p.90 抽出テキスト
E 患者の価値観 システマティック・レビューでは,アウトカムの優先順位に関する周術期の患者の価値観についての研究を見つけることができなかった.追加的考察 パネル会議で以下の意見が出された.周術期の死亡リスク,心臓死,急性心筋梗塞,心不全発症リスクは重大なアウトカムである.TAVI,SAVR にも重大な合併症があるので,それを加えたリスク評価を患者は重要と考えると推測する.原疾患の予後,AS の予後の双方が患者にとって重要である. F コスト システマティック・レビューでは患者視点の費用対効果分析の研究を特定することはできなかった. 追加的考察:入院費用は,TAVI で680 万円,SAVR で590 万円とされる475).日本では高額医療制度で個人が支払う上限額が決まっている462).たとえば,年収約370 万~約770 万円の場合,1 ヵ月の自己負担限度額は以下である462). 80,100 円+(医療費-267,000)×1% TAVR で14.5 万円,SAVR で13.9 万円の自己負担限度額となり,患者にとっては「中等度のコスト」とした. G 容認性 リサーチエビデンスはない.追加的考察 非心臓手術術前にAVR を施行することの患者の容認性は,原疾患延期リスクやAS の症状の有無で左右されると推察する.医師(外科医,麻酔科医)は,AVR によりAS の懸念が払拭されるのでAVR を施行するほうが容認性は増すかもしれない.一方で,すでに他の診療ガイドラインでは,無症候性であれば,AVR は必ずしも先行しないとされており19, 230, 392),AVR を施行しないことの容認性もあることが推察される.容認性は「さまざま」と判定した. H 実行可能性 SAVR, TAVI は専門施設が必要である.一方,AVR を行わないで非心臓手術を施行するには,厳重に血行動態を管理し,血行動態が悪化したときには対応できる施設で手術をすることが理想的である.どちらも,どこの施設でも可能というわけではないと考えた. I 推奨のグレーディングI.1 パネル会議 AVR を施行する群としない群で,周術期のアウトカム(AVR の合併症も含めたアウトカム)を比較したRCT がなく,間接的エビデンスから推奨文を作成するため,コンセンサス形成にかなりの議論がなされた. 無症候性AS に関しては,「無症候性ならば,予防的にAVR(SAVR,TAVI)を行わず,非心臓手術をすることを提案する」にコンセンサスが得られ,投票することにした. 症候性AS に関しては,上記の理由で画一的な推奨作成は困難と判断した.症候性AS は通常であれば,AVR が推奨される.その場合,選択肢は,1AVR(SAVR, TAVI)を先行,BAV も選択肢,2非心臓手術を先行,3どちらかの手術のみ施行,4どちらも施行しない,がある.それらを決定するにあたり,1弁置換術の緊急性(AVR 重症AS でリスク低←· →重症AS でリスク高 無症候性大動脈弁狭窄症のリスク 個別研究バイアスリスクグレードを上げる要因非直接性研究コードA B C D E F G H I J K L M N O P Calleja 2010 –1 0 0 0 –1 0 –1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 Agarwal 2013 –1 0 0 0 –1 0 –1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 Tashiro 2014 –1 0 0 0 –1 –1 –1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 MacIntyre 2018 –2 0 0 0 –2 –1 –1 0 0 0 0 0 0 –1 0 –1 バイアスリスクA-P はCQ1 の表61 を参照図24重症大動脈弁狭窄症の有無による非心臓手術の周術期リスクの比較-総死亡(続き) (Raymer K, et al. 1998 383), Calleja AM, et al. 2010 378), Agarwal S, et al. 2013 379), Tashiro T, et al. 2014 380), Maclntyer PA, et al. 2018 384) より作成)