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p.56 抽出テキスト

じ,数日後に急性心不全をきたすことがある45).特に, HFpEF 患者では左心室のスティフネスが増しており,体液過剰による肺水腫をきたしやすく,適切な周術期モニタリング,補液量,後負荷の制御に注意する.

非心臓手術後早期は,心筋傷害のリスクがある(MINS) 321).心不全発症時,新たな心筋虚血の可能性もある.術後数日は,手術や麻酔の影響で胸痛などの症状が出現しにくく,心筋虚血精査にはトロポニンや心電図が必要である321).手術に伴うストレス関連心筋症も鑑別疾患である322).

周術期から術後にかけて,バイタルサイン,酸素飽和度の密なモニタリング,X 線でのうっ血の評価などを行い,心不全の徴候を早期に捉えることが重要である.

慢性心不全患者のマネージメントに関する推奨とエビデンスレベルを表47 に示す。6 肥大型心筋症

6.1 疫学

肥大型心筋症(HCM)の日本での有病率は10 万人あたり17.3 人(約5000 人に1 人)であった(1998 年調査) 323).一方,海外の報告では,有病率は約500 人に1 人とされ,すべての年齢層で発症しうるとされる323-325).非心臓手術患者のHCM 有病率は66,000 人中30 人という日本からの報告がある326).

6.2 術前心エコー図検査の有用性

術前心エコー図検査でHCM の周術期リスク評価が可能である(表48).閉塞型HCM は,非閉塞型HCM よりも周術期心イベントリスクが高く327),特に流出路圧格差30 mmHg 以上はリスクが上昇する328)という報告がある一方で,リスクは変わらないという報告もある329).いずれも症例数が少なく,解釈には注意が必要である.非心臓手術周術期で高リスクと考えられる心エコー図所見を示す(表48) 330).

6.3 周術期脳心血管合併症のリスク

HCM の周術期のリスクは死亡率0 ~6.7%,心不全発症率1 ~16%,心筋梗塞発症率0 ~2.9%,心房細動発症率4% と報告されている(表49) 326-329, 331-334)(詳細はSupplementary profile 3).2006 年の227 例のコホート研究では,周術期死亡率6.7%,心筋梗塞発症率2.2% と有害事象発生頻度は高く,十分な術前評価と周術期管理が必要と結論づけられている332).また,HCM 患者92 例と非HCM 患者を比較したコホート研究では,術後30 日以

表46 術後急性心不全の原因

輸液過多心筋傷害(MINS)心筋虚血(type 1 急性心筋梗塞,type 2 急性心筋梗塞,ステント血栓症)ストレス関連心筋症心房細動手術侵襲により漏出した水分のrefilling

表47 慢性心不全患者のマネージメントに関する推奨とエ

ビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

心不全は周術期の心血管イベントリスクのみならず,非心血管リスクが増加することを外科医,麻酔科医,患者と共有するI C中リスク,高リスク手術の術前に新たに診断したHFrEF の場合,もし3 ヵ月以上延期できる待機手術であれば,心不全診療ガイドラインに則った維持治療を導入し量の調節を行い,心機能回復を待つI C HFrEF の維持治療として服用中のACE阻害薬/ARB を術前に中止した際は,術後,なるべく早期に再開するI C HFrEF ですでに慢性維持治療で服用されているβ遮断薬は,周術期に中止すべきではないIII Harm B表48 肥大型心筋症の周術期高リスクと考えられる心エ

コー図所見左室流出路圧較差(安静時30 mmHg 以上,バルサルバ負荷時50 mmHg 以上)僧帽弁収縮期前方運動(SAM)による中等度以上の僧帽弁逆流左室収縮能低下(LVEF <50%)僧帽弁流入波形で拘束性パターンを示す左室拡張能低下(Hensley N, et al. 2015 330)より改変)