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p.31 抽出テキスト

BNP 300 pg/mL (95%CI 240-540)であった.その後の研究でも,NT-pro BNP の至適カットオフ値が300 pg/mL であるという報告が複数なされている105, 143, 144).

7.3 臨床的リスク層別化に加えBNP, NT-pro BNP による再層別化

BNP/ NT-pro BNP 値を,既存のリスク因子に追加することにより,イベント予測能を上昇させる可能性があることが報告されている.

年齢,RCRI ≧3 項目,術式(血管手術かそれ以外),手術タイミング(緊急・準緊急か待機的)を用いた周術期イベント予測に,術前BNP/ NT-pro BNP 値を加えることにより,イベント予測精度が向上することが示された139).

メタ解析にて,RCRI を含むリスク評価モデルで「上昇リスク」とされた患者がBNP 低値により,適切に,よりリスクが低い群と再分類された患者が32% 存在した.ただし,実際はイベントが起きていないのに,BNP を追加することでより高いリスクと不適切に再分類された患者が17.6%,イベントが生じた患者の中には,適切に高リスク群とされていたのにBNP を追加することでリスクがより低い群に不適切に分類された患者が23% 存在していたことには注意が必要である139).特記すべきこととして,「低リスク群」では,BNP 高値で適切に高リスクと再分類されたものが1.1%,不適切に高リスクと再分類された患者が8%とさらなるリスクの層別化への意義は低い.

Vascular Events in Noncardiac Surgery Patients Cohort Evaluation(VISION)研究のサブ解析では,術後30 日間の死亡もしくはMINS の複合エンドポイントの発症予測において,RCRI にNT-pro BNP を加えることで,予測精度が上昇することが報告された141).

わが国の日常臨床で広く測定されていることも勘案すると,現時点で測定により予後を変えるというエビデンスはまだないものの,低リスクと判断できない症例では,術前にBNP,NT-pro BNP を測定し,リスク層別化に使用することは選択肢の一つである. 8 心臓負荷試験

8.1 術前心臓負荷試験の目的

負荷心電図,負荷心筋シンチグラフィ,負荷心エコーがある.後述するとおり,それぞれの負荷検査は,非心臓手術の施行に際して周術期の心血管イベント発症に対するリスク層別化に有用であり,術前のインフォームドコンセントに際しては有用となりうる.しかし,直近のメタ解析では,術後30 日以内の死亡リスクは,術前の負荷試験施行の有無による差は認められなかった145).

8.2 各検査の周術期リスク予測精度 (表20)

146, 147, 150-158, 160-165)

8.2.1 運動負荷試験による運動耐容能146-151)

総じて,運動負荷テストにより運動耐容能が高いと心血管イベントは低下するが,運動耐容能が低くても必ずしもイベントが起こるとは言えない.さらに,これまでの研究では虚血イベント,非虚血イベント(心不全など)を区別して評価できていない.以下にエビデンスを示す.

運動負荷テストで運動耐容能が低いことを陽性(ECG変化は問わない)とした場合の周術期イベント予測は,感度64 ~89%,特異度34 ~53%,陽性的中率10 ~24%,陰性的中率88 ~97% であった146, 147, 150, 151)(表20).

その中で,運動負荷テストにより判定した約4 METs 以下を運動耐容能低下とした場合,周術期心血管イベント予測検討をした2 つの研究の結果は,感度66%,82%,特異度49%,53%,陽性的中率21%,12%,陰性的中率88%,97% であった146, 150).

McPhail らは大血管手術を受ける100 例に心肺運動負

表20 心臓負荷試験の周術期心イベントの予測能のまとめ

感度特異度陽性的中率陰性的中率

運動負荷試験による運動耐容能146, 147, 150, 151) 64 ~89% 34 ~53% 10 ~24% 88 ~97%運動負荷心電図146, 147, 151, 152) 37 ~67% 49 ~83% 10 ~25% 83 ~94%負荷心筋血流シンチグラフィ153-158) 87 ~100% 49 ~71% 13 ~50% 98 ~100%ドブタミン負荷心エコー160-165) 30 ~100% 44 ~93% 9 ~43% 95 ~100% (文献146, 147, 150-158, 160-165 より作表)