p.59 抽出テキスト
め心拍出量が低下する. 3 肺血管抵抗は肺容積が安静呼気位にあるときに最も低 くなり,換気が1 回換気量の変動内であれば肺血管抵抗はそれほど増加しないが,最大吸気位に向け肺容積が膨らむにつれて肺胞毛細血管は虚脱し肺血管抵抗は上昇する358, 359).肺の過膨張を避けるために吸気プラトー圧を30 cmH2O 以下336)に保ち,一回換気量を6 ~ 8 mL/kg 336, 355)で調節することが望ましい. 4 一方,肺の過収縮でも肺胞外血管の伸展が解除され蛇 行が増すことにより肺血管抵抗は上昇し,かつ無気肺も生じやすくなるため,低酸素・高二酸化炭素血症由来肺血管収縮からさらに肺血管抵抗が上昇する.肺の虚脱を防ぐためにある程度のPEEP が必要である. 5PEEP について過度のPEEP は呼気吸気全相にわたり2の作用を強調 するリスクがあるが,健常者では10 cmH2O 以下のPEEP であれば肺血行動態に影響しないとされている.しかし,右房圧上昇例ではわずかなPEEP で肺循環動 態悪化をきたし,卵円孔開存を介して右左シャント増悪から100% 酸素投与でも改善しない低酸素血症をきたす症例が存在するためPEEP をかける場合は慎重を期す. 7.3.3 術中モニター 基本的な術中モニタリングとして,動脈ライン圧測定は全身還流圧の把握に,また中心静脈圧測定は輸液流量の調節に有用である.重症例ではスワンガンツカテーテルによる左室前負荷や肺高血圧重症度ならびに心拍出量の把握を行う347, 350). 7.4 術後管理 術後には術中に引き続き呼吸循環動態のモニタリングを行いながら,肺高血圧増悪因子の是正,水分管理を基本として,昇圧薬・強心薬の併用,さらには肺血管拡張薬を適切なタイミングで使用する(図12) 337, 360). 7.4.1 増悪因子への対応 肺血行動態悪化要因として低酸素血症,高二酸化炭素血症,陽圧換気,疼痛や低体温による交感神経亢進状態,アシドーシス,出血,貧血,甲状腺機能異常,肺塞栓,不整脈,感染,敗血症,内服薬の中断336)などがあり,適切な酸素化と換気,継続的な除痛に努めながら各増悪因子の補正を行う.心房粗動や心房細動の発生は右心不全のリスク要因となり,循環動態が不安定な症例では電気的除細動による速やかな洞調律への復帰が望まれる. 図12 肺高血圧患者に対する周術期アプローチ(Harjola VP, et al. 2019 337),Hoeper MM, et al. 2019 360)を参考に作図) ステップ2:右室前負荷の適正化左室圧排症例には利尿薬静注,透析による除水.容量不足例には補液 術前評価:患者・手術関連リスクの評価,右心不全症例の把握,肺高血圧治療の最適化,専門施設との連携 周術期管理:適切なモニタリング,緩徐な麻酔導入 ステップ1:増悪因子への対応敗血症,不整脈,肺血管拡張薬内服中断,肺塞栓,陽圧換気,低酸素血症,高二酸化炭素血症,アシドーシス,貧血 ステップ3:体血圧の維持昇圧薬(ノルエピネフリン,バソプレシン等)の使用ステップ4:低心拍出状態からの離脱 強心薬(ドブタミン,ミルリノン)の導入 ステップ5:右室後負荷の低減 肺血管拡張薬(NO 吸入, PGI2 吸入)の導入 緩和医療専門施設への移送を考慮 体外循環使用