p.27 抽出テキスト
LMCA病変と多枝病変に関する近年の知見・ LMCA病変に対するCABGと薬物治療の効果を直接 比較するRCTは存在するが,いずれも30~40年前の小規模な研究である153-155).その後のレジストリー研究やメタ解析は一貫して,高リスク冠動脈病変を伴う患者における冠血行再建による予後改善を示している156-158).・ 多枝閉塞患者の唯一開存した病変に対するPCIについ ては,英国のデータベース研究では,PCI施行後の短期および長期の死亡率は極めて高く,予後不良であると報告されている159).CABGによる完全血行再建はこのような冠動脈の解剖学的状態に対する予後を改善する可能性があるが,臨床的エビデンスの蓄積がまたれている. 2.2.3 Ad hoc PCI Ad hoc PCI (診断的冠動脈造影と同じセッションで行うPCI)の役割に関してはいまだ議論が残る.Ad hoc PCIは,海外では一般的に施行されているが(米国と韓国ではPCIの75%以上) 160, 161),日本ではそれほど一般的ではない(≦ 30%) 162).Ad hoc PCIの施行には大きな病院間格差があることも知られており,ad hoc PCIは年間PCIの件数が少ない施設でより頻繁に施行されている162). Ad hoc PCIは血管合併症や出血リスクを低減し,入院期間を短縮し,診断のみを目的とする侵襲的冠動脈造影を行わないため患者負担を軽減することから,合理的な選択肢となる可能性がある.適切ではないPCI適応を回避しつつAd hoc PCIを行うためには以下の条件が必要である. 1 血行再建のベネフィットと,抗血栓療法に関連する周 術期および治療後の出血リスクを含めた全体のリスクをAd hoc PCI前に評価する.解剖学的リスクと病変の複雑さをCCTA(またはFFR-CT)で慎重に評価する. 2 PCIに関する上記のリスクとベネフィットを患者(もし くはケアキーパー)と共有し,医師はad hoc PCI前に共同意思決定(shared decision making: SDM)を行う. 3 Ad Hoc PCIは日本循環器学会の安定冠動脈疾患の血 行再建ガイドライン(2018 年改訂版) 5a)で推奨クラスIまたはIIaとされる病態に行うことを推奨する.それ以外のケースではハートチームカンファレンスで適切な血行再建法を議論する必要がある. Ad hoc PCIに関する近年の知見・ Ad hoc PCIは血管合併症や出血リスクを低減し,医 療コストを下げ,患者の満足度を上げる可能性がある160, 163-165). ・ 多枝病変や慢性完全閉塞病変へのAd hoc PCIは不良 なアウトカムと関連することが報告されている160).・ 一方で,血行再建適応がほとんどないケースに対する PCI,もしくはCABGが適するケースにおけるPCIの占める割合を増大させる可能性がある162, 166). 以上のエビデンスをふまえた冠血行再建の適応の推奨とエビデンスレベルに関するアップデートを表10と図5に示す. 表10 安定CAD における血行再建適応に関する推奨とエ ビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル LMCA 病変を有する患者において,心血管リスクの低減目的で血行再建を行う 155-158). I B広範な心筋虚血をもたらす冠動脈病変に対し,共同意思決定(SDM)に基づく血行再建を行う3, 95, 140, 143, 145, 167). I B有意な冠動脈病変があり,OMT でも生活が制限される狭心症症状を有する場合,共同意思決定(SDM)に基づく血行再建を行う44, 95, 149, 151). I A心不全や左室機能障害,進行した腎臓病,あるいはフレイルを伴う患者において,症例ごとにリスクとベネフィットを考慮する. IIa C血行再建法の詳細に関しては,安定冠動脈疾患の血行再建ガイドライン(2018年改訂版)5a) を参照. CAD, coronary artery disease; LMCA, left main coronary artery; OMT, optimized medical therapy; SDM, shared decision making