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p.46 抽出テキスト

ラークの破綻・凝固亢進に伴う血栓形成(Type 1)がある.さらに冠動脈狭窄があるところに,出血やそれに伴う貧血やカテコラミン上昇による心拍数増加を介した心筋酸素消費量の増加,麻酔の影響や出血などに伴う低血圧,貧血による酸素供給の低下で生じる虚血・梗塞(Type 2)が挙げられている245, 246).PCI の既往があれば,ステント血栓症もありうる(Type 4b).

2.2 周術期急性心筋梗塞の特徴

近年の大規模レジストリ研究によると,非心臓手術による周術期心筋梗塞の発症率は0.9% であり,院内死亡に強く関係していた58). 非心臓手術術後30 日以内に急性心筋梗塞を発症し冠動脈造影を行った患者146 例のうち, Type 1 は25%, Type 2 73%, Type 4b 2.1% とType 2 が大半を占めていた247).光干渉断層撮影による冠動脈病変の観察によると,周術期の急性心筋梗塞の責任病変では,血栓形成は13.3% であり248),Type 1 よりType 2 が主要なメカニズムであることを示唆している.Type 1 の発症は,術中よりも術後が多いという報告がある(術中発症2.7%, 術後発症91.1%) 247).一方,Type 2 は術中発症が20.8%,術後発症が77.4% で,Type 2 はType 1 に比べ術中発症率が高いとされる247).

2.3 虚血性心疾患の周術期リスク

虚血性心疾患があると,周術期の心血管イベントリスクは上昇する.冠動脈CT にて,まったく狭窄病変がない患者では,周術期心血管イベントが2.0% であったが,非有意狭窄病変があると4.1%,一枝病変で7.3%,多枝病変があると23.1% とメタ解析で報告された25).血管手術前負荷心筋シンチグラフィで虚血所見が認められた患者の周術期心血管イベント率は,虚血所見がない患者に比較し高値であった(16% vs 1.7%) 154). 2.4 術前血行再建

術前血行再建が非心臓手術周術期のリスクを減らすかに関するエビデンスを紹介する.まずは,本診療ガイドラインPart 2(第6 章)で採用された研究を紹介する.

CARP 試験24):米国の多施設で心血管危険因子や非侵襲的検査による心筋虚血の疑いから周術期の心イベントリスクが高い5,859 例をスクリーニングし,左冠動脈主幹部病変を有する患者,EF <20% を除外したうえで,510 例を重大血管手術前に血行再建群(258 例)および非血行再建群(252 例)に割り付けた。長期の死亡率をプライマリ・エンドポイントとしたが,周術期のアウトカムも吟味された.血行再建群では,非心臓手術をするまでに10 例(3.9%)が死亡した.一方,非血行再建群では,非心臓手術前の死亡は1例(0.40%)であった.ランダム化から術後30 日で,血行再建群で17 例(6.6%),非血行再建群は9 例(3.6%)が死亡し,むしろ周術期死亡は血行再建群で多い傾向があった.ランダム化から手術施行までの期間が,血行再建群のほうが非血行再建より有意に長かったことも一因である(中央値54 日 vs 18 日).さらに,血行再建後,非心臓手術を行った225 例,血行再建せずに非心臓手術を行った237 例では,術後30 日死亡(3.1% vs 3.4%),急性心筋梗塞発症率(8.4% vs 8.4%)で差がみられなかった.長期経過では,中央値2.7 年で死亡率が22% vs 23% と両群に有意差はなかった (RR 0.98,95%CI 0.70-1.37,p = 0.92).多枝病変患者に関しても有意差がなかった249).

CARP 試験では,安定型冠疾患患者に対し重大血管手術の術前に例外なく予防的血行再建を行うことは周術期のみならず,長期の臨床経過を改善しないことが示された24, 249).さらに,血行再建してから手術するまでに死亡した10 例にも注目すべきであり,血行再建により非心臓手術が延期したことで生じるリスクや血行再建そのもののリスクも重視すべきと言える.ただし,CARP 試験では左主幹部病変患者,重症AS,EF <20% の患者は除外されている.実際,左主幹部患者に関しては,血行再建で長期予後は改善する知見がCARP 試験のサブ解析から得られている249).

後ろ向きコホート研究で,冠動脈疾患合併患者の非心臓手術術前に経皮的冠動脈形成術(PCI)を行うと,PCI を行わない群に比べ,周術期の狭心症(6.4% vs 12%,p < 0.001),心不全リスク(7.9% vs 16.9%,p <0.001)は有意に減少したが,急性心筋梗塞(2.2% vs 2.8%,p =0.304),死亡リスク(2.6% vs 2.9%,p =0.436)には有意差がなかった250).

表39 急性心筋梗塞の分類

Type 1アテローム性動脈硬化に併発した血栓症による自然発症Type 2心筋酸素需給のミスマッチによる二次性Type 3心筋バイオマーカー未評価の状況下での心筋虚血によると考えられる突然死Type 4a経皮的冠動脈形成術(PCI)手技関連性Type 4bステント血栓症Type 5冠動脈バイパス手術(CABG)手技関連性(Thygesen K, et al. 2018 244)より作表)