p.69 抽出テキスト
ラマーが準備できない場合に使用可能である. 12.3.2 CRT-P の管理 CRT-P は徐脈性不整脈に対する治療というより,心室の非同期収縮に左室ペーシングを加えることで,同期性を改善させる心不全治療という意味合いが強い.CRT 植込み患者の多くは自己脈が保たれており,モードの変更は基本的に必要ない.EMI によるペーシングの抑制が急に血行動態に影響を及ぼすことはないが,両室ペーシングの長時間の停止は,同期性の悪化のため心不全の増悪を惹起させる可能性がある.CRT の適応となる症例はもとより低心機能であり,周術期のCIED 管理だけではなく,心不全を含めた包括的な全身管理が必要である. 12.3.3 ICD,CRT-D の管理 ICD は,心拍数によって心室性不整脈を診断する.近年,鑑別アルゴリズムの進歩により,不適切作動は大幅に減少したが,心拍数が心室細動の設定レートに到達すると,鑑別診断よりも早急な除細動が優先される.電気メスの周波数は100 kHz から4 MHz と非常に高く,電気的ノイズの周期が,心室細動のゾーンに入り不適切作動する可能性があるため,除細動機能は手術直前にオフにする.除細動器が埋め込まれている患者はもとより致死性不整脈のハイリスク群であり,術中の麻酔や侵襲で不整脈が誘発されることがある.除細動機能がオフになっていることを手術室に入るメンバーに周知させ,体外式除細動器の胸壁パッチ電極をあらかじめ貼付しておく.電極パッチを通常の位置である右前胸部と左側胸部に貼ると,作動時に右心室に留置してあるショックリードと心筋間で障害電流が発生し,リード不全を起こす可能性がある.パッチは胸部両側面もしくは前後(前胸部と対側の背部)に貼るようにし,前胸部のパッチはデバイス本体からできるだけ離すようにする. なお,植込み型除細動器は本体の上に磁石を置くと頻拍の感知機能がオフになるため,プログラマーがすぐに用意できない緊急手術などで使用する.ただし,磁石ではペーシングモードは変更されないため,非同期モードに設定したい場合はプログラマーが必要となることには注意が必要である. 完全皮下植込み型除細動器(SICD)の周術期の管理は通常のICD と変わりないが,ショックリードが胸骨付近から側胸部まで皮下を通るため,胸部の外科手術の際はリードの損傷に気をつける. 12.3.4 術者側の術中の対応 電気メスはユニポーラ型ではなくバイポーラ型を使用することによりEMI のリスクを大幅に軽減できる444).ただ し,バイポーラ型は低出力で凝固を達成でき細部の止血には向いているが,効率が悪く止血に時間が掛かること,切開機能が付いていないことなどから,実際の手術ではユニポーラ型が使用されることが多い.そうした事態には, EMI の影響を最小限にするためにエネルギー出力を最小限にしたり,通電は短く断続的にするなどの対策を講じる必要がある(5 秒以内の通電,次の通電まで5 秒以上空けるなど) 444).ユニポーラ型の電気メスによって人体に流れ込んだ高周波電流は対極板により回収されるため,その貼付位置も重要となる.通常,対極板は背中や大腿に貼るが,上肢や胸部,頭頸部の手術の場合は電流がデバイスを通過してしまう可能性がある.電流経路が本体およびリードシステムから十分離れるように対極板の貼る位置を工夫する必要がある.また,術中はEMI による徐脈や心停止をモニターする必要があるが,心電図モニターも同様にノイズを拾い波形の判定が困難になるため,EMI の影響を受けないパルスオキシメーターや動脈圧波形でも確認する. 12.4 術後の対応 デバイスの近くで電気メスを使用した場合,その本体やリード,リードと接触している心筋などに障害を与えることがある.術後はペーシング閾値,感度,抵抗値,バッテリー寿命などを評価しEMI などの影響がなかったかを確認する.デバイスの設定は術前の状態に戻すが,特にICDの除細動機能を必ずオンに戻す.術後に機能がオフのまま致死性不整脈が発生しICD が作動しなかったという報告もあるので十分注意する445).除細動機能をオンにするまでは電極パッチは外さずにモニタリングを必ず継続する.また,EMI の影響を強く受けた場合,電池電圧の表示が誤表示されることがあるので確認する. 12.5 非心臓手術におけるデバイス感染の予防 デバイス感染とは,体内に植え込まれたCIED 本体もしくは電極リードの感染であり,感染性心内膜炎や敗血症を引き起こす重篤な合併症である.周術期の予防的抗菌薬投与の有効性を示すエビデンスがない.CIED の感染とその治療に関するAHA からのステートメントでは,デバイスに直接影響を与えない歯科を含むその他の侵襲的な処置における予防的抗菌薬治療は推奨されていない(Class III) 446).ただし,糖尿病や免疫機能低下など易感染性がある場合には,個々の症例で抗菌薬投与を検討する必要がある.