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p.32 抽出テキスト

手術術前の検査として,負荷心筋イメージングと比較し,偽陰性が少なく,より高い精度で周術期の心血管イベントを予測できることが示されている159).さらに,長期予後の予測にも有用と報告されている166).

8.2.5 心臓負荷試験に関する推奨

運動負荷心電図,負荷心筋血流シンチグラム,負荷心エコー図を施行することで,RCRI などのリスクスコアを用いた術前リスク評価の精度を向上させることを明確に示した研究は現時点では存在しない.そのルーチンでの施行は推奨されない.

術前運動負荷心電図,負荷心筋血流シンチグラフィ検査に関する推奨とエビデンスレベルを表21 に示す.

荷試験(Cardiopulmonary exercise testing: CPX)を行い,術後心臓合併症の発症を予測した.その結果,目標心拍数の85% まで負荷をかけることができた症例は,かけられなかった症例と比較して,心臓合併症発症が低率(6% vs 24%, p = 0.04)であった.なお,この研究ではST 低下の有無ではイベント発生率に有意差がなかった147).

一方,非心臓手術術前200 例でトレッドミル,エルゴメーターによる負荷試験の結果は周術期死亡,心筋梗塞のリスク層別化を果たせなかった146).

肺癌に対する手術症例を対象に行われた2 つの臨床研究では,「神経筋疾患や血管疾患で運動負荷テスト実施不可」患者は「運動負荷テスト実施可能」患者と比較して,術後心肺合併症の発症が高率であったが149),CPX による最大酸素消費量評価では術後心肺合併症の発症を予測できなかった148).

自己申告での運動耐容能が不明の場合には,運動負荷試験による運動耐容能の評価を考慮してもよい.

8.2.2 運動負荷心電図

運動負荷心電図検査の血管外科手術患者,胸部,腹部手術での心臓死や周術期心筋梗塞に対する感度37 ~ 67%,特異度49 ~83%,陽性的中率は10 ~25%,陰性的中率は83 ~94% の範囲で報告されている146, 147, 151, 152) (表20).運動負荷心電図が陰性ならリスクが低いが,陽性でもリスクは必ずしも高くないことを示している.運動耐容能に,ECG 変化の有無を入れても妥当性はあまり変わっていない.ただし,これらの研究はサンプル数が少なく,十分な重症度による補正がなされていないことには注意が必要である.

8.2.3 負荷心筋血流シンチグラフィ

運動・薬剤負荷心筋血流シンチグラフィの非心臓手術患者での心臓死や周術期急性心筋梗塞について,感度87 ~ 100%,特異度49 ~71%,陽性的中率は13 ~50%,陰性的中率は 98 ~100% の範囲で報告されている153-158)(表20).2006 年のメタ解析の結果より,非心臓手術術前に施行された負荷心筋イメージングで中等度以上の虚血が認められた場合には,周術期の心血管イベントが増加することが示されている159).

8.2.4 ドブタミン負荷心エコー

非心臓手術患者での心臓死や周術期心筋梗塞に対する感度30 ~100%,特異度44 ~93%,陽性的中率は9 ~ 43%,陰性的中率は95 ~100% の範囲である160-165)(表20).またメタ解析の結果より,負荷心エコー図は非心臓表21 術前運動負荷心電図,負荷心筋血流シンチグラフィ

検査に関する推奨とエビデンスレベル

推奨クラスエビデンス

レベル

非心臓手術術前に,リスク評価を目的とする運動負荷心電図のルーチンでの施行は推奨されない

* III No benefit B

非心臓手術術前に,リスク評価を目的とする負荷心筋シンチグラフィ・負荷心エコー検査図検査のルーチンでの施行は推奨されない

** III No benefit B

付帯事項* 運動耐容能が患者からの自己申告では不明の患者には,運動負荷

試験を定量的に評価するという意図で用いることはできる** 周術期心血管イベント発症に関するリスクの層別化に利用できる

が,RCRI による術前リスク評価の精度を向上させるエビデンスはない

9 冠動脈CT(表22)

非心臓手術の術前心血管系評価として,冠動脈CT の有用性を検討した研究は限定されている.メタ解析では,冠動脈CTにおける冠動脈狭窄の有無あるいは程度に応じて,周術期心血管イベントの発症率の層別化が可能であることが示された25).さらに高リスク患者でも,冠動脈CT で有意狭窄が認められなければ,周術期心血管イベントの発症リスクは,それほど高くないことがわかっている.実際に, RCRI スコア3 点以上の症例でも,冠動脈CT にて多枝病変を認めない場合,周術期の心血管イベントの発症は非常に稀であることが報告されている25).こうした陰性的中率の高さは,冠動脈CT の特筆すべき点である.

しかしながら,非心臓手術が予定された患者に対する観