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p.71 抽出テキスト

1.4 MINS のマネージメント

虚血性心疾患の二次予防において,アスピリンとスタチンが有効であることは複数の臨床研究から報告されている180, 455).ただし,MINS を発症した患者に対するアスピリンとスタチン内服による効果について検討した臨床研究は限られている.

2011 年に報告された前向き観察研究では,非心臓手術後にMINS を発症した415 例のうち,アスピリンとスタチンの内服を開始した患者で,それぞれ30 日死亡率が有意に低いことが示唆された(OR 0.54,95%CI 0.29-0.99: OR 0.26,95%CI 0.13-0.54) 451).

2014 年に報告された後ろ向き症例対照研究では,大血管手術後にMINS を発症した66 例の患者に対して,内服治療(抗血小板薬,スタチン,β遮断薬,ACE 阻害薬)介入の有無で予後を評価した.治療介入を行わなかった群は治療介入を行った群と比較して,心血管イベントリスクが有意に上昇していた(HR 2.80,95%CI 1.05-24.2)

449).

このようにMINS 発症後のアスピリンとスタチン内服の有効性については,少数例の観察研究からの報告のみであり,十分なエビデンスがあるとは言いがたい.

2018 年にMINS 発症後のダビガトランの有効性を検討したRCT(MANAGE 試験)が報告された.MINS 発症後の患者に対してダビガトラン110 mg 1 日2 回投与が,大出血イベントの有意な増大を認めることなく,血管死,非致死的心筋梗塞などの主要心血管イベントを抑制した(HR 0.72,95%CI 0.55-0.93) 456).しかしながら,本試験の結果のみで推奨できる段階になく,今後のエビデンス蓄積が待たれる.

現時点では,MINS 発症を認めた場合は,循環器内科医へのコンサルテーションを行ったうえで,必要な検査や治療の検討を行うことが妥当であると考えられる.

1.5 術後の心筋トロポニンモニター

前述のように,MINS には自覚症状がないことも多く,術後のトロポニン測定で認識されることがある448, 453)。カナダ心臓血管学会の非心臓手術の周術期ガイドライン

2017 14)では,術前BNP 上昇,RCRI 1 点以上,45 ~65歳での冠動脈疾患既往,65 歳以上を高リスクとして挙げており,術前後のトロポニンモニターを推奨している.高リスク患者では術後の心筋トロポニンモニターを考慮してもよいが,ルーチンサーベイランスによって診断されたMINS のマネージメントは確立されていない。

2 術後の12 誘導心電図による サーベイランス

非心臓手術3564 例を対象とした前向き観察研究では,術後心電図における虚血所見は,その後の主要な心血管イベントの独立した予測因子であることが示されている(OR 2.20,95%CI 1.1-3.7) 457).

血管外科手術を受けた185 例の患者を対象として術後48 ~72 時間の心電図連続記録を行った前向き観察研究では,術後早期(60 分未満)に心筋虚血所見が頻発することが報告されている458).

エビデンスは十分ではないものの,わが国では12 誘導心電図を比較的簡便に施行できる環境が整っており,高リスク患者で術後48 ~72 時間以内は,12 誘導心電図による心筋虚血のサーベイランスを考慮してもよい.

術後トロポニンと心電図のモニターの推奨とエビデンスレベルを表59 に示す.

表59 高リスク患者における術後トロポニンと12 誘導心

電図によるサーベイランスに関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

高リスク患者において術後の心筋トロポニンによるMINS のサーベイランスを考慮してもよいIIb C高リスク患者において術後12 誘導心電図による心筋虚血のサーベイランスを考慮してもよいIIb C MINS:非心臓手術後心筋傷害