p.86 抽出テキスト
違うため別個に検討することを決定した. C.1 無症候性AS 患者におけるAVR の望ましい効果C.1.1 KQ4-1(表65 Summary of findings table 378-380, 383, 384), 図24 378-380, 383, 384)~27 379, 380, 383)) 無症候性AS の非心臓手術周術期のリスクについてのメタ解析で,総死亡(4 つの観察研究,1765 例),心臓死(2つの観察研究,496 例),心不全(3 つの観察研究,1644例)の相対リスク(RR)は,それぞれRR 1.44(95%CI 0.68-3.06),RR 0.85(95%CI 0.08-9.33),RR 1.04(95%CI 0.52-2.09)で有意差がなく,リスクを増加させるとは言えない(エビデンスの確実性はそれぞれC,D,D).急性心筋梗塞(3 つの観察研究,1644 例)はRR 1.66(95%CI 0.77- 3.60)と有意差はないものの,絶対差が1.1% 多(0.4% 少- 4.2% 多)であり,リスクが増加する可能性があるとした. C.1.2 無症候性AS 患者における術前AVR の益(望ましい効果) KQ4-1 からは,重症AS は総死亡,心臓死,心不全のリスクを増加するとはいえず,急性心筋梗塞のリスクを増加させる可能性がある.AVR 後に非心臓手術を行うと,急性心筋梗塞リスクを低下させる可能性はあるかもしれない.術前AVR の望ましい効果は「わずか」と判断した. C.2 症候性AS 患者におけるAVR の望ましい効果C.2.1 KQ4-1 症候性AS は,総死亡(3 つの観察研究,1522 例)を増加させ(1.8% vs 5.9%,95%CI 3.0-11.5%),絶対リスク差として,AS なし群に比べ総死亡が4.1% 多かった(95%CI 1.2% 多-9.7% 多).心臓死(1 つの観察研究,362例)0.78% vs 1.9%(95%CI 0.3-13.2%),RR 2.42(95%CI 0.34-16.92),急性心筋梗塞(2 つの観察研究,1410 例) 1.5% vs 3.4%(95%CI 0.9-13.0%), RR 2.22(95%CI 0.58- 8.42),急性心不全(2 つの観察研究,1410 例)10.1% vs 19.7%(95%CI 5.0-76.5%),RR 1.96(95%CI 0.5-7.6)と有意差はないが,増加する可能性がある. C.2.2 KQ4-2(表66 Summary of findings table 385, 386),図28 385, 386)) 無症候性,症候性の両方が含まれた患者群を,AVR 施行後に非心臓手術が施行された群とAVR を施行せずに手術が行われた群に分けて比較した2 つの後ろ向き観察研究で検証された(Luis 2020 386),Taniguchi 2020 385)).パネル会議では,術前AVR の益と害のバランスを考えるうえで,この2 つの論文のLimitation として,以下を考慮した. 1) AVR 施行群は,AVR と非心臓手術の両方が施行され た症例のみが含まれた研究である. 2) AVR による死亡や合併症で非心臓手術が施行できな かった症例は含まれていない. 3) AVR により非心臓手術が延期され原疾患悪化による手 術不可,死亡の症例は含まれていない. 4) AVR ができる状況になく(患者事情,施設事情),AS を残したまま非心臓手術を施行せざるをえなかった症例もあることが推測される. 5) 過去にAVR が行われてから時間が経過している症例も AVR 群に含まれる.これは非直接性のバイアスとなる.パネル会議では,上記により「術前AVR の益」を過剰に見積もっている可能性があることに留意する必要があると判断した. a.周術期死亡率 Luis 2020 386)の傾向スコア・マッチングでは,AVR 未施行群vs AVR 施行後群で2.3% vs 2.3%(95%CI 0.48- 11.0%),RR 1.0(95%CI 0.21-4.87),絶対差0%(95%CI 1.8% 少~8.7% 多)と有意差がなかった。Taniguchi 2020 385)では,背景因子の調整なしのデータで,4.3% vs 0.3% (95%CI 0-5.0%),RR 0.07(95%CI 0.00-1.17),絶対リスク差4.0% 少(95%CI 4.3% 少~0.7% 多)であったが, AVR 未施行群は高齢,透析患者が多いなどのバイアスがあった.このようにAVR 施行後はAVR 未施行に比べ,死亡率が低下する可能性と差がない可能性がある.差がないとした場合,これにAVR 自体の死亡リスクを考慮すると, AVR 施行により死亡リスクが増加することになる.結論として,術前AVR の周術期死亡率への影響は「さまざま」と判断した. b.周術期心臓死 このアウトカムに関しては,背景因子を調整したデータはない.Taniguchi 2020 385)では,3.2% vs 0.29%(95%CI 0.03% ~5.0%),絶対リスク差2.9% 少(95%CI 3.2%少~1.8% 多)であった.有意差はないが,AVR でこのリスクは減少する可能性がある. c.周術期急性心筋梗塞 Luis 2020 386)の傾向スコア・マッチングしたデータで, 3.0% vs 0.33%(95%CI 0.3 ~6.1%),絶対リスク差で2.7%少(95%CI 3.0% 少~3.1% 多)であった.有意差はないが,「心筋梗塞リスクが減少する可能性がある」とした. d.周術期心不全 Luis 2020 386)の傾向スコア・マッチングしたデータでは, 15.8% vs 3.8%(95%CI 1.5 ~9.7%),絶対リスク差で12%少(95%CI 14.3% 少~6.2% 少)であり,有意に低下した. e.1 年死亡率 Luis 2020 386)の傾向スコア・マッチングしたデータで, 24.1% vs 12.8%(95%CI 7.5 ~22%),絶対リスク差で12% 少(95%CI 16.6% 少~2.1% 少)と有意に低下した. f.望ましい効果は,総死亡への影響を重要視し「さまざま」