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p.72 抽出テキスト

第6章 CQ 1~6

A 背景,この問題の優先度

安定型冠動脈疾患患者が非心臓手術を受ける際,出血や疼痛,その他の侵襲による心筋酸素消費量の増加が,虚血を誘発し,最終的に心筋梗塞をきたす懸念がある.実際,冠動脈疾患があると周術期の心血管リスクが上昇する.冠

動脈CT でまったく狭窄病変がない患者では,心血管イベントが2.0% であったが,非有意狭窄病変があると4.1%,一枝病変で7.3%,多枝病変があると23.1% とメタ解析で報告された25).こうした周術期の心血管イベントを予防するために,術前に冠動脈疾患に対して血行再建を行うことがある.しかしながら,血行再建として多くの症例で行われる経皮的冠動脈インターベンション(PCI)は,一般的にプラークの破綻を原因とする心筋梗塞に対する予防効果は乏しいと考えられるだけでなく,PCI によるステント留置と非心臓手術周術期の抗血小板薬の中止が,ステント血栓症による心筋梗塞発症という新たなリスクを招く懸念も存在する.PCI,バイパス手術ともに合併症があることや手術延期の害も考慮に入れる必要がある.非心臓手術術前に血行再建を行うことが,周術期の心血管イベントの減少に寄与するかどうかを吟味することは重要な臨床課題であると考えられる. B エビデンスの要約PICO またはPECO

P:非心臓手術を受ける予定で安定型冠動脈疾患を有する患者,

I:またはE:術前に血行再建あり,C:血行再建なし, O:アウトカムとして,以下をパネル会議で承認した.術前血行再建の益:周術期死亡(アウトカムの重大性: 9,以下同),周術期AMI(7),1年死亡(9)

術前血行再建の害:周術期出血合併症(8),コスト(7),入院期間(7),非心臓手術延期期間(8)

システマティック・レビューにて,術前血行再建を検証した1 つのRCT(McFalls 2004 24)),4 つの観察研究(Felix

2016 252),Yamaguchi 2004 254),Takahashi 2002 253),

Posner 1999 250))が採用され,メタ解析も行った. Landesberg 2003 251)は,生存率の記載のみで,死亡数が記載されておらず,メタ解析には採用できなかった(論文内

Part 2 GRADE に沿って作成したClinical Question と推奨

CQ 1非心臓手術を受ける予定の安定型冠動脈疾患

患者において,術前の冠血行再建は推奨されるか?

非心臓手術を受ける予定の安定型冠動脈疾患患者において,原則として術前に予防的冠血行再建をしないことを推奨する.(GRADE 1B)(推奨の強さ「強い推奨」/ エビデンスの確実性「中」)付帯事項1. 左主幹部病変や,カナダ心臓血管学会(CCS)分類III,

IV の症状のように,通常(非周術期)であれば,血行再建の適応がある冠動脈疾患の場合,選択肢は1 血行再建(PCI またはCABG)先行,2 非心臓手術を先行, 3 1または2のいずれか,4 どちらもしない,などがある.関係する多専門科集学的チームが包括的に吟味し,患者の価値観を理解し,患者と協働意思決定をすることが重要である. 2. 冠動脈疾患合併時には周術期リスクが上昇するため,

術前,術中,術後は外科,麻酔科,循環器科など集学的チームで協働することが重要である(第1 章3 循環器関連リスク軽減のために行われる可能性のあるマネージメントも参照)

3 不安定狭心症,大動脈弁狭窄症,心不全(左室機能障

害)の患者は本推奨に関連する主要な臨床試験(CARP試験)には含まれておらず,別途評価する必要がある.

推奨