ISCHEMIA試験のプロトコルにおいても,中等度・重度の虚血を伴った安定CAD患者に対しても推奨されている1).

このような流れから,本フォーカスアップデートは,安定CADで心血管イベントリスクの超高リスク患者,あるいは中等度・重度の虚血を伴った患者には,高用量スタチンを用いてLDL-C値の低下≧50%かつ目標LDL-C値<