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p.37 抽出テキスト

期におけるCa 拮抗薬の効果は一貫していない.

11 件のRCT から1007 例を対象としたメタ解析が2003年に報告されている192).周術期のCa 拮抗薬の使用により,心筋虚血と上室性頻拍は有意に減少し,全死亡および心筋梗塞には有意差は認めなかったものの,減少傾向が認められた.サブグループ解析では,非ジヒドロピリジン系Ca拮抗薬のジルチアゼムが心血管イベント減少に寄与していることが示唆された192).

一方,ハンガリーの1000 例を対象とした後ろ向き観察研究では,緊急あるいは待機的に胸部もしくは腹部大動脈瘤の手術施行時,ジヒドロピリジン系Ca 拮抗薬の使用が周術期死亡率の増加と独立して関連していたことが示唆された193).

1.6 アスピリン(表28)

1.6.1 長期服用中のアスピリンの継続もしくは 中止の影響

抗血小板薬服用中の患者を対象として,周術期に抗血小板薬の継続と中止を比較したRCT(5 試験,666 例)のメタ解析が2018 年に報告され,輸血が必要な出血率,止血のための再手術率,急性心筋梗塞発症率,脳梗塞発症率に有意差がみられなかった194).このシステマティック・レビューに含まれた研究は,冠動脈疾患,脳梗塞後,動脈硬化の高リスク患者などが対象であり,冠動脈ステント留置後の割合は,それぞれ25% 195),65% 196),13% 197),不明198),0% 199)であった.

長期服用中のアスピリンは,血栓リスク,出血リスクのバランスで継続か中止を決定することが重要である.脊柱管,頭蓋内,後眼房などの出血リスクが高い手術では中止を考慮する.

1.6.2 術前の開始

非心臓手術の術前のアスピリン投与開始の影響を検討したRCT としてPOISE-2 試験が2014 年に報告された200).冠動脈疾患や脳卒中既往など周術期合併症のリスクを有する患者10,010 例を対象とし201),登録前のアスピリン内服の有無により層別化を行い,その後アスピリン群とプラセボ群に割り付けを行った.その結果,プラセボ群と比較してアスピリン群では30 日後の全死亡と心筋梗塞は有意に減少しなかったが,大出血イベントが有意に増加した200).この結果は,登録前のアスピリン内服の有無によらず一貫していた.ただし,本試験は頭蓋内手術や網膜手術,6 ヵ月以内の脳出血等,出血ハイリスク患者が除外されている.対象患者のリスク層別化の余地はあるが,現状では非心

臓手術の術前に一次予防を目的としたアスピリンの投与開始は推奨されない.

1.7 SGLT2 阻害薬

糖尿病や慢性心不全に使用される.手術前後は,この薬剤によるケトアシドーシスリスクが増加するため,添付文書上禁忌である.

2 抗凝固療法

2.1 抗凝固療法の周術期における考え方

抗凝固療法を継続的に受けている場合,周術期に1継続するか中止するか,2中止する場合,中止期間を最短にするためのヘパリン置換をするかを検討する.それには,出血リスク,血栓リスク評価が重要である.

2.2 出血リスク

周術期の出血リスクは,患者因子と手術や処置自体の因子に分けて評価する必要がある.

2.2.1 患者因子

抗凝固療法に関する出血リスクスコアとしてHAS- BLED スコア202)がある.非周術期のみならず,周術期でも3 点以上が出血高リスクとされる203, 204).ただし, HAS-BLED での高血圧,脳卒中,高齢はCHADS2 スコ

表28 周術期におけるアスピリンに関する推奨とエビデン

スレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

非心臓手術の術前に一次予防を目的としたアスピリンの投与を開始すべきではないIII Harm B慢性維持治療としてのアスピリンを周術期に継続するか中止するかは,血栓リスク,出血リスクを考慮して決定する

* I B

* 冠動脈ステント留置後の抗血小板薬(アスピリン,プラスグレル,

クロピドグレル,チカグレロール)に関しては,第4 章4 冠動脈疾患患者の抗血小板薬の取り扱いを参照