GL検索 v0.1.0
画像は 64 ページを描画したものです
page 64

p.64 抽出テキスト

均血圧の低下には注意する必要があり,平均血圧がベースラインから30% 以上低下すると脳梗塞発症につながる405),平均血圧60 mmHg 未満が11 分以上続くと急性腎障害につながる410),平均血圧55 mmHg 未満が続くと,持続時間に一致して急性腎障害や心筋傷害のリスクが上がる411),などの報告がある.さらに,18,756 例を対象とした後ろ向き研究では,収縮期血圧70 mmHg 未満,平均血圧50 mmHg 未満,拡張期血圧 30 mmHg 未満,あるいはベースラインからの50% 以上の血圧低下がそれぞれ5 分以上続いた場合には,30 日死亡率が増加すると報告されている407).

以上から,周術期は血圧をベースラインの70 ~100%程度に維持し,過度の血圧変動を避けるように血圧管理を行うことを推奨する(表53).術後の血圧上昇は,不安や麻酔覚醒後の痛みによりしばしば起こるが,これらの要素を治療することで改善する.

10 肺動脈カテーテル

2001 年に血管手術を施行した385 例のRCT の比較的小規模なメタ解析の結果が報告され,肺動脈カテーテル による予後の改善は示されなかった412-414).

一方で同年,50 歳以上の非心臓手術患者を対象として傾向スコアマッチングを行った観察研究では,コントロール(肺動脈カテーテル使用しない)群215 例と比較して,肺動脈カテーテル使用群215 例で,術後の心不全と非心臓関連のイベントが多いことが示された415).その要因は明らかではないが,観察研究であるため,重症例に肺動脈カテーテル が使用されており,このバイアスが十分に調整できていない可能性はある.また肺動脈カテーテル挿入に伴う合併症が関連している可能性が考察されている. 2003 年には,非心臓手術における肺動脈カテーテルの

周術期使用の効果を検証した最大規模のRCT が報告されている416).60 歳以上のASA リスクスコア III あるいはIVの高リスク患者1994 例(緊急あるいは待機的な,腹部,胸部,血管,大腿骨近位部骨折手術)を,肺動脈カテーテル使用群と未使用群にランダムに割付けた416).肺動脈カテーテル 使用群での院内死亡率の改善は認めず(p=0.93),むしろ肺血栓塞栓症の増加を認めた(p =0.004).

さらに,外科手術,急性心不全,ARDS, 敗血症などさまざまなICU 治療患者を対象として肺動脈カテーテルの効果を検証した13 試験のRCT(5686 例)のメタ解析でも,死亡率の改善や入院期間の短縮は示されなかった417).

高リスク患者でも非心臓手術における肺動脈カテーテルのルーチン使用は推奨されない(表54).現状では,術前に補正不可能な循環動態に大きく影響しうる病態がある場合(重症弁膜症,重度の左室収縮能低下など)には,肺動脈カテーテル の使用を考慮してもよい.

11 不整脈

未知の不整脈の発生を術前に予測することは困難であるが,周術期に新規に発生する不整脈の成因として,以下の3 つが考えられる. 1 潜在性の不整脈が周術期に偶発的に発生2 周術期の薬剤使用,自律神経活動,電解質異常,新た

な心筋傷害(心筋虚血,ストレス心筋症など)を誘因として発生3 手術操作そのものによる影響,胸部手術(肺,食道など)

時の心臓への接触などの直接的な操作による影響

11.1 心房細動患者の周術期リスク

11.1.1 疫学

非心臓術後30 日の死亡率は心房細動(AF)患者で6.4%

表53 非心臓手術における血圧管理に関する推奨とエビデ

ンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

I ~II 度の高血圧(収縮期血圧180 mmHg 未満,拡張期血圧 110 mmHg 未満)であれば,手術を延期させないことを考慮してもよいIIb B周術期は血圧をベースラインの70 ~ 100% 程度に維持し,過度の血圧変動を避けるように血圧管理を行うことを考慮するIIa B表54 非心臓手術における肺動脈カテーテルに関する推奨

とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

非心臓手術における肺動脈カテーテル のルーチン使用は推奨されないIII No benefit A