p.24 抽出テキスト
1.2 侵襲的冠動脈内圧測定 FFRなどの侵襲的冠動脈内圧測定は,冠動脈狭窄によって惹起される冠動脈血流低下の程度を生理的に評価する診断的検査である.侵襲的冠動脈造影における中等度の冠動脈狭窄病変が心筋虚血と関連しているか否かを評価するために用いられ,冠血行再建の標的病変の同定に役立つ15, 91).侵襲的冠動脈内圧測定は,患者が非侵襲的検査を受けられない場合や,非侵襲的検査で評価された虚血と侵襲的冠動脈造影によって判定された有意な冠動脈病変が一致しない場合にも検討されうる.重度の冠動脈蛇行や石灰化病変を伴う患者においては,ガイドワイヤの挿入が技術的に困難であることが予想され,侵襲的冠動脈内圧測定のリスクとベネフィットの双方を注意深く検討すべきである92). 1.2.1 FFR FAME 2試験は冠血行再建を行うか先送りする(defer)かの判断にFFR≦0.8の閾値を用いており,比較的症例数は少なかったものの,このFFRガイド下で施行するPCIが遠隔期のMIと緊急血行再建の発生を低減させたことを報告し,FFRガイド下PCIの妥当性を証明した93).ISCHEMIA試験では,侵襲的冠動脈造影所見と非侵襲的検査の所見が一致しない症例においてFFRが施行され,結果的にPCIが選択された患者のおよそ20%で施行された5).本邦の前向きレジストリー研究CVIT-DEFER Registryは,FFR>0.8の病変に対して施行された血行再建が,血行再建先送り戦略と比較して,1年間の死亡,脳卒中,MI,および血行再建を含むイベント発生率の低減と関連しないことを示した94).一方で,FFR≦0.8で血行再建が先送りされた病変では,標的血管関連のMIと血行再建の発生がより多かった. FFRに関する近年の知見・ この10年間でFFRは広く使われるようになっており, FAME 2試験などの長期の臨床試験の知見からもFFR測定のベネフィットが示されている95-97).また,FFRの有益性はいくつものクリニカルシナリオ(MI既往,多枝冠動脈病変,ACSの非責任病変,LMCA病変,およびCABG術前評価など)で示されている98-104).・ FFR値は単に閾値で分類された二値変数として取り扱 われるだけではなく,連続値としても取り扱われるべきである.特に,FFR<0.65を呈する重度の病変への血行再建は,心臓死やMIなどの心血管イベントの発 生を低減させることが示唆されている105, 106).・ FFR値>0.80の冠動脈病変は一般に血行再建の対象に はならないが107),やや低めのFFR値(<0.85 や<0.90など)があれば心血管イベントの発生リスクは高いと報告されている105, 106, 108, 109).・ 本邦で行われたCVIT-DEFER Registryにおいては, FFR測定は39%の患者の治療戦略を変更し,PCI施行は22%減少,薬剤治療を選択する症例は41%で増加した94).特に侵襲的冠動脈造影で多枝冠動脈病変が認められた患者では,冠動脈内圧測定ガイダンスに伴って臨床的アウトカムが改善される可能性が報告されたことは特記すべきである110, 111).・ FAME2試験は冠血行再建を行うか見送るか決定する ための閾値0.80を用いてFFRガイド下PCIの有益性を検証した93).症例数は少なかったものの,FAME2試験ではPCIが行われた群で遠隔期にMI発生と緊急血行再建が低減したことが示された(ISCHEMIA試験の結果と同様) 3, 95).また,FFRガイド下PCIは,侵襲的冠動脈造影のみに基づいて行ったPCIより経済的にも有利であることも報告されている112, 113).・ 侵襲的冠動脈造影,血管内超音波(intravascular ultrasonography: IVUS),および光干渉断層撮影(optical coherence tomography: OCT)に基づきFFRを算出する技術も登場してきている.侵襲的冠動脈造影からのFFRを算出する技術(FFR angio)も保険償還されているが,日常臨床におけるこのような手法の意義と実用性に関してはさらなる研究が必要である114-117). 1.2.2 Non-Hyperemic pressure ratio 瞬時拡張期冠内圧比(instantaneous wave-free ratio: iFR),全周期安静時冠内圧比(resting full-cycle ratio: RFR),拡張期安静時冠内圧比(diastolic hyperemia-free ratio: DFR,diastolic pressure ratio: dPR)などのnonhyperemic pressure ratios (NHPRs)は,血管内圧の代替的な測定法として利用可能である.iFRを除いてこれらのエビデンスは不十分であるが,FFRと同等の診断能を有することが報告されている. iFRとその他のNHPRsの近年の知見・ iFRは大規模臨床試験でFFRと同等の有用性が報告 されている118, 119).iFR以外のNHPRs(RFR,DFRおよびdPRなど)も発展してきており,その値とiFR値