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p.23 抽出テキスト

高リスクの特徴(低い運動強度で発症する狭心症やACSに近い病態)を有する患者,OMTが開始され調整を受けているにも関わらず難治性の狭心症,あるいはCCTAや核医学検査などの非侵襲的画像検査で診断またはリスク評価ができなかった場合に考慮すべきである.非侵襲的画像検査と侵襲的冠動脈造影の結果に乖離がある場合は,侵襲的冠動脈造影施行時に冠動脈内圧測定によって血行再建の適応を決定することが可能である.

1.1 侵襲的冠動脈造影

本邦では年間およそ50万件の侵襲的冠動脈造影が行われている70a).侵襲的冠動脈造影は冠動脈の解剖学的構造を可視化することによって,CAD重症度に関する臨床情報を提供する.しかし,侵襲的冠動脈造影は少ないながらも出血性あるいは血栓性の合併症を惹起する可能性があるため,リスクとベネフィット双方の検討が必須である.過去の報告では,侵襲的診断手技に関連する死亡,MI,および脳卒中が0.1~0.2%程度に起こるとされている83).

侵襲的冠動脈造影に関する近年の知見・ 侵襲的冠動脈造影所見をもとに冠動脈病変の複雑性

を算出するSYNTAX scoreは国内外のガイドラインで広く使用されており,その算出方法は随時アップデートされている15, 85).・ functional SYNTAX scoreは冠血流予備量比(FFR値)

の有意な低下を示した冠動脈のみを計算に組み込んだ指標である86).近年では,患者情報を追加したSYNTAX score II,および長期予後予測を目的としたSYNTAX score II 2020も提唱されている87, 88).

予後予測に関しては具体的に,侵襲的冠動脈造影で同定される病変枝数が,不良なアウトカムと関連していると報告されている3, 84) .しかし,侵襲的冠動脈造影は冠動脈径や冠動脈プラーク性状に関する直接的な情報を提供しない.侵襲的冠動脈造影で示された冠動脈狭窄の程度は必ずしも生理学的な重症度を反映せず,FFR所見とのミスマッチも少なくないことが知られており,注意が必要である89).

侵襲的冠動脈造影の適応は,年齢,日常生活活動度,併存症の存在,そしてPCIやCABGなどの血行再建術に進むことに対する患者の積極的意思などを考慮して検討すべきである.非侵襲的画像検査で早期血行再建が不要と考えられる安定CAD患者には,早急な侵襲的冠動脈造影は適応にならない.安定CAD患者に対する侵襲的冠動脈造影は,非侵襲的画像検査を行っても決定的な診断に至ら

なかったか,または十分なリスク評価ができなかった場合に適応となりうる15).また,先述した高リスクの病態(OMT抵抗性の狭心症,ACSへの進展が予想される病態, LMCA/LMCA相当の病変,進行した腎臓病,あるいは心不全・左室機能不全)を有している患者に対しては,早期血行再建によりベネフィットが得られる可能性があるため,早期の侵襲的冠動脈造影が考慮されるべきである15).加えて,早期侵襲的冠動脈造影を心不全既往や左室機能不全がある患者において適応とすることも妥当である(第5章参照) 90).さらに,保存的治療を受けている患者のフォローアップ中にACSを示唆する不安定な症状が出現した場合,躊躇せず侵襲的手技が行われるべきである15). ISCHEMIA試験でも,最終的に保存的戦略に割り付けられた群のうち26%に侵襲的冠動脈造影,21%に血行再建が行われたことは認識する必要がある5).表8に安定CADの診断のための侵襲的冠動脈造影適応に関する推奨を示す.

表8安定CAD の診断のための侵襲的冠動脈造影適応に関

する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

OMT を開始し調整を受けているにも関わらずコントロール不良の狭心症症状を伴う患者に対し,侵襲的冠動脈造影を施行する3). I B臨床症状と非侵襲的検査の結果に基づき高リスクCAD(LMCA/LMCA 相当の病変など)が強く疑われる場合に,侵襲的冠動脈造影を施行する. I C非侵襲的画像検査を受けられない,もしくは非侵襲的画像検査の結果から結論が得られない患者に,侵襲的冠動脈造影の施行を考慮する. IIa C心不全とCAD を疑う所見があり,血行再建によるベネフィットが得られる可能性がある場合に,侵襲的冠動脈造影の施行を考慮する. IIa C併存症や侵襲的治療に進む積極的意思の欠如のため血行再建の対象ではない患者に対し,リスク評価目的のみの侵襲的冠動脈造影を行うべきではない15). III Harm B左室機能が保存されており,臨床的に低リスクの患者で,非侵襲的画像検査を受けていない,または心筋虚血を示唆する所見を示さない場合に侵襲的冠動脈造影を行うべきではない3, 15). III Harm B CAD, coronary artery disease; LMCA, left main coronary artery; OMT, optimized medical therapy