p.33 抽出テキスト
表22 術前冠動脈CT 検査に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエビデンス レベル 非心臓手術術前に,ルーチンで冠動脈CTは推奨されないIII No benefit C付帯事項:RCRI などで低リスク群とされる患者に対して冠動脈CTを施行すると,一定の割合で不適切に高リスクに分類されるリスクがある.一方,冠動脈CT 検査にて有意な所見がなければ周術期心血管イベント発症のリスクは低く,高リスク症例では,術前リスクのさらなる層別化に有用である可能性がある 表23 術前冠動脈造影検査に関する推奨とエビデンスレベル 推奨クラスエエビデンス レベル 非心臓手術術前に,ルーチンでの冠動脈疾患の評価目的の冠動脈造影は推奨されないIII No benefit C 察研究からは,リスクスコア(RCRI スコア)に加えて冠動脈CT の所見を加味した場合,RCRI で低リスクと評価された1000 人あたり17 人は冠動脈CT により「適切に」高リスクとして再分類されたが,98 人は冠動脈CT の結果から「不適切に」高リスクとして評価された103).このことから,術前に低リスクと考えられる症例に対して冠動脈CTを用いて評価を追加した場合,不必要な介入が行われる可能性があり,こうした介入に付随した合併症あるいは非心臓手術の延期など,患者に不利益をもたらす可能性がある. 10 冠動脈造影(表23) 冠動脈造影は,深刻な合併症率は1% 内外と言われており,侵襲的検査であることを認識する必要がある167).さらに, 冠動脈造影により非心臓手術の術前に冠動脈狭窄が認められた場合でも,冠血行再建の有用性は認められていない24, 168).したがって,そのルーチンの施行は推奨されない. 11 術前検査のアルゴリズム 図4 に非心臓手術前の心臓精査のアルゴリズムを示す. Step 1 非心臓手術の緊急度 早急に手術しなければ,生命の危険があるなどの緊急手術ならば,可及的速やかに手術となる.その場合,循環器的な精査ができないことが多い.時間の許すかぎり病歴, 身体所見,ECG など基本的検査で循環器緊急症の合併の有無の把握に努める.ただし,非心臓手術の開始を遅延させてはいけない.緊急手術でなければStep 2 へ. Step 2 循環器緊急症のチェック 循環器緊急症としては急性冠症候群,重症不整脈,急性心不全,症候性弁膜症が考えられる.これらの有無を,通常どおり病歴,身体所見で疑えば,必要に応じ精査する.診断すれば安定化を図る.心疾患への介入は,薬物治療,侵襲的介入(冠動脈血行再建(PCI, CABG),弁置換術など)もありうるが,侵襲的治療を非心臓手術前に施行するかどうかは,個別の吟味が必要である.吟味する内容として,1循環器疾患に対する侵襲的治療の緊急度(重症度,症状),2非心臓手術の緊急度(いつまで延期できるか), 3非心臓手術のリスク,4心臓への侵襲的介入のリスク(STS score,EuroSCORE II,JapanSCORE),5心臓への侵襲的治療後,抗血栓薬が必要な場合,周術期のその継続,中止による出血,血栓症リスク,などである.循環器緊急症がなければStep 3 へ. Step 3 手術自体のリスク 低リスク手術(第2 章2 表10 参照)ならば手術へ.中リスク以上の手術はStep 4 へ. Step 4 周術期心血管イベントリスク予測 RCRI で推定する.低リスク群(非血管手術:0 項目ないし1 項目,血管手術:RCRI 0 項目)なら手術へ.上昇リスク群(非血管手術:RCRI 2 項目以上,血管手術RCRI 1項目以上)ならStep 5 へ. 低リスクの定義:心血管イベントリスク5% 未満(急性心筋梗塞の診断にトロポニンを用いた場合). 上昇リスクの定義:心血管イベントリスク5% 以上. Step 5 運動耐容能評価またはBNP 値,NT-pro BNP 値の測定上昇リスク群は,運動耐容能をDASI スコアなどを用いて客観的に評価し,7 METs 以上(DASI スコア34 点以上)ならば,さらなる心臓検査をせず手術をすることを考慮する(推奨クラスIIa).4 METs 以上(DASI スコア10 点以上)ならば,さらなる心臓検査をせず手術をすることを考慮してもよい(推奨クラスIIb).4 METs 未満または不明のときは,術前心臓検査の適応,マネージメントなどについて包括的に検討する.他の選択肢として,BNP またはNTpro BNP 値の測定を考慮してもよい(推奨クラスIIb). BNP 92 pg/mL 未満, NT-pro BNP 300 pg/mL 未満で低リスク群と分類できる. このアルゴリズムは,その妥当性が検証されていないことには注意が必要である.