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理のフローチャートに従って取り扱われてもよい32).それに対してACSは,突然発症することもあれば,比較的軽度の梗塞前狭心症に引き続いて発症することもある.安定CADとACSの関係は動的であり,同時に連続的ともいえる,そのため,保存的戦略から侵襲的戦略へ方針転換するべきタイミングを画一的に決めることは,実臨床においていまだに困難である.ISCHEMIA試験においても自然発症心筋梗塞の発生率が早期侵襲的戦略群に比して早期保存的戦略群において有意に高かったことが観察されており,臨床試験であっても適時適切な治療戦略への転換は困難であることが示唆される3).このようなグレーゾーンの患者の治療を適切に行うためには,より新しい安定CADとACSの定義を用いた研究が必要である.現段階では,エビデンスが不足しているため,症状を含めた患者の総合的な状態が著明に変化しない限り,安定CADの診断時や経過観察における心筋バイオマーカーのルーチンの定量評価は推奨されない.

症状の進行(増悪型狭心症)は「不安定」な患者を同定するために最重要項目ではあるものの,臨床現場では患者の症状は必ずしも正確かつ忠実に捉えられない.近年導入されている患者報告アウトカム(patient-reported outcome: PRO)のひとつであるSAQのスコアは,死亡,入院およびMI発生の独立した予測因子であることが示されている.たとえば,背景因子が同等のリスクの2人の患者でSAQの身体的制限と狭心症頻度ドメインのスコアが25点未満と75点超である場合を比較すると,前者は後者より死亡リスクが4倍,ACSにより入院を要するリスクが2倍高い30, 33, 35).それでもSAQのようなPROを日常臨床で実装するには,通常の臨床のワークフローの枠組みの中に収める必要がある.理想的には,Webもしくは携帯アプリケーションを用いて待合室や外来受診前の時間でSAQを仕上げ,その回答を電子診療録で問診内容と統合する,といったことが考えられる.SAQのようなPROのルーチン使用が患者ケアやアウトカムを改善させるかどうかを検証する必要があるが,すでにがん患者においては患者アウトカム導入と生存率の改善との関係が認められている36).

最後に,「安定型ではあるが薬剤治療抵抗性の狭心症」は,非侵襲的検査の前段階での注意深い評価が必要である.低強度の運動(3~4 METsの身体活動など)で狭心症症状を示す患者,あるいはCanadian Cardiovascular Society(CSS)分類III以上の患者は,より軽症の狭心症患者にくらべ,はるかに死亡率が高い37).このような患者の診断過程で症状の増悪が認められた場合は,検査前確率(pre-test probability: PTP)・臨床的尤度(clinical likelihood: CL)およびイベント発生リスクを考慮して,遅滞なく侵襲的冠動脈造影を検討すべきである.

まとめると,安定CAD患者における臨床経過は極めてさまざまで,ACS発症を高効率的に捕捉できる普遍的なフォローアッププロトコルを確立することは困難である. PROは,症状だけでなく日常生活制限や不安も定量的に評価可能である.PROを用いて経時的に不安定性を示唆する症状・徴候を評価することで,効率的に,病状の進行やイベントリスクの高い患者の同定を行うことができるであろう.