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p.42 抽出テキスト

2.6 抗凝固療法を中止する際のヘパリン置換

抗凝固療法を中止する際にはヘパリン置換を行うか否かについて検討する必要がある.

2.6.1 ワルファリンについて

Part 2(第6 章)CQ6 で,心房細動に関するこの問題についてシステマティック・レビュー,メタ解析を行った.取り上げた論文は,1 つのRCT 225)と7 つの観察研究226-229, 497-499)である.

Part 2 CQ6 では「心房細動でワルファリン服用中の患者が非心臓手術を受ける場合,血栓リスクが高くない場合(CHADS2 スコア4 点以下),術前にヘパリン置換を行わないことを提案する(グレード2B)」とした. a. ヘパリン置換を考慮する例

塞栓リスクが高く(表30 を参照.以下に例をあげる)出血リスクが低い患者ではヘパリン置換が考慮される. 1 心房細動:CHADS2 スコア5,6 点の非弁膜症性心房細

動,中等度以上の僧帽弁狭窄症の心房細動2 肺血栓塞栓症:発症後3 ~6 ヵ月以内3 脳梗塞:塞栓性脳梗塞3 ヵ月以内4 人工弁:生体弁置換術後3 ヵ月以内

機械弁に関して,2020 年改訂版弁膜症治療のガイドラインには推奨の記載はないものの,ヘパリン置換を考慮することが記載されている19).ESC/EACTS 弁膜症ガイドライン2017では,ヘパリン置換がクラスIで推奨されている230). AHA/ACC 弁膜症ガイドライン2017 Focused Update では,僧帽弁置換後ならびに血栓リスクを有した大動脈弁置換後はヘパリン置換がクラスIで推奨されている231).

2.6.2 DOAC について

半減期も短く,術前は短期間の休薬で管理が可能である.また,RE-LY 試験のサブ解析では,ダビガトランを休薬しヘパリン置換を行った群は,行わなかった群と比べて大出血が有意に増加したが,血栓塞栓症の発生に有意差は認められなかった226).そのため,DOAC 内服中の患者で術前の休薬に伴うヘパリン置換は推奨されない209).

血栓リスクと出血リスクによる抗凝固薬中断とヘパリン置換要否の目安を表35 に示した224).出血リスクが中の場合,抗凝固薬中断とされているが,実際は症例ごとに吟味が必要である.抗凝固薬休薬の際のヘパリン置換に関する推奨とエビデンスレベルを表36 に示す.

表35 血栓リスクと出血リスクによる抗凝固薬中断とヘパリン置換要否の目安

出血リスク:高出血リスク:中出血リスク:低

血栓リスク:高ワルファリン抗凝固薬中断ヘパリン置換必要抗凝固薬中断ヘパリン置換は症例によるが,多くは考慮抗凝固薬を中断しない

DOAC抗凝固薬中断ヘパリン置換不要抗凝固薬中断ヘパリン置換不要

血栓リスク:中ワルファリン抗凝固薬中断ヘパリン置換は症例による抗凝固薬中断ヘパリン置換は症例によるが,機械弁以外の多くは不要抗凝固薬を中断しない

DOAC抗凝固薬中断ヘパリン置換不要抗凝固薬中断ヘパリン置換不要

血栓リスク:低ワルファリン抗凝固薬中断ヘパリン置換不要抗凝固薬中断ヘパリン置換は機械弁以外不要抗凝固薬を中断しない

DOAC抗凝固薬中断ヘパリン置換不要抗凝固薬中断ヘパリン置換不要

DOAC: 直接作用型経口抗凝固薬(Spyropoulos AC, et al. 2016

224)を参考に作表)

表36 抗凝固薬休薬の際のヘパリン置換に関する推奨とエ

ビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

ワルファリンを休薬する際に,ルーチンのヘパリン置換は推奨されないIII No benefit C機械弁置換術後や弁膜症性心房細動患者においてワルファリンを休薬する際は,ヘパリン置換を考慮するIIa C塞栓リスクが高く出血リスクが低い患者においてワルファリンを休薬する際に,へパリン置換を考慮するIIa C直接作用型経口抗凝固薬(DOAC)を休薬する際に,ヘパリン置換は推奨されないIII No benefit B