p.77 抽出テキスト
I 推奨のグレーディング パネル会議では「予防的血行再建を原則としてしないことを推奨する」という表現では,「血行再建に害がある」と証明されていないため,不適切ではないか,という意見が出された.一方,システマティック・レビューにて,術前血行再建は,心筋梗塞,死亡を予防しない結果となっただけでなく,一つのRCT では血行再建自体のリスク,手術延期リスクも無視できないことが示唆された.結論として「予防的血行再建を原則としてしないことを推奨する」で投票することが決定された.ただし,RCT では不安定狭心症,左主幹部病変,EF <20%,AS 患者は含まれておらず24),個別に考える必要がある.また,あくまで安定型冠動脈疾患患者が対象である. 左主幹部病変や,CCS 分類III,IV の症状のように,通常(非周術期)であれば血行再建の適応がある冠動脈疾患がある場合,選択肢として,1血行再建(PCI またはCABG)を先行,2非心臓手術を先行,3いずれか一方を行う,4いずれも行わない,などがある.血行再建(PCI, CABG)の適応,非心臓手術の適応,順番について,外科,麻酔科,循環器内科など多専門科集学的チームで包括的に吟味し患者と協働意思決定することが重要である(図2). 吟味すべきこととして,1血行再建の緊急性,2非心臓手術の緊急性(手術延期の害),3血行再建のリスク, 4非心臓手術のリスク,5血行再建後の抗血小板薬の周術期での中止または継続による血栓,出血リスクなどがある 推奨文は,修正デルファイ法(RAND 法)にて,投票率92%,中央値8,見解不一致指数0.132,同意率(7 以上の割合)92% であり,承認された. J 関連する他の診療ガイドラインの記載 ESC/ESA2014 7),ACC/AHA2014 72),カナダ心臓血管学会2017 14)から推奨が出されている.(第4 章2 非心臓手術前の冠動脈血行再建を参照) K 治療のモニタリング 安定型冠動脈疾患があると周術期のリスクは上昇する.早期に心筋虚血を診断し必要に応じて介入することが重要である. L 監視と評価 冠動脈疾患が判明している症例で,周術期の死亡率,急性心筋梗塞発症率を監視する. M 今後の研究の可能性 血管手術ではRCT で検証済みだが,中リスク手術でも同様かRCT(P:中リスク手術患者,I:予防的血行再建, C:予防的血行再建なし, O:死亡率,心血管イベント)が考慮される. CQ 2冠動脈ステント留置の既往がある症例に非心 臓手術を行う際は,手術時期を経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後1~1.5ヵ月以降にすることは推奨されるか? 冠動脈ステント留置の既往がある症例に待機的非心臓手術を行う際は,PCI 後1~1.5ヵ月以内にしないことを推奨する(GRADE 1C)(推奨の強さ「強い推奨」/ エビデンスの確実性「低」)付帯事項 1 最短延長期間は1 ヵ月か,1.5 ヵ月かの結論を出すのは 困難である.1.5 ヵ月以降のいつまで延期することがよいかについては,このCQ でのシステマティック・レビューでは検証していない. 2. 長期間延期できない時間的制約のある手術については, 適切な手術時期,周術期管理について,1ステント血栓症リスク(血栓症発症率,発症した場合の心筋梗塞範囲),2抗血栓療法継続の出血リスク(出血率,出血による臓器障害,止血のしやすさ),3手術延期の害などを外科医,麻酔科医,循環器内科医など関係する多専門科集学的チームが包括的に検討することが重要である. 推奨 A 背景,この問題の優先度 冠動脈にステントを留置された症例が非心臓手術を受ける際には,周術期の抗血小板薬の休薬や手術による凝固能亢進によってステント血栓症を生じ,結果として急性心筋梗塞を発症するリスクがあることが知られている15).特にPCI 術後早期の非心臓手術で心血管イベントのリスクが高いとの報告がある15).現在において,PCI 後に非心臓手術が必要となった際の至適な手術時期を明らかにすることは,重要な臨床課題であると考えられる. B エビデンスの要約PICO またはPECO P:ステント留置患者で非心臓手術を施行, I またはE:1 ~1.5 ヵ月以降まで延期して手術, C:1 ~1.5 ヵ月以内の手術, O:アウトカムとして,パネル会議にて以下を承認した.益:周術期死亡(アウトカムの重大性:9,以下同),周術期急性心筋梗塞(8),周術期心臓死(9), 害:不安(7)(手術延期により,患者が不安になるリスク)