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p.67 抽出テキスト

弁膜症性心房細動と同様,患者の血栓リスクに応じて抗凝固療法を考慮する(表56).

11.3 心室性不整脈

非心臓手術後の周術期に新たに心室性頻拍(VT/VF)を発症することは0.5% と稀である439).心室性不整脈の重症度や予後は器質的心疾患の有無により規定される.VT/VFを認めた場合には,術前に判明していなかった心疾患(虚血性心疾患,弁膜症,心筋疾患),電解質異常,使用した薬剤の影響,術後のストレス心筋症などを考慮して精査する.なお,術前から心室期外収縮,もしくは非持続性心室頻拍を認めても,心筋梗塞など器質的心疾患に伴うものでなければ周術期やその後の予後悪化因子ではない440, 441).特殊な病態として,Brugada 症候群,QT 延長症候群などの遺伝性不整脈がある.器質的心疾患を伴わず,心室細動や,多形性心室頻拍を発症する. a. Brugada 症候群

VF 発症機転として,副交感神経活動との関連性,発熱時にVF が発症することも報告されている442).術前にBrugada 症候群と診断されている場合,体温,電解質のコントロールを厳密に行う.VF を発症した場合,再発予防には交感神経刺激(イソプレテノロール持続注)が有効である442).

11.4 徐脈性不整脈

徐脈性不整脈の周術期の発症は0.4% と報告されている439).原因として,薬剤性(β遮断薬,ジギタリス,Ca 拮抗薬,アミオダロン),電解質(高カリウム血症),副交感神経(脊椎麻酔,挿管チューブ,刺激など),心筋虚血がある443).必要に応じて,薬剤(アトロピン,ドパミン,イソプレテレノールなど),一時的ペーシングで治療する. 11.5 周術期における抗不整脈薬使用の注意点

周術期は合併症により腎機能,肝機能,心機能低下が生じる可能性がある.さまざまな薬剤との相互作用も考慮に入れる必要がある.それぞれの薬剤の薬物動態に基づき,抗不整脈薬の選択,量の調節,副作用に注意が必要である419).

12 植込み型心臓電気デバイスの 取り扱い

植込み型心臓電気デバイス(CIED)は植込み型心電計からペースメーカ,両心室ペースメーカ(CRT-P),植込み型除細動器(ICD),両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)など多岐にわたる.周術期に適切なCIED の管理が行われれば,通常の患者と同様に安全に手術を施行できるが,それにはCIED 領域を熟知したメディカルプロフェッショナルや医師のサポートが不可欠である.周術期には,多職種がチームとして協力し包括的なCIED 管理を行っていく必要がある.

12.1 電磁干渉(EMI)

CIED は心臓が発生する微細な電気興奮を感知して診断や治療を行う.通常のペースメーカは自己波が感知されればペーシングを抑制し,不要な電池消耗や受攻期へのペーシング(Spike on T)を避けるように設定されている.電気メスなどの手術に用いる電気装置により電気的ノイズを感知すると,必要なペーシングが抑制され,結果的に徐脈や心停止を招く可能性がある.また,ICD,CRT-D では,電気的ノイズを心室性不整脈と誤認して不適切作動を起こす可能性がある.周術期には,適切なCIED 設定変更が推奨される.

12.2 術前の準備(表57)

CIED植込み患者に対する手術の予定が組まれた段階で, CIEDの知識の持つ循環器医もしくはメディカルプロフェッショナルと手術の担当科,麻酔科が事前に周術期の対応を討議する必要がある.たとえば,表57 のようなチェックリストを準備し,手術に関わるチーム全体が必要事項を共有しておくべきである.また,術中にEMI によりデバイスの設定が変更されたり,センシング・ペーシング閾値など

表56 術中または術後に発症した心房細動(POAF)に関す

る推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

POAF を合併した場合,抗凝固治療を考慮するIIa B POAF 予防のみを目的とするβ遮断薬の投与を行うべきではないIII Harm B