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p.51 抽出テキスト

中止を考慮する.PCI 施行歴のない冠動脈疾患患者はこれに準じる.POISE-2 試験では,アスピリンを新たに開始すると大出血イベントが有意に増加したが,全死亡ならびに心筋梗塞は有意差がなかった200)ので,術前には新たに開始しない.

4.2 PCI 施行歴のある患者の 抗血小板薬の休薬の是非

冠動脈ステント留置後の患者で手術が必要となったときの抗血小板薬のマネージメントとアウトカムについて,2008 年以降に報告された論文をもとに解説する236, 263, 264, 269-271, 273, 275-277, 279-282, 286, 287, 289-292).第4 章3.2 で記載したように,BMS とDES でアウトカムに差がないという報告がほとんどであり,本稿の記載では抗血小板薬の取り扱いもデバイスによる差を設けないこととする.

抗血小板薬の休薬と心血管イベントリスク,出血リスクについては,休薬が心血管イベントと相関がなかったとの報告236, 263, 264, 275, 277, 280, 282, 286, 290)がある一方で,休薬が心血管イベントのリスクになるという報告269, 270, 276, 279, 281, 291)がある.アスピリン継続で出血性事象が増加したと報告されている271).アスピリンとプラセボでランダム化したPOISE-2 試験のPCI 施行歴がある患者でのサブ解析では,アスピリン群がプラセボ群に比して出血を増加させず,心血管イベントを抑制した291).

Part 2 CQ3 でも「アスピリン継続は,死亡リスクを低下させないが,周術期急性心筋梗塞リスクを低下させ,出血リスクを増加させない」としたうえで「経皮的冠動脈インターベンション(PCI)でステント留置の既往を有するために抗血小板薬内服中の患者に非心臓手術を施行する際に,出血リスクが高くなければ,アスピリン継続下で手術を行うことを提案する(GRADE 2C)」としている.

4.2.1 DAPT 投与中の患者

a. DAPT 継続の是非

DAPT 継続で手術を実施した場合,出血事象が有意に増えるという報告273, 286, 287)と,増える傾向があるという報告がある264).一方,DAPT 継続が周術期の心血管イベント低減に寄与したという報告はない.メタ解析293)でもDAPT は心血管イベントを減少させることはなく,むしろ出血イベントを2.05 倍増やすと報告されている.

第4 章3 に記載したように,PCI 後DAPT 投与が必要な期間には手術を実施すべきではないと考える. b. P2Y12 受容体拮抗薬の休薬期間

DAPT 投与が必要な時期に抗血小板薬をアスピリン単剤にして手術を実施する必要がある場合には,P2Y12 受容

体拮抗薬のメカニズムや冠動脈バイパス術(CABG)実施時の出血事象のデータなどから,プラスグレルでは7 日前,クロピドグレルでは5 日前,チカグレロルでは3 日前からの休薬が望ましいとされる294-298).

これらは海外のデータであり,日本ではプラスグレルの用量が異なり,チカグレロルの適応が限られていること,これらのデータを非心臓手術にあてはめてよいかは明らかでないこと,日本の添付文書の記載とは異なること等に留意する必要がある. c. DAPT からSAPT にする場合,アスピリン単剤か,

P2Y12 受容体拮抗薬単剤かSchoos らの報告289)では,DAPT を中止された490 例(594 手術:254 例は2 剤中止,192 例はクロピドグレル中止,148 例はアスピリン中止)中12 例で血栓性イベントが発生した.そのうち8 例は2 剤とも中止(8/254 =3.2%), 4 例はクロピドグレルを中止(アスピリン単剤)し(4/192 = 2.1%),アスピリン中止(クロピドグレル単剤)の患者に血栓性イベントは生じていなかった(0/148 =0%).この研究では出血性事象は報告されていない.

DAPT から単剤にして手術を実施する場合,どの薬剤を休薬するのがよいか,結論はでていない.

4.2.2 抗血小板薬を休薬するかどうかの考え方

ステント血栓症,ステント留置部以外の血栓リスク(血栓症発症率と発症したときのMI 範囲など)と出血リスクを吟味して決める. a. 出血リスク

出血のしやすさ,出血による臓器障害,出血した場合の止血の困難度で評価する.一般的な非心臓手術・処置の出血リスクは,2020 年JCS ガイドラインフォーカスアップデート版 冠動脈疾患患者における抗血栓療法の「非心臓手術・処置の出血リスク」を表43 として再掲載する210).第3 章2 抗凝固療法でも述べたとおり,手術別出血リスクの表はあくまで目安であり,術式ごとの手術リスク,患者リスクで個別に考え,外科医と協議が必要である.区域麻酔の出血リスクについては麻酔科医と協議する(第3 章3 抗血栓薬と区域麻酔時の注意点を参照). b. 休薬する場合の休薬期間

抗血小板薬の休薬期間と心血管イベントのオッズ比(OR)は,6 日以上2.11 269),5 日以上25.8 270),3 日以上2.36 276), 8 日以上6.9 279), 9 日以上3.38 281)であり,短期間のほうがリスクが低かった.これらの結果から,出血リスクが低く抗血小板薬継続で実施できる手術では継続が望ましく,休薬が必要な手術では休薬期間を極力短くすることが重要とい