p.88 抽出テキスト
と判断した. C.3 術前AVR の害について 検討するアウトカムは,パネル会議で,1 年後ADL(アウトカムの重大性:9,以下同),出血(7),手術延期日数(7)と認定した.システマティック・レビューではそれらを吟味した研究は存在しなかった. C.4 追加的考察C.4.1 非心臓手術延期日数 準緊急手術,時間的制約のある手術(例:悪性腫瘍)では重要な懸念事項である.術前にAS と診断され予防的AVR をされた群では,AVR から非心臓手術までは中央値105 日であった386).システマティック・レビュー以外の研究であるが,TAVI から非心臓手術までの日数は中央値 28.0 日(四分位16.8,54.5 日)であった.BAV は11 日(四 分位4,18 日)であった 387). C.4.2 AVR 合併症 AVR を行うと,その合併症がAVR 群のリスクに上乗せされる.SAVR の死亡率や合併症発症率はSTS score やJapanSCORE,EuroSCORE II で予測される. TAVI に関する日本のデータとして2 つの論文があった. Yamamoto らは1613 例のデータから30 日死亡率1.7%, Disabling stroke 1.7%,急性冠症候群0.8%,危機的出血5.8%,タンポナーデ1.6%,ペースメーカー8.5% と2019年に報告した473).Takimoto らの2016 年の報告では,299例のデータから死亡率1.3%,脳梗塞2.3%,ペースメーカー5.4%,危機的出血2.3% であった 474). C.4.3 出血,血栓症 AVR が行われると,外科的AVR(生体弁)でもTAVIでも,少なくとも最初の3 ヵ月は抗血栓薬が必要である19).その時期に非心臓手術となると,抗血栓薬継続であれば出 血,中止であれば血栓症の害がありうる.非周術期に関して,AVR 後3 ヵ月以内は生体弁でも抗血栓薬なしでは脳梗塞リスクは7%,全身塞栓症13% で,血栓リスクは高い220).なお,周術期は凝固系が亢進すると考えられている. C.4.4 ADL に関するエビデンスをみつけることができなかった. C.5 無症候性AS 患者における術前AVR の益と害のバランス 上記のとおり,益として急性心筋梗塞が減少するポテンシャルはある(望ましい効果「わずか」と判断)が,AVR 自体のリスク,非心臓手術の延期リスクを考える(望ましくない効果「中」と判断)と,術前にAVR を行うことは,益よりも害がまさると考える. C.6 症候性AS 患者における術前AVR の益と害とバランス 症候性AS に対するAVR は,2020 年改訂版 弁膜症治療のガイドライン19)ではクラスI 適応であるが,術前にAVR をしたときの周術期死亡率への影響は,上記のとおり,増加する可能性も減少する可能性もある.急性心不全リスク,1年死亡は減少したが,周術期死亡リスクへの影響を考慮して,術前AVR の益と害とバランスは「ざまざま」とした. D エビデンス総体の確実性 各アウトカムのエビデンス総体の確実性はC またはDである.さらに非直接性が高いため,エビデンス総体の確実性は非常に低い(D)とした. 1, 2 観察研究であり,C とした. 3両者ともC であり,C とした. 5観察研究であり,C とした.95%CI は幅が広いが,RR の最低をもっても有意差がありダウングレードしなかった. 6観察研究であり,C とした. 8, 9 95%CI は幅が広く1 ダウングレードしてD とした. 10 両者ともD であり,D とした. 12 95%CI の幅が広いため1 ダウングレードしてD とした. 14 95%CI の幅が広いため1 ダウングレードしてD とした. 16, 18, 20, 22, 24, 26 95%CI の幅が広いため1 ダウングレードしてD とした. 4年齢調整前は有意差をもってAS がリスクを上昇,年齢調整後は有意差がなくなるが,点推定は臨床的には意味のあるリスク上昇になっており「AS は死亡リスクを増加させる可能性がある」とした. 7年齢などを調整した3 研究ではAS によりリスクは増加せずRR も0.87, 0.66, 1.07 であったが,背景を全く調整していない1 研究は,ASによりリスクが増加(RR 4.1),それらを統合したメタ解析でもRR 1.44(0.68-3.06)と点推定も1 に近く有意差はなかったため,「無症候性AS では死亡リスクを増加させるとはいえない」とした. 11, 13, 17, 19, 21, 25 RR の95%CI は1 を含んでおり有意差はないが,点推定,その絶対差は臨床的に意味のある上昇があり,「リスクを増加させる可能性がある」とした. 15, 23, 27 RR の95%CI は1 を含んでおり,有意差はなく,点推定も1に近いため,「リスクを増加させるとはいえない」とした. (Calleja AM, et al. 2010 378), Agarwal S, et al. 2013 379), Tashiro T, et al. 2014 380), Raymer K, et al. 1998 383), Maclntyer PA, et al. 2018 384)より作表) 表65 重症大動脈弁狭窄症の非心臓手術周術期リスクに関するSummary of finding table (続き)