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p.11 抽出テキスト

表3 CAD が疑われる患者における検査前確率(PTP),臨

床的尤度(CL),および患者報告アウトカム(PRO)に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

適切な検査の選択を導き,診断精度を上げるための最初のステップとして,ベースラインの系統的なPTP・CL シーケンスの評価を行う9–11). I Aリスク層別化と重症度変化の把握のために,ベースラインおよび定期的なPROの評価を行う4). IIa B CL, clinical likelihood; PRO, patient-reported outcome; PTP, pre-test probability

1 CADの 検査前確率(PTP)と 臨床的尤度(CL)の評価

患者の背景因子,狭心症症状の性状を含めた現病歴,および危険因子の評価は,安定CADの診断において枢要なステップである.

狭心症の評価方法

1 古典的な分類としては,胸部症状は,その性状によっ

て典型的狭心症,非典型的狭心症,非狭心症性胸痛に分類される.この性状には以下のものが含まれる. 1  胸骨下(または頸部,顎,肩,腕)の絞扼感また

は締め付けられるような痛み2  運動や精神的ストレスによる増悪3  安静もしくはニトログリセリンによる5分以内の

症状緩和13-15) 2.  典型的狭心症は上記の3 つの性状をすべて満たし,

非典型的狭心症は2つのみを満たす.痛みが上記性状のうち1つのみに合致,もしくは1つも合致しない場合には,非狭心症・非心臓性胸部症状に分類される.

上記は狭心症の性状に関する古典的定義であるが,さらに症状の部位や性状にしたがって,それが虚血由来であるか否かを判断することが勧められる.特定の性状の(例:中心部の,圧迫されるような,摑まれるような)胸痛があれば高い確率で虚血由来である16).ただし, 2021年にAHA/ACC/ASE/CHEST/SAEM/SCCT/ SCMRから発表されたGuideline for the Evaluation and Diagnosis of Chest Painでは,「典型的」または「非典型的」胸痛という用語の代わりに“心臓性胸痛”,“心臓性

胸痛疑い”、または“非心臓性胸痛”という分類を用いることが推奨されている(前者では胸部症状の原因が特定しがたく,また良性疾患と誤解されがちであるため)

16).

Diamond-Forresterアプローチに従うと,上記の胸部症状に年齢と性別を加えた3項目で,各患者の検査前確率(pre-test probability: PTP)を評価することとなる15, 17).次に,このPTPにCL(例:併存症やベースラインの検査結果)を組み込むことにより,PTPが順次修正され(アップデートされる),この“修正PTP”は低(<5%),中等度(5 ~85%),高(>85%)に分類される.このステップは以降の検査を施行する前に実施されるべきであり,“PTP・CLシーケンス”と定義する.PTP・CLシーケンスは中等度PTPの患者においてもっとも有用であり,この層では検査後確率が非侵襲的検査の結果によってもっとも大きく影響を受ける.一方で,極めて低いPTPの患者は,非侵襲的画像検査を実施しても閉塞性CADと判定されることは稀であり,以降の診断的検査のフローからは一般的には除外される17, 18).このほか,Duke Clinical ScoreもPTPを評価する方法として使用可能であり,胸部症状・性別・年齢・心筋梗塞既往・喫煙・高コレステロール血症(脂質異常症)・糖尿病・心電図上のST-T変化といったパラメーターからPTPが算出される19).

1.1 検査前確率(PTP)

PTPの推定は,年齢,性別と上記の胸部症状の分類を考慮するDiamond-Forresterアプローチが主流であった.しかしながら,最近の大規模研究からは,Diamond- ForresterアプローチではCAD有病率が過大評価されるため診断確度が低いことが報告されている20, 21).Prospective Multicenter Imaging Study for Evaluation of Chest Pain (PROMISE)試験に登録されたCADが疑われる4,000人以上の患者のうち,上記のPTPの定義に基づき“中等度(intermediate)PTP”と分類された患者のなかで,実際に閉塞性CAD(主冠動脈枝狭窄率>50%)が確認されたのはわずか13.9%のみであった10).このような知見をふまえ, 2019 年の欧州心臓病学会(European Society of Cardiology: ESC)ガイドラインは,PTPモデルを改訂(下方修正)し(表4),これを安定CADの診断アルゴリズムに取り込むことを推奨している15, 22).この新たなガイドラインに従えば,前述のPROMISE試験において,以前は中等度のCAD罹患確率(15~85%)を有していると定義された患者のうち半数以上が,低PTP(<15%)に再分類される