p.20 抽出テキスト
なお,このフローはLVEF低下を伴う患者には適用されない.誘発虚血の範囲の評価のみでは左室機能不全の患者のリスク層別化ができないことが知られている58). 冒頭に述べた通り,CAD疑い・確定患者で中等度以上のPTPがあれば,非侵襲的画像検査の実施が勧められる.侵襲的冠動脈造影は非侵襲的画像検査によりLMCA/ LMCA相当病変(機能的イメージングで広範な虚血領域が証明され,かつ症状の進行を伴う状態など,表6)が示唆される場合に望ましい検査方法である. もし,CTがその施設における唯一の利用可能な画像検査装置である場合は,CCTAで非閉塞性CADを除外する(図4左上).その際に解剖学的に高リスク所見(LMCA/ LMCA相当病変)を認めたり,OMT下でも症状が難治あるいはACSに近い病態への進展があれば,侵襲的冠動脈造影の実施が妥当である. CCTAでLMCA以外の閉塞性CADが示唆されれば,理想的にはさらなるリスク評価目的に負荷イメージングやFFR-CTなどの機能的検査を侵襲的冠動脈造影の前に追加することが勧められる.ほとんどの安定CADのケースで,機能的検査なしに侵襲的冠動脈造影を施行することは推奨されない.解剖学的評価のみによる管理は(機能的検査を加えた場合と比較して)安全域が同等であるにもかかわらず,対費用効果が不良であるからである54).機能的負荷イメージング査の経験が豊富な施設であれば,主としてこれらの画像検査技術を診断およびリスク層別化を目的に使用することが妥当である (図4右上).だだし,近年わが国で 行われたレジストリー研究からは,機能的イメージングが利用可能な施設が限定的であることも示されている59). CCTAやMPIなど,複数の画像検査が施行可能な施設では(図4下),CADの除外を行うためにはCCTAが望ましい画像検査であり,一方でMPIは比較的高いPTPもしくは既知のCAD既往患者に対して,リスク評価を目的に実施するイメージングとすることが妥当である. CCTAを第一選択の画像検査として使用する際の注意・ 不適切な心拍コントロール,不整脈・期外収縮,高度 の冠動脈石灰化,もしくは高体重(あるいは高度肥満),さらに冠動脈ステント植込み後の患者などでは,診断に適した画像が得られないため,不向きである60).・ 腎機能不全,左脚ブロック,人工ペースメーカ,既知 の薬剤アレルギー,運動不耐容,および放射線被ばくのリスクは,最適な画像検査の選択のために考慮されるべきポイントである. 1.3.1 冠動脈カルシウム(CAC)スキャン 中・高PTP患者に関する内容は前述のごとくであるが,低PTPの患者に対しては一般的に画像検査が行われないことが多い.しかし,石灰化した閉塞性CADの除外を目的に,選択的に冠動脈カルシウム(coronary artery calcium: CAC)スキャンを施行することも可能である.重度に石灰化したCADであっても,CACスキャンはCAD患者における重要な診断的・予後予測的情報を提供することができる.またCACスキャンは低コスト・低放射線被ばくで広く施行可能であり,海外ではもっとも簡便に行える画像検査と位置づけられている.古典的な負荷心電図も,運動誘発性の虚血性変化がないことを確認するために,低PTPの患者に対して選択的に施行することは可能である(後述,2.トレッドミル運動負荷心電図 参照). CACに関する近年の知見・ CACスコア0の患者が閉塞性CADを示すことは稀で あり,CACスコア0でないグループと比較して良好な予後を示している(“the power of zero” philosophy) 64). ・ しかしながら,CACスキャンが信頼性をもって非閉塞 性と閉塞性CADを鑑別可能かに関しては,いまだ議論がある.有症状の低~中等度PTPリスクの患者において,CACスコア0という所見をもってイベント発症リスクが極めて低いと予測する,いわゆる“de-risking”が可能であるというエビデンスは増えつつあるが, 表6 LMCA/LMCA 相当の病変を示唆する高リスク解剖学 的(CCTA)および虚血(機能的イメージング)所見検査法LMCA/LMCA 相当の病変を示唆する所見* CCTA・LMCA狭窄≧50%61) ・LADとdominant LCxの近位部の有意狭窄・LADとdominant RCAの近位部の有意狭窄 SPECT・ 左室心筋>10%の誘発虚血62)・ 虚血後心筋気絶/一過性虚血性内腔拡大63) 負荷CMR・ 負荷心筋血流欠損(>4/32左室セグメントな ど)62)・ 負荷誘発性運動機能不全(>3/16左室セグメ ントなど62)) 負荷心エコー・ 負荷誘発性運動低下/無運動(≧3/16左室セ グメントなど62)) *LMCA/LMCA相当の病変を示唆する所見は,ISCHEMIA試験で使用された閾値よりも広範な虚血範囲を含み,CADによる死亡または心筋梗塞の年間発生率中央値5%超に相当する62). CCTA, coronary computed tomography angiography; CMR, cardiac magnetic resonance; LAD, left anterior descending artery; LCx, left circumflex artery; RCA, right coronary artery; SPECT, stress single photon emission computed tomography.