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p.10 抽出テキスト

閉塞性CADを有する可能性が中等度である患者には,さらなる非侵襲的画像検査による評価が推奨され,一方,閉塞性CADの可能性が極めて低い患者は,基本的には追加検査を要しない.臨床現場では検査前確率(pre-test probability: PTP)と臨床的尤度(Clinical likelihood: CL)は重要であり,これらの評価を軽視すると,臨床試験の誤った解釈を誘導し,ひいては過剰な診断的画像検査や治療につながる恐れがある.欧米では生活様式の変化や近年の予防的な心血管疾患治療の進歩と関連し,CAD疑い患者でのPTPは近年総じて低下しており,低いPTPに割り当

てられる患者の割合が相対的に大きくなってきている.このような背景にもかかわらず,PTPやCLの評価が,臨床現場で十分に活用されていないことが多い.

本章では,PTP,CLの具体的な運用,特に適切な非侵襲的画像検査の選択や侵襲的治療戦略の適応判断を導くにあたっての役割について概説する.CADが疑われる患者におけるPTP,CL,および患者報告アウトカム(patientreported outcome: PRO)に関する推奨を表3に示す.

第1章 ベースラインの系統的評価

検査前確率と臨床的尤度

解剖学的評価

左冠動脈主幹部病変非閉塞性冠動脈

CCS V・ 非閉塞性冠動脈に伴う虚血性心疾患(INOCA)

古典的 ‘安定CAD’

CCS I・ 安定したCCS

CCS IV・ ACS後1年以上経過・ 血行再建後1年以上経過左室機能評価症状評価ISCHEMIA 試験の主な採用基準負荷試験により中等度から重度の虚血の存在

(無症状の患者も含む[~30%])

CCS VI・ 無症状の冠動脈病変

重症左室機能障害

CCS II・ 新規発症の心不全・ 左室機能障害腎機能障害

ISCHEMIA-CKD 試験の主な採用基準eGFR <30 mL/min/1.73 m2  または透析患者重症または難治性

狭心症状

CCS III・ ACS後1年未満・ 最近の血行再建後

図1安定CAD のCCS 疾患領域,ならびにISCHEMIA 試験・ISCHEMIA-CKD 試験の採用基準との関係CADの分類は多次元的である.エビデンスやガイドラインを正しく適用するためには,患者がその時点でどの疾患領域やステージに属しているかを認識することが最重要である.橙色で示すCCSのサブタイプは本アップデートがカバーしている疾患領域である.一方,灰色で示すサブタイプについては本アップデートでは言及しない.CCS IとIVは古典的“安定CAD”と称され,この2つのパターンはISCHEMIA試験登録者の多くを占めている.CCS II(新規発症の心不全または左室機能障害を有するCAD疑いの患者)とVI(無症候性CAD)もISCHEMIA試験に登録されている.進行性腎機能障害(eGFR<30 mL/分/1.73m2 または維持透析)はISCHEMIA-CKD試験に登録されている8).ACS発症後1年未満の安定している患者や最近血行再建を受けた患者(CCS III),冠攣縮または微小血管障害を伴う狭心症患者(CCS V)は本アップデートの対象外である.病態は通常複雑にオーバーラップしているため,すべての患者をオリジナルの(互いに排他的ではない)CCS分類のいずれかに落とし込むことはできないが,臨床現場ではほとんどのCCS患者がこれら6つの主たるサブタイプのいずれかに分類されると考えられる. ACS, acute coronary syndromes; CCS, chronic coronary syndromes; eGFR, estimated glomerular filtration ratio; INOCA, ischemia with non-obstructive coronary artery disease