p.38 抽出テキスト
ア205)と共通した危険因子であるため,出血リスクが高い患者は血栓リスクも高くなる.HAS-BLED スコアの「不安定なINR」は,ワルファリン内服を想定した項目であり,直接経口抗凝固薬(DOAC)内服患者ではINR を省いて簡略化されたATRIA 出血スコア206),ORBIT スコア207)なども開発されたが,予測能は大きくは変わらなかった.これらを使用することで,リスク軽減のために改善できる危険因子を同定し,可能なかぎり術前に対処することが重要である. 2.2.2 手術や処置自体の因子 出血リスクは,1出血のしやすさ,2出血による臓器障害,3出血したときの止血のしやすさで評価する208, 209).たとえば,脳や脊髄では,出血の結果として麻痺等,QOLを著しく低下させる後遺症がありうるため高リスクである.一方,表在手術は障害が少なく,かつ止血もしやすいため 低リスクである.観血的手技ごとの出血リスクの目安を表29 に示す203).出血リスクは個別の術式によっても変わる.さまざまな診療ガイドライン,エキスパートコンセンサスにて作成された外科手技ごとの出血リスク分類があるが,同じ手技でもリスク分類が違うこともある203, 210-212).最終的には,術式,出血による臓器障害,そして患者因子から出血リスクを総合判定すること,外科医を含めた集学的チームで検討することが重要である203).区域麻酔の出血リスクについては麻酔科への確認が必要である(第3 章3抗血栓薬と区域麻酔時の注意点を参照). 2.3 血栓リスク 抗凝固療法の適応疾患として心房細動,静脈血栓塞栓 表29 心房細動患者における抗凝固療法の出血リスクからみた観血的手技の分類 出血低リスク手技出血中リスク手技出血高リスク手技 ・ 歯科手術(抜歯,切開排膿,歯周外科手術,インプラントなど)・ 白内障手術・ 通常消化管内視鏡・ 上部・下部消化管内視鏡,カプセル内視鏡,内視鏡的逆行性膵胆管造影など・ 体表面手術・ 膿瘍切開,皮膚科手術など・ 乳腺針生検,マンモトーム生検・ 出血低リスクの消化管内視鏡(バルーン内 視鏡,膵管・胆管ステント留置,内視鏡的乳頭バルーン拡張術など)・ 内視鏡的粘膜生検・ 経会陰前立腺生検・ 経尿道的手術[膀胱生検,膀胱腫瘍切除術(TUR-Bt),前立腺レーザー手術,尿管砕石術]・ 経皮的腎瘻造設術・ 緑内障,硝子体手術・ 関節鏡視下手術・ 乳腺切除生検・良性腫瘍切除・ 耳科手術・鼻科手術・咽頭喉頭手術・頭頸部手術・ 心臓デバイス植込手術・ 血管造影,血管内手術・ 心臓電気生理学的検査,アブレーション(心房細動アブレーションは除く)・ 出血高リスクの消化管内視鏡[ポリペクト ミー,内視鏡下粘膜下層剥離術(ESD)など]・ 経皮的ラジオ波焼灼術(経皮的アルコール注入術・マイクロ波凝固術)・ 超音波内視鏡下穿刺吸引法(EUS-FNA)・ 気管支鏡下生検・ 硬膜外麻酔,脊髄くも膜下麻酔・ 開頭術・脊髄脊椎手術・ 頸動脈内膜剥離術・ 胸部外科手術(胸腔鏡を含む)・ 腹部・骨盤内臓手術(腹腔鏡を含む)・ 乳癌手術・ 整形外科手術・ 頭頸部癌再建手術・ 下肢動脈バイパス術・ 肝生検・ 腎生検・ 経直腸前立腺生検・ 経尿道的前立腺切除術(TUR-P)・ 体外衝撃波結石破砕術(ESWL)・ 経皮的腎砕石術 改変は下記のとおり.・【出血低リスク手技】の(原則として抗凝固薬の休薬不要)を削除.・[上部・下部消化管内視鏡,カプセル内視鏡,内視鏡的逆行性膵胆管造影など]と[膿瘍切開,皮膚科手術など]をそれぞれ1 項目とする.・【出血中リスク手技】の(抗凝固薬の休薬を可能なら避ける)を削除.・出血低危険度を出血低リスクに変更.・【出血高リスク手技】の(原則として抗凝固薬の休薬が必要)を削除・出血高危険度を出血高リスクに変更.・内視鏡的十二指腸乳頭切除術,内視鏡的食道・胃静脈瘤治療を削除.・経皮的ラジオ波焼灼術(経皮的アルコール注入術・マイクロ波凝固術)を追加.・超音波内視鏡下穿刺吸引術(EUS-FNA)を1 項目とする.・【出血・塞栓症高リスク手技】(抗凝固薬の継続ないし短期休薬)】心房細動アブレーションを削除. (2020 年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン.2020 203)を改変)