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p.47 抽出テキスト

後ろ向きコホート研究で,血管手術前の運動負荷心筋シンチグラフィで広範囲に虚血が認められた患者を術前血行再建施行群と未施行群で比較したところ,術後30 日の生存率はそれぞれ98.7% vs 97.8% で有意差がなかった251).この研究は,死亡数が記載されておらず,本診療ガイドラインPart 2 のメタ解析からは除外された.

冠動脈疾患を合併した腎移植患者を対象とした後ろ向き研究でも,術前血行再建施行群と未施行群で術後30 日のイベント発症率(心血管死,ACS,血行再建)に差がみられなかった(6% vs 4%,p =0.54) 252).さらに,2 つの研究でも血行再建の有無で周術期のイベント発症率に有意差が認められなかった253, 254).

本診療ガイドラインのPart 2 では,システマティック・レビューの結果,安定型冠動脈疾患合併患者の非心臓手術術前の血行再建で,周術期死亡率,急性心筋梗塞発症率は低下せず,予防効果がないとしたうえで,「原則予防的血行再建を行わないことを推奨GRADE 1B」とした.これは過去のメタ解析とも矛盾しない255) .

その他,血行再建と非血行再建を比較した研究ではないが,関連する研究として,術前冠動脈造影を行う群(有意狭窄は血行再建施行)と冠動脈造影を行わない群のRCT 168)を紹介する.

頸動脈内膜剥離術(CEA)予定患者426 例が,CAG を行い有意病変があれば再灌流を行うCAG/ 血行再建群(216 例)とCAG を行わないnon-CAG 群(210 例)にランダムに割り付けられた.CAG/ 血行再建群では216 例中68例(31%)に有意病変を認め,66 例にPCI が施行された.アスピリン,クロピドグレル2 剤(DAPT)内服下でCEAが行われ,平均4 日の手術遅延であった.2 例は同麻酔下でCABG およびCEA 手術が施行された.non-CAG 群の9 例に周術期虚血イベント(1 例は広範囲心筋梗塞で死亡, 8 例は薬物治療で加療可能な虚血イベント)を認めた(4.2% vs 0%,p =0.01).死亡はnon-CAG 群で1 例(0.9%), CAG 群では0 であった(p =0.24).多くの非心臓手術症例では,抗血小板薬2 剤併用下での手術が不可能であり,本研究結果をCEA 以外の非心臓手術に一般化させることはできない.また,本RCT ではたしかにnon-CAG 群で虚血イベントが増えたが,急性期は薬物治療で治療可能なものであり,その予防のために血行再建を先行するべきか否かは不明である.

2.5 他の診療ガイドライン

ESC/ESA 周術期診療ガイドライン2014 では,「高リスク手術患者で,広範囲虚血があれば血行再建を考慮してもよい」とされた(Class IIb,B)

7).

米国のACC/AHA 周術期診療ガイドライン2014 では,「安定型冠疾患に対する血行再建ガイドラインにおいて血行再建が強く推奨される症例には,非心臓手術前に血行再建することは考慮すべき」とされた(ここではClass I 適応として,左主幹部,前下行枝を含む多枝病変に対するCABG が挙げられていた) 72).ただし,最終的な決定は血行再建術自体のリスクや患者の身体機能を勘案することが重要とされている72).

カナダ心臓血管学会の診療ガイドライン2017 では,カナダ心臓血管学会狭心症クラス(CCS class) III やIV の症例は術前血行再建をしたほうが慎重のようにみえるが,あまり延期できない非心臓手術では,リスク・ベネフィットを吟味し個別化する必要があるとしたうえで,「術前の予防的血行再建をしないことを強く推奨」としている14).

さらに,血行再建の適応に関しては,現在ISCHEMIA試験等からの知見も加わり,まさに新たな局面を迎えようとしている256).

2.6 術前血行再建の意思決定

左主幹部病変や軽度の労作で症状が出現する(CCS III, IV)ような通常ならば血行再建がClass I 適応の冠動脈病変があれば,1非心臓手術の術前に血行再建,2非心臓手術の術後に安定化したら血行再建,3血行再建または非心臓手術のどちらか一方を施行,4どちらもリスクが高く施行しない,などの選択肢がある(図9).十分延期できない手術や,血行再建リスクが高いケースなど,ジレンマを伴う意思決定には,表40 に示す多職種による包括的な吟味を行い,さらに患者の価値観などを総合的に判断し,患者と協働意思決定(第1 章 図2 を参照)を行うことが周術期にも重要である257, 258).

安定冠動脈疾患患者の非心臓手術術前の血行再建に関する推奨とエビデンスレベルを表41 に示す.

3 経皮的冠動脈インターベンション (PCI)歴のある患者の非心臓手術

のタイミング

第二世代薬剤溶出性ステンント(2nd DES)はベアメタルステント(BMS)よりステント血栓症(ST)が少ないことが明らかとなり259),2nd DES 留置後の2 剤抗血小板療法(DAPT)期間の短縮は可能とするエビデンス260)が蓄積され,冠動脈疾患患者における抗血栓療法の診療ガイドライ