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p.53 抽出テキスト

以上より,本診療ガイドラインではヘパリン置換を推奨しない(推奨クラスIII Harm,エビデンスレベルB,表44).

4.3 CABG 施行歴のある患者

CABG 施行歴のある患者が非心臓手術を必要とした際の報告は少ない.

Breen らは,CABG 後1 ヵ月以内の血管手術は周術期心血管イベントが高くなると報告している301).一方, Mookadam らは緊急手術を除外すると,CABG 実施から非心臓手術までの期間は心血管イベントの予測因子ではなくEF 45% 以下,右室収縮期圧(RVSP)40 mmHg 以上がリスクであったとしている302).

Tokushige らは,PCI 後手術が必要になった2398 例とCABG 後手術が必要になった560 例を比較し,心血管イベントは両群で差がなかったが,出血性イベントはCABG群で少なかったとしている303).手術時に抗血小板薬が投与されていなかった割合は両群とも53% であったが, DAPT 投与中の割合はPCI 群の27% に対してCABG 群では3.1% と少なく,このことがCABG 群の出血事象の低減に繋がった可能性がある.

CABG 後の非心臓手術は抗血小板薬が投与されていない,あるいは単剤で実施されていることが多いことはわかるが,継続・休薬について推奨を作成するほどのエビデンスはないといえる.現状では,非心臓手術実施の当該科・麻酔科と連携して継続の有無を判断するべきと考える. 5 慢性心不全

5.1 非心臓手術患者における心不全に関する 疫学

米国における2009 ~2013 年の非心臓手術患者126 万人のデータベースでは,全体の0.61% がうっ血性心不全の患者であった16).さらに別の,同国の非心臓手術患者2156 万人のデータベースでは,非心臓手術患者の4.9% に心不全に関連した病名がつけられていた304).そのうち,急性心不全が4.7%,慢性心不全の増悪が27.8%,慢性心不全のみが11.3%,分類が不確定な心不全状態が56.2% であった304).

5.2 術前に心不全を診断する重要性

次の5.3 項に示すとおり,非心臓手術周術期において,心不全は心血管,非心血管合併症,死亡のリスクを増加させる.そのため,術前の心不全症状の有無,心不全徴候の評価が重要である.動悸,労作時息切れ,起坐呼吸,夜間発作性呼吸困難などの症状に加え,III 音の聴取,頸静脈怒張など他覚的な所見も周術期心血管合併症に大きく影響を与えている因子であり305),術前の問診,身体診察は極めて重要な術前評価の入り口である.RCRI などリスクスコアから上昇リスクとされた患者では,さらなるリスクの層別化のため血中BNP やNT-proBNP(第2 章7 BNP, NT-proBNP の役割を参照),経胸壁心エコー図検査(TTE)をすることを考慮してもよい.

5.3 心不全患者の周術期のリスク

冠動脈疾患を有する患者よりも心不全患者のほうが非心臓手術における周術期合併症が有意に高い306-308).手術死亡率(退院前死亡または手術後30 日以内死亡)は,心不全患者が冠動脈疾患患者よりも有意に高く306),虚血性心不全,非虚血性心不全に分けても,いずれも冠動脈疾患患者よりも高かった(図10) 307).心不全の存在は,他の交絡因子で調整してもなお周術期死亡の独立した規定因子である16, 304, 309, 310).さらに,心不全は心血管イベントリスク16, 304),非心血管イベント(急性腎障害16),出血16),感染症16),再手術16),肺血栓塞栓症304),せん妄311),脳梗塞304),

表44 冠動脈疾患患者における周術期の抗血小板療法に関

する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

冠動脈ステント留置されていない冠動脈疾患の慢性維持抗血小板薬の周術期の継続,中止は,血栓リスクと出血リスクを吟味して決定するI C周術期心血管イベント低減のため新たに抗血小板薬の投与を開始すべきではないIII Harm B冠動脈ステント留置後の患者は,外科・麻酔科・循環器内科で血栓リスク,出血リスクを協議し,出血リスクが高くない場合は,アスピリンを継続し,出血リスクが高く休薬が必要な場合には極力休薬期間を短くするI B抗血小板薬休薬中のヘパリン置換は,心血管イベント低減のエビデンスがなく,出血を増加させる可能性があり,行うべきではないIII Harm B