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p.54 抽出テキスト

消化管手術の縫合不全312)など)のリスクと関連する(表45) 16, 304, 309, 310, 312).急性心不全,あるいは慢性心不全の増悪患者では,慢性心不全患者に比べ,周術期死亡率は高かった304).外来手術であっても,心不全は死亡リスクを上昇させる310).

5.4 左室駆出率と周術期リスク

さらに心不全の中でも,左室駆出率(LVEF)が40% 未満に低下した心不全(HFrEF)のほうが,周術期の心血管合併症(死亡,急性心不全,急性心筋梗塞)を発症するリスクは大きい309).LVEF が低下するほど90 日死亡率が増加した(図11) 310).さらにLVEF <30% は周術期のみならず,術後,長期の死亡率の独立した規定因子であった313, 314).LVEF の保持された心不全(HFpEF)に関する周術期のデータは少ないが,術後死亡リスクの増加309),術後心血管合併症の増加が報告されている315-317).

5.5 心不全患者の術前マネージメント

5.5.1 術前の血行動態の適正化の重要性

内科的加療により安定化した無症状で身体所見上心不全徴候がない心不全患者は,心不全ではない患者に比しても周術期死亡率は高くなかったという報告がある318).心不全徴候があれば,術前に血行動態を適正化しておく7).

5.5.2 慢性維持治療の導入について

HFrEF 患者の予後改善には,ACE 阻害薬/ARB,β遮断薬,アルドステロン受容体拮抗薬などの診療ガイドライ

ンに沿った慢性維持治療が重要である41).術前にHFrEF患者を新たに診断した場合,急を要さない待機手術であれば,術前にこれらの至適な内科的慢性心不全加療を導入し安定化に努める.またエビデンスはないが,ESC/ESA 周術期診療ガイドライン2014 では,待機手術の場合,これらの治療導入のため手術を3 ヵ月以上延期し,心機能改善を待つことを推奨している7).しかしながら,手術までにACE 阻害薬/ARB,β遮断薬などによる至適内科治療を行う十分な時間がない緊急手術,準緊急手術の場合,無理な導入や,急な容量増量は勧められない.やむなく手術を先行する場合には,うっ血,臓器還流を厳重に監視しながら心不全の顕在化を予防し,術後に時間をかけて心不全内科治療を始める.

慢性維持薬のACE 阻害薬,ARB,β遮断薬に関しては,第3 章1 抗凝固療法以外を参照.

5.6 術後急性心不全の原因(表46)

下腹部腹腔鏡手術などではTrendelenburg 位(頭部を低位にする)にするため,前負荷が増加する68, 319, 320).もともと心機能が低下していると,急性心不全を生じることがある320).麻酔により血管拡張となり,血圧,末梢循環維持のため,術中に輸液が行われる.麻酔中止後,末梢血管トーヌスが正常化し心臓への静脈還流が増加し,術後,心不全となることもある45).腹腔内手術により,生食で洗浄され,残った生食が,術後吸収され,急性心不全となることもある45).手術により,局所の血管透過性が亢進し血管外に漏出した水分が,術後血管内に戻る(Refilling)が生

2.92 3

2 1 1.98 1.69 1

9.3 9.2

6.4 2.9非虚血性心不全虚血性心不全心房細動冠動脈疾患

(%)

10 9 8 7 6 5 4 3 2 1 0

図10 循環器疾患別周術期死亡リスク(van Diepen S, et al. 2011 307)より作図)

術後30 日死亡率(%)オッズ比※

1999 〜2006 年カナダ,アルバータ州の急性期病院に入院したすべての患者年齢(中央値):非虚血性心不全77 歳,虚血性心不全77 歳,心房細動75 歳,冠動脈疾患67 歳※  年齢,性別,合併症,手術施行年,手術タイプ,緊急度,病院規模で調整